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    CitrusCat0602

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    CitrusCat0602

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    四話完結無理でした 今回で終わるはずだったのに どうして 7000文字近くある
    よその子 というかプロチコ盛り沢山でお送りしております よろしくお願いします
    胎児の夢シリーズです

    夜明けの神託「チコちゃん、ご飯は三食しっかり食べなあかんで!」

    「チコちゃん夜更かしは体に毒や、ちゃんと寝よな!」

    「僕がおるのわかってます?突然着替えようとするのやめてな……」

    「待って待ってチコちゃん!そのまま行ったら電柱にぶつかるで!」

    チコーニャは頭痛がしていた。あの日、あの時、プロキオンの幻覚らしきものを見て、それが喋り出したからてっきり責められるのだとばかりに思っていたのに、何故だか彼の口からは次々お小言が飛んでくる。あまりにお小言が多いので今まで最低限死なないくらいの生活をしていたのが見る見るうちに改善していた。おかげで少し立ち直ったのかと安心した目で見られている。
    誰かに現状を訴えたいが彼が他に見えていない辺りやはり幻覚であるのは間違いないだろう。ならば誰に訴えてもあまり意味はなさそうで、自分はどうしたらいいのだと頭を抱える毎日である。
    というかそもそも白百合はどこに行ったのだ。ここ最近ずっとプロキオンの幻覚しか見ていない。幻覚にも休みとかあるんだろうかと現実逃避気味にチコーニャは思っていた。

    「チコちゃん?箸が止まっとるよ」
    「……」
    「あ、チコちゃんの嫌いな野菜。ちゃんと食べよな」
    「…………」

    実に頭が痛い。もく……とチコーニャは大人しく野菜を食べた。相変わらず味はしない。しゃきしゃきとした食感のみが口の中に広がる。
    えらい!と満足そうにプロキオンが頷いているのを見ながら、チコーニャはどうしよう、と思った。
    プロキオンの幻覚は白百合と違って誰かと一緒にいても出てくる。稀に笑わせようとしてくるから更に頭が痛い。すぐに笑ってしまう幼体の頃でなくて良かったとその時ばかりは心から思った。

    そんなこんなで、早くも一ヶ月が立とうとしている。プロキオンの幻覚にどう接したらいいのかは未だにわからないが、徐々に安心している自分がいて、ああもしかして、本物なのでは?自分にだけにしか見えないだけで彼は幻覚というより幽霊に近いのでは?と、そういった考えが頭によぎった。

    「……そんなはずはないのに」
    「?どうし、」

    ぼろぼろとチコーニャが突然泣き出して、プロキオンは絶句する。頭の中で原因を探るが、彼の見ていた限り彼女が泣き出すような要素は特にない。なら体調不良だろうかとプロキオンは声を上げた。

    「なして泣いとるの?どっか痛い?気持ち悪い?」
    「……なんで、あの人の姿をしてるんですか」
    「……は」
    「どうせ、どうせいなくなるくせにっ、なんで安心させるのっ?!こんな、ことなら、こんなことならっ、白百合に責められる方がずぅっとマシだった……!」

    本物だったら、本物だったらいくら優しい人だったとはいえ恨み言のひとつくらいは言うだろう。そうチコーニャは思っていた。だってそのくらいのことを自分はしてしまったのだから。なのに目の前のそれは一度も自分を責めてはくれない。このままぬるま湯のような優しさに浸って慣れてしまえば、それを失った時今度こそ自分はもう立ちあがれなくなる。ならば安心感など与えてくれない方がいい。痛みの方がよっぽどいい。
    チコーニャは泣きじゃくっている。彼女の頭に触れようと手を伸ばし、しかしそれがすうと通り抜けたのを見て、心臓を握られたかのような心地になった。……そうだった。プロキオンは顔を顰める。今の自分では満足に慰めてやることもできない。ぐ、と拳を握り締め、ただ彼は目の前の少女が泣き止むのを待つことしか出来なかった。
    くすくす。リリーの笑い声が聞こえて一瞬意識が逸れる。視界の端に白色の髪先が揺れるのが見えた。

    **

    プロキオンはニヴルヘルの街の中を歩いている。正確には漂っていたというのが正しいのだろうが、ともかく彼はニヴルヘルの街の中にいた。チコーニャを一人にして大丈夫なのかという心配はあるが、精神状態も悪くはなかったようだし、大丈夫だと思いたい。
    ふと、ガラークチカの喫茶店が目に留まる。考え抜いた結果、彼は喫茶店の中に入った。中にはガラークチカが一人コップを磨いていて、カノープスがその前に座っている。

    「……お久しぶりです」
    「!」

    ガラークチカが困ったようにそう言うので、プロキオンは大きく目を見開く。カノープスが振り向くので、思わずにへら、と笑ってみたが、彼にはプロキオンのことが感知できない様子できょろきょろと辺りを見回していた。

