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    dressedhoney

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    女児に男児をつけるのはと周辺諸侯が懸念したため中性的な見た目を強いられたショタヒュー概念から派生した学生フェルヒュー
    少女の見た目をした幼いヒュ―ベルトが初恋だったフェル概念です

    #フェルヒュー
    ferhu

    学生フェルヒュー傍を通る生徒は、誰もが意外な組み合わせだと感じていた。
    しかし実際のところ、彼らは親交を深めている部類になる。
    「あともう一人欲しいところですねぇ」
    黒鷲の学級の部屋の一角で、エーデルガルトとヒュ―ベルト、そしてシルヴァンが向かい合うように座っていた。
    彼らの真ん中にあるのは盤面遊戯。
    盤面遊戯の得意な彼らは、時折このように集まって腕を競いあっているのだ。 
    「そうね、それなりに腕の立つ人だと良いのだけれど」
    「お二人相手に腕が立つって相当な条件なんですけど……あ! 丁度いいところに!」
    そう言ってシルヴァンが呼び止めたのは、フェルディナントだった。
    ヒュ―ベルトが露骨に嫌そうな顔をするが、シルヴァンは気にせず対戦の交渉を進める。
    フェルディナントは快諾だった。
    「良いだろう、私の実力を示す時が来た! 手加減なしでかかってきたまえ」
    エーデルガルトも微妙そうな顔をしていたが、フェルディナントの返答を聞いて盤上を4人対戦用に整え始める。
    「おっと、さすがの自信だ。そうだな、今日は折角なんで条件を付けようぜ。なぁに、簡単なものさ。勝者は一つ簡単なお願い事を聞いてもらえるっていう」
    「シルヴァンらしいわね……まぁいいわ。出来ることならね」
    本来なら止めるところだが、エーデルガルトは何も言わなかった。
    彼女は負ける気が微塵もしていなかったからである。
    しかしそれは、この場にいた全員が同じ気持であった。