    「……?」
    「プロキオンくんがそこにいるんです」
    「……プロキオンが。」

    意外と驚いた様子のないカノープスに、プロキオンは不思議そうに首を傾げる。それに対して、ガラークチカはふふっと笑うとまた口を開いた。

    「以前に、鏡であなたの存在は感知されていたんです。まあこうして動き回るようになるとは思っていませんでしたが」
    「鏡……ミラちゃんのこと?」
    「ええ。本当は……」

    ガラークチカは何かを言いかけて言葉を切る。カノープスは何とも言えない顔をしていた。無表情ながら、どこか落ち込んでいるように見える。気まずい空気感に何があったかを知らないプロキオンは落ち着かない様子で二人を交互に見やった。それを感じたガラークチカはまた困ったように笑う。

    「……二人は何を話しとったの?」
    「……。そうですね、まあ今後のことを少々」

    その今後のことについては教える気がないようで、にこりとガラークチカは微笑みを見せる。片眉を上げてそれを凝視していたが、やがて聞き出すのを諦めて頬を掻いた。カノープスも特に口にするつもりはないようで、ただ静かに紅茶を飲んでいる。

    「そういえばプロキオンはここで何を?」
    「え?ああ、いやまあ、なんつーか、思うことがあってな」
    「思うことがあるそうです」
    「……そっかあ、カノくんには僕の声聞こえとらんのよな」

    通訳をするようにガラークチカがカノープスに言うのを聞いて、一抹の寂しさをプロキオンは感じる。ガラークチカがじいとこちらに見えないはずの目を向けているのを感じ、プロキオンはガラークチカを見た。

    「……ん?なんやそんなにじっと見て」
    「……いえ、うーん。言いたいことがあったんですが、うーん。」
    「……?」

    暫く唸った後、今はまだその時でないと判断したのか、彼女は眉尻を下げてなんでもない、と口にする。

    「ええ~~~なんやねん気になる~~~~」

    ガラークチカはただ微笑むだけで何も言わない。それを見るとプロキオンはまた諦めて肩を落とした。どうやら自分に関係することのようだし、その内教えてくれるだろうと思いながら、彼はカノープスの方を見る。カノープスはじっとこちらの方を見ていたが、やはり自分と目が合うことはない。プロキオンは何とも言えない笑いを顔に浮かべる。

    「……カノ君によろしく言っといてくれへん?」
    「プロキオンくんがよろしくだそうです」
    「ちゃうちゃうそうじゃない」
    「ガラークチカ、恐らくそういうことではないと思います……」

    二人から一度にツッコミを入れられ、あら~とガラークチカは首を傾げた。素でやっているのかわざとやっているのかわかりづらい反応である。プロキオンは肩を竦め、それからちらりと時計を見た。

    「それじゃあ、僕そろそろ行くわ。」
    「はい、また今度。」
    「……もう行くんですね?また会いましょう、プロキオン」

    ひら、と誰に見えもしないのに手を振って、プロキオンは喫茶店から出る。チコーニャの部屋に戻ろうとしながら、そういえば何故ガラークチカには自分のことがわかったのだろうと首を傾げた。道行く人々は誰も彼に気づかない。プロキオンは一度喫茶店の方を振り向いて、しかしそのまま歩いて行った。

    **

    部屋に戻ると、何故かドアが微妙に開いていた。仮にも女性の一人暮らしでこれはまずいだろうと思いながら扉の中に入る。注意しておこう、と顔を上げて彼は目を見開いた。部屋の中が血まみれになっている。ないはずの血の気が引いていくのを感じながら、プロキオンはどうにか足を動かして室内へ進んだ。

    「チコちゃん!?チコちゃん!!」

    誰からも返事が来ない。チコーニャはどうやらここにいないようで姿も見えなかった。何か手掛かりはないかと周囲を見回す。窓はカーテンまでしっかりと閉め切られていた。止血したのか或いは竜族特有の治癒能力か、部屋の外にも血痕がなかったことを思い出す。そうなるといよいよどこに向かえば彼女に会えるのかわからない。
    一人にすべきではなかった、と唇を噛む。

    「おまえの家」
    「!」

    びくりと肩を震わせてプロキオンは背後を振り向いた。夢の中で出会った、チコーニャに似た雰囲気の少女が眠たげにこちらを見ている。彼女が誰なのか、彼には未だにわからない。

    「……僕の家?」
    「……あなたが食べられた場所に、あの子がいる。」

    自分が食われた場所。……プロキオンの家。何をしに行ったのだろうか、何にせよ部屋の惨状を見るにこのまま放置しても良いことはなさそうだということだけはわかる。プロキオンは少しの間視線を床に向け、再び少女に目を向けた。そこにはいつの間にやら誰もいない。