    ◆ ◆ ◆ ◆

    「くっ、やられたわ……」
    次期皇帝、次期皇帝に付く参謀、現帝国を牛耳る宰相の息子、そして王国貴族の次男坊。
    最もオッズが高かったのは王国貴族の次男坊だろう。
    「いやー、これは運が良かった」
    勝者は、参加者の予想を裏切りシルヴァンだった。
    彼は元より戦術には長けていたが、特に今日の一局は鬼神のごとき強さで、今まで爪を隠していたのかと疑わざるを得ないとヒュ―ベルトが思うほどである。
    「……それで、お願い事というのは。あまりエーデルガルト様に無茶はさせないでくださいよ」
    ヒュ―ベルトのため息を聞いて、シルヴァンがにっこりと笑った。
    「もちろん心得てるって! ではでは……」
    敗者3人が少し緊張した面持ちで、シルヴァンの返答を待つ。
    シルヴァンは楽しくて仕方がない、といった風だった。
    たっぷりと焦らしてから、ようやく彼が口を開く。
    それは誰もが想像していないものだった。
    「みなさんの初恋を聞かせてください!」
    初恋。
    その言葉に、ヒュ―ベルトは拍子抜けした。
    というのも。
    「誠に残念ながら、私はこのかた恋などしたことがございませんので」
    ヒュ―ベルトの初恋はまだであった。
    ベストラ家の者としてずっとエーデルガルトの傍についており、彼に声を掛けようと思う女性もいなければ彼自身エーデルガルト以外の女性に興味がなく、またその興味というのも恋愛感情ではない。
    「あー、あんたは予想通りだよ。じゃ、残りの2人は?」
    シルヴァンがエーデルガルトを見れば、彼女は少しの逡巡の後、言った。
    「……そうね。私は小さいころ、名前も知らない男の子に」
    なんとまぁ淡い、とシルヴァンは頬を緩ませたが、深くは掘らない。
    今度はフェルディナントの方を見れば、彼は耽るように言った。
    「私も小さいころ、名前も知らない少女にね。今でも思い出せるよ。大層可憐な少女だったからな」
    「ほほう、可憐な少女!」
    美人の気配に、シルヴァンが食いつく。
    思い出の中の話とはいえ、シルヴァンはその少女に興味を惹かれた。
    エーデルガルトもまた落ち着いているように見えて、意外と年相応に色恋話に興味がある。
    シルヴァンが詳細を促せば、フェルディナントは意気揚々と話し始めた。
    「私が彼女と出会ったのは、帝国の宮城だった。艶やかな長い黒髪をなびかせる、細身の少女だ。物静かで冷たい印象をまとっていたが、くせっ毛だったのがあどけなさを滲ませていて可愛らしかった」
    既に興味を失っているヒュ―ベルトは盤面遊戯を片付けながら、話半分に聞いている。
    「いつも黒いドレスを着こんでおり、少し掠れた高めの声はいつまでも聞いていられるくらいに心地よかったとも。まぁ、言葉を交わしたのは一度だけだったのだが……」
    エーデルガルトの肩が揺れた。
    それに気付いたフェルディナントが、声高々に続ける。
    「そうだ! エーデルガルト、君の傍にいつもいたあの子のことなのだ!」
    フェルディナントの宣言に合わせ、ジャラジャラと高い音が鳴った。
    ヒュ―ベルトが片付け始めていた盤面遊戯の駒を落とした音である。
    彼は失礼、とだけ言って話の続きを促した。
    「なぁフェルディナント。エーデルガルトの傍にいつもいるなんて、ヒュ―ベルトじゃあないのか?」
    「そんなわけあるまい。髪は長く、声も高かったのだぞ。このエーデルガルトの腰巾着が、あの可憐な少女のわけないだろう」
    シルヴァンがちらりとエーデルガルトを見やれば、彼女の様子がおかしい。
    肩を震わせ、何かを耐えているように見えた。
    しかしフェルディナントはそれには気付かず、話を続ける。
    「私は彼女に花を渡したことがある。橙色の薔薇だったが、あの時の彼女の反応と言ったら……艶やかな黒髪の中に浮かぶ煌めく黄緑色の瞳は、月を思わせるようだった。と言っても、それが最初で最後の交わりだったのだ。気が付いたら彼女は宮城から姿を消していたからね。確か七貴族の変あたりだったか……」
    シルヴァンが今度はヒュ―ベルトを見やれば、彼は唇をもにもにと動かし、何とも言えない反応を示していた。
    苛立ちと照れが綯い交ぜになったその表情に、シルヴァンは合点する。
    あっこれマジでヒュ―ベルトだ、と。
    意外な話題から面白い案件を引いたと、シルヴァンはほくそ笑んだ。
    「へぇ、そんなに可愛かったなら、今はさぞ美人になってるんだろうなぁ。ぜひお会いしたいもんだ」
    「ふ、ふふ。そうね、私も会ってみたいわ。帝国の子たちならその子を見たことがある人もいるかもしれない」
    ヒュ―ベルトが信じられないものを見る目で、エーデルガルトとシルヴァンを見る。
    確かにヒュ―ベルト自身もこの状況を面白がってはいるのだが、いかんせんフェルディナントの気持ちが熱烈過ぎるのとまさか彼の初恋相手が自分だったという事実に複雑な気持ちの方が勝っていた。
    「会ってみたいも何も、あの子については君が一番詳しいのではないかね?」
    「残念だけれど、その"少女"には覚えがないの」
    「むむぅ……? まあ良い、そう上手くいくとは思えないが、まずは聞き込みから始めよう!」
    早速学級内にいる生徒へ声を掛け始めるフェルディナントを見て、ヒュ―ベルトは大きく舌打ちをしたのだった。

    ◆ ◆ ◆ ◆

    この4人の組み合わせは、とにかく目立つ。
    彼らが何か聞き込みをしているという噂はじわじわと広がり、面子が面子のためやれ帝国の裏切り者を探しているだの、やれシルヴァンがエーデルガルトになにかしでかしただのと悪い方向に尾ひれが付いていく。
    しかし実際に聞き込みを受ければ、フェルディナント初恋の少女を探しているという何とも甘酸っぱいもの。
    彼らは黒鷲の学級の生徒を中心に聞きまわっていたが、いまだ成果は得られていなかった。
    「ふむ、そもそも彼女を見たという者に出会えないな。確かに私も宮城でしか見たことがないのだから、登城していたような貴族に絞った方がよさそうだな」
    「おっと、噂をすれば丁度良さそうな人が寝てますねぇ」
    シルヴァンが示す方向を見れば、中庭の机でリンハルトが昼寝をしている。
    「……良く寝ておられます。起こすのはかわいそうではありませんか?」
    「彼は今日、既に朝寝とやらもしていたはずよ。問題ないでしょう」
    ヒュ―ベルトの小さな抵抗は、聞き入れられなかった。
    フェルディナントが名前を呼び掛けながらリンハルトの体をゆすれば、彼はのろのろと突っ伏していた身を起こす。
    そして珍しい4人組に興味がわいたのか、すんなりと覚醒した。
    「一体どういう風の吹き回し?」
    「何、私の初恋の少女の正体を探っているのだ。昔エーデルガルトの傍に居た可憐な少女なのだが、君は見たことがないかね?」
    この4人が集まって、初恋の少女の話?
    リンハルトは状況が読めないが、ひとまず返答する。
    「そんな昔の事覚えてないよ……」
    リンハルトの言葉に、フェルディナントが落胆した。
    しかしリンハルトは、それと真逆の反応をした人物を傍に見つける。
    ヒュ―ベルトだ。
    これは何か事情があると察したリンハルトは、ゆっくりと昔の記憶をたどる。
    エーデルガルトの傍にいた少女……そういえば、宮城で幼い彼女を見かけた時、傍に黒ずくめの少女がいた気がする。
    父からその少女はベストラ家の嫡男だと聞かされていたが……
    「あ」
    リンハルトもまた、合点した。
    今も隣で笑いをこらえているエーデルガルトの姿が、決定打だった。
    「どうしたのだ、何か思い出したのかね」
    リンハルトがヒュ―ベルトの方を見れば、彼はじっとリンハルトを睨んでいる。
    余計なことを言うなという圧をたっぷりと浴びながらも、リンハルトはヒュ―ベルトに笑って見せた。
    「ああ、あの子のことか。黒髪で明るい黄緑色の瞳をした、痩せぎすの少女だよね? 凄く可愛かったから覚えてるよ」
    「そう! その子だ! 目撃談すら掴めなかったから、よもや幻想か何かだったのかと思い始めていたところだ……」
    「その子の正体については知らないけれど……皇女の傍にいつもいたなんて、家族かそれに近しい人だったんじゃない? それか侍女とか」
    リンハルトの対応にフェルディナントは、答えに一歩近づいたと息まく。
    そんな様子を見たシルヴァンもまた、エーデルガルトと同じで笑いを堪えるのが限界そうだった。
    ヒュ―ベルトはそろそろ不機嫌な雰囲気を隠しきれなくなってきており、事情を知らない周りの生徒たちがじわじわと彼らから距離を取り始めている。
    そんな中、彼らに声を掛ける者が新たに表れた。
    「リンハルト、飯に……って大所帯だな。どうしたんだ?」
    カスパルである。
    彼は嫡男ではないとはいえ確か登城してはいたはずと、フェルディナントはリンハルトに掛けたのと同じ質問を投げかけた。
    そうすれば、カスパルは首を捻る。
    知らないのだな、とヒュ―ベルトが安堵したのも束の間。
    「んー、少女か? エーデルガルトの傍にいつもいたなんて、ヒュ―ベルトだろ」
    ああ、この感じは、まずい。
    ヒュ―ベルトは何とかカスパルの口を塞ごうとするが、咄嗟に出そうになった手は両手とも動かない。
    何故だと彼が手を見やれば、左右から一本ずつ、エーデルガルトとシルヴァンがその腕を取っていた。
    「いいや、私があの可憐な少女とヒュ―ベルトを見紛うはずがないだろう」
    「でも黒髪で黄緑の目なんだろ? なんで女の格好をしていたのかは知らんかったけど、嫡男は色々事情があんだなくらいに思ってたぜ。にしてもお前成長期凄かったよな~! 俺もまだまだ伸びてもらわんと困るんだけどな!」
    ヒュ―ベルトがぐ、と唇を噛む。
    「……は?」
    「俺もあんま登城してたわけじゃねぇから確かなことは言えねぇけど、今も昔もエーデルガルトの傍に居るのはヒュ―ベルトだろ?」
    ふっ、とリンハルトが声を漏らした。
    フェルディナントは嫌な予感を覚えながらも、否定を続ける。
    「……いいや、ヒュ―ベルトはエーデルガルトが王国より戻ってきてからの従者ではないのか? あの頃は確かにヒュ―ベルトが傍にいたが……」