    **

    死にたい。今死んだら、まだ苦しまずに死ねる気がする。ぼんやりとそんなことを思いながら街の中を歩いていれば、気づいたらプロキオンの家だった場所に来ていた。何気なく扉を開き、中へ入る。誰かが処理したのだろう、あの日床に散乱していた血だまりはなく、静かで暗い家は家主の帰りを待っていた。
    奥へ進めば進むほど、幼体の頃にプロキオンと過ごした思い出がいくつも思い出されて、息が苦しくなる。

    「おまえが壊したのよ」

    白百合がそう囁いた。

    「あのままでいれば、おまえが欲さえ持たなければ、今も一緒にいられたかもしれない」

    身体から力が抜けて、膝をつく。長い髪がばさりと床に広がった。

    「苦しい?でもこれは全部おまえが選んだことよ。おまえが望んで、おまえが選んで、おまえが行動したからこうなってるの。自分がやったことの責任は、自分が取らないといけないわね?」

    ――ところで、この家って包丁はどこにあったかしら?
    くすくす、くすくすくす。笑い声を背中に、チコーニャは両手で顔を覆う。彼女が勧めていることが何か、当然わかっていた。プロキオンの幻覚が見えなくなる前に死んでしまえば、まだマシな気分のまま死ねるかもしれない。それでも今はまだ動く気になれなくて、そのまま蹲る。

    「選べないの?死にたくないの?ふふふ、死ぬのが怖い?自分の命が大切?お前は彼の命を奪ったのに?」

    少女の指の隙間から水滴が落ちた。ぐず、と鼻を啜る音が聞こえてくると、白百合はおもちゃを前にした子供のような無邪気な笑みを浮かべる。追い打ちをかけようと口を開いて、ふと後ろを振り向いた。プロキオンが玄関口からじいっとこちらを見ている。呆気に取られる白百合を見て、プロキオンはゆっくりと目を眇めた。
    夢の中のリリーとのあまりの落差に、粗悪なコピーという言葉が彼の頭をよぎる。粗悪にも程があると思いながらプロキオンはゆっくりと家の中に入り、白百合に近づいた。彼女は何かを言おうとしたがそれより先にプロキオンに押しのけられる。彼女は一度目障りだと言うように強くプロキオンを睨みつけると霞のように消えた。

    「……?」

    先ほどまでうるさく笑っていた声が聞こえなくなり、チコーニャが後ろを振り向く。ふわりと極彩色の花びらが視界を遮った。チコーニャには知る由もないが――それはプロキオンが餞別に貰った花の物だった。ぐ、と腕を掴まれ、チコーニャは花びらの中に引き込まれる。ぽすん、とあるはずのない感触と共に強く抱きしめられれば、チコーニャは唖然としてそのまま腕の中に収まった。するはずのない懐かしい匂いがして、じわ、とまた瞳に涙が浮かんだ。

    「……ぷろきおんさん」
    「うん」
    「ご、……ごめん、ごめんなざ、い、」
    「僕は怒ってないよ」

    頭を撫でる手の感触に、堰を切ったように涙がこぼれ落ちていく。ぎゅう、としがみつくように抱き着いて、チコーニャはとうとう声を上げて泣き始めた。プロキオンは同じくらいの強さで抱きしめてやりながら、彼女の背や頭を何度も優しく撫でてやる。二人しかいない部屋の中に、ただ少女の幼い泣き声だけが響いていた。

    **

    どれくらいの間そうしていただろうか、落ち着いてきたのかチコーニャが身動いだ。プロキオンは彼女を離すとその場に座らせる。涙の跡を拭ってやりながら、困ったようににこりと微笑んだ。

    「僕のこと、わかる?」
    「……」

    チコーニャはこくりと頷いた。ずっと幻覚だと思っていたものが結局本人だとわかって、どういう反応をしたらいいのかチコーニャにはわからない。

    「……何から話せばええんやろなー、まあなんていうか、僕はな、僕に悪いとこがあったと思っとってな。」
    「……チコーニャは、……それでも沢山悪いことをしました」
    「それはな、まあ確かに悪くないとは言えんけど。でも十分つらい思いしたやろ?きみはようやったよ」

    また頭を撫でられる。チコーニャはぐ、と唇を噛んでまた泣きそうなのを堪えた。少しの間深呼吸を繰り返し、それからちらりと目の前の青年を見やる。彼は目が合うと微笑んだまま首を傾げた。色々と聞きたいことが沢山あるせいで、チコーニャの方も言葉にならないでいる。少しの沈黙の後、プロキオンが先に口を開いた。