    「どうなんですか、皇女様?」
    「……くっ…ふ、あははは!」
    エーデルガルトはついに抑えきれなくなり、声を上げて笑い出した。
    それと相対するように、ヒュ―ベルトは苦々しくため息を吐く。
    「……エ、エーデルガルト。この話は、もうこれくらいでいいんじゃあないだろうか」
    「うふふ、どうしてかしら? 私の傍に居た従者は今も昔もヒュ―ベルトただ一人、それだけよ」
    リンハルトとシルヴァンも、同じように笑い出した。
    カスパルだけはこの状況を理解できず、頭に疑問符を浮かべている。
    ヒュ―ベルトは刺すような視線をフェルディナントに浴びせながら、言った。
    「随分と熱を上げておられたようで。貴殿は人を見る目が無いようだ」
    「あら、私は可愛いと思っていたわよ。リンハルトもそう言っていたじゃない。これはフェルディナントに落ち度はないんじゃないかしら?」
    フェルディナントはヒュ―ベルトを凝視し、目を閉じてはまた凝視するという行動を繰り返している。
    記憶の中の少女と照らし合わせているのだが、どうしても彼は納得できなかった。
    「似ても似つかないではないか」
    狼狽えるフェルディナントに、シルヴァンが更なる追い打ちをかける。
    「おやぁ、艶やかな黒髪の中に浮かぶ煌めく黄緑色の瞳は、月を思わせるようだっけか? 声の低い男は、声変わり前は高いことが多いですからねぇ」
    この追撃で傷を負ったのは、ヒュ―ベルトだったらしい。
    彼の顔がじわじわと赤らんでいく。
    フェルディナントはヒュ―ベルトの反応に絶望を覚えながらも、まだ認めない。
    それにとどめをさしたのは、エーデルガルトだった。
    「ヒュ―ベルト、あなた今読みかけの本を持っていないかしら」
    「…………ありますが。はぁ、我が主も良い性格をしておられる」
    ヒュ―ベルトが小さな本を取り出せば、そこには1枚の栞が挟まっている。
    紫の布紐がついた手作りらしいそれには、橙色の薔薇が押し花となって貼り付けられていた。
    それを見て、フェルディナントもついに認めざるを得なくなったらしい。
    みるみるうちに顔を真っ赤に染め上げた。
    「別に、当時から貴殿のことは特に好いてはおりませんでした。ですが訳あってずっと女の格好をしておりましたから、少女性に引っ張られたと言いましょうか。捨てるのがしのびなかったのです」
    「あの時のあなたの困惑っぷりは面白かったわね」
    ヒュ―ベルトはフェルディナントを直視できなくなり顔を背けたが、耳から首から何から何まで色付いている。
    フェルディナントはせめて何か言おうと口を開いたが、何の音にもならなかった。
    まさか、あの可憐な少女の正体がヒュ―ベルトで。
    即ち自分はヒュ―ベルトに初恋を捧げたということで……
    フェルディナントはジッとヒュ―ベルトを見つめた。
    艶やかな黒髪に、月を思わせる黄緑の瞳。
    細身なところも、低くはなったが掠れ気味の声も。
    同じだ、今も同じ。
    名もなき少女への初恋は、終わったと思っていた。
    あの薔薇も、渡せただけで十分だったというのに。
    まさか彼女が——いや、彼があの時の薔薇を大切にしていて、よもや今も携帯してくれていただなんて。
    「……そんな、懐かしい目で見つめないでください」
    当時は見ることが叶わなかった初恋の少女の照れ顔に、フェルディナントは胸が高鳴るのを感じたのだった。
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    DONEフェルヒューでキスの日。 二人の間ですっかり恒例と化した茶会は、必ず昼下がりに行われるとは限らない。優雅に社交にだけ精を出していればよいだけであった貴族たちの時代とは違うのだ。地位と立場のあるものほど、日々忙しく立ち回らねば国政は回っていかない。改革とはそういうもので、主の目指す道の実現に向けて、邁進する毎日である。よって、どちらもが地位も立場もある人間である自分とフェルディナントとは、お互いに自由になる時間は少ないのだ。
     寸暇を惜しんで政務に勤しむのはどうやら己の性分には適性があったようで、多忙の日々になんら不満など持ち得なかったのではあるが、過労が祟って執務室で昏倒したことをきっかけに、適宜休息とは取らねばならないものだと主とかつての師とに二人がかりで叱りつけられることになってしまった。そこで何故だか巻き込まれてしまったのがフェルディナントである。互いにテフ豆と着香茶の茶葉とを贈り合ってから、時折茶会を開くようになっていたことを、主たちもしっかり把握していたらしい。フェルディナントにもちゃんと休息を取らせたかったからちょうどいい、ベレスはそうにまりと微笑んで、不可解な取り決めを押し付けてきた。
    『フェル 4822