    「……あのな、僕、6人くらい兄弟がおったんよ。特によく一緒にいた二人はドグマとプレイアっつー名前でな……」

    ぱちり、チコーニャは瞬いてプロキオンのことを見る。プロキオンは懐かしむような、しかし痛いのを我慢するような顔をしていた。確かに幸せだった在りし日のこと、けれどそれが崩落して訪れた破滅のこと。思い出すのもつらいその記憶は、けれど腹を割って話すと決めた以上、彼女には伝えておかねばならない内容だった。血を吐くような思いで、深呼吸を一つする。そうしてから、彼は言葉をつづけた。

    「でも……まあ、こんな言い方だとあれやけど兄弟喧嘩っつーかな、まあ色々あって……、……二人とも僕のせいでおかしくなってしまったから、僕が殺して……妹の力を使って、色んな悪いことをした。……だから、僕はね、きみが思うような人じゃないんだ、チコーニャ。高潔でもないし、純粋でもない。とっくの昔に……穢れてしまっている。」
    「……」
    「……僕は、うん、怖かったんだ、きみと向き合うのが。きみが、あんまりプレイアに似ていたから。きみが……きみがいつか、僕のせいで壊れてしまうんじゃないかって思っていて、なのに……あんなにカノープスにも言われていたのに、僕は結局きみから逃げてしまった。」

    琥珀の瞳がじいとプロキオンのことを見つめている。隠し切れない無垢さが垣間見えて、オラクルは思わず困ったような笑顔を見せた。良くも悪くも彼女は自分たちに似ていて、しかしきっと育ち方を間違えなければ自分たちとはかけ離れた、それこそ太陽のような存在になっていたのだろうと感じる。

    「……きみが苦しんでいたのなんて、あの雨の日より前に、知っていたのにね。」

    あの日、あの日がきっと最後のチャンスだったのだ。あの日彼女に傘を差してやることができたら、そうしたら、もしかしてこんなに苦しまずに済んだのかもしれない。

    「ごめんねチコーニャ。僕はきみの神様になってあげられない」

    優しく、何度もその頭を撫でる。じっと自分を見上げる琥珀の瞳が少しだけ揺らいで、困ったように伏せられた。

    「……とっくにわかっていました。あなたは……ひどく優しいだけだって」
    「……優しくないよ、僕は弱いだけ」
    「そうだとしても、私は……私は確かにあの日、その弱さに救われたんです」

    今もそう、とチコーニャが苦し気に笑う。今度はプロキオンが彼女の話を聞く番だった。チコーニャは自分の膝上でぎゅう、と拳を握る。彼女自身は、彼ほど過去のことを思い出しても苦しくはない。ただ家族の為にひどい痛みを受け続けたという事実があるのみだ。故に、彼女が躊躇う理由は他にある。

    「これは白百合の妄言なのかもしれませんが……私たちは、私の世界の竜族は、全て何かの目的があって造られているのだと彼女は言っていました。私が身体を弄られることになったそもそもの理由も……私たち雷の竜が繁殖用の家畜で、一番数が多かったから、だそうで。」

    プロキオンが不愉快そうに眉を顰めた。そういう反応をするだろうなあと思っていたから、チコーニャは思わずくすりと笑う。けれど、それで彼女本人に対する態度が変わる様子もないので、ああよかったと胸をなでおろした。

    「……私は200年耐えましたが、所詮優秀なだけの替えが利く存在でした。それは、始祖様……私の本来の神様の一人が仰っていた言葉です。だからあの時私はあなたに縋ったわけですが……でももう、あなたが神様でないことは、ちゃんとわかっています」
    「……そっか」
    「……あなたは怒ってないと、そう言ってくれたけれど……私自身がきっと私を許せないから……。だから、今からでもできることは何でもしたいと思っています。あなたはまだ蘇生したわけではないし、成仏だとかそういうことができるわけでもない。そうですよね?」
    「まあ正確には多分……死んでないんやけど……意識はっきりしとるし」

    何故だか触れることができたのも、今だけのことだと何となくわかっている。先ほどの、リリーからもらった花の力で一度だけ彼の願いが叶ったが、しかしこのままでいれば彼も完全に死に至ることだろう。そうなる前に、どうにかする必要があった。とはいえ死んでないとはどういうことなのかと言いたげな彼女に、プロキオンがうーん、と唸り声を上げる。これ話してええんかなー、と勿体ぶる彼に、チコーニャはじとりとした視線を向けた。

    「いやちゃうねん、ただそのー、ほら、僕の血が特殊っていうか」
    「ああ、そういう。なら気を遣わずとも結構です」
    「え?」

    リリーから与えられた情報の中に、チコーニャが邪神の因子について知っている、という情報はない。なのでそのことをプロキオンは知らず、チコーニャに続きを促した。それに頷き、チコーニャは口を開く。

    「制圧されてこの姿になった後、シリウスにあなたの血について教えられました。だから、大体のことは把握していると思います。多分……あなたは異形になる、という事実を私に言いづらかったんだと思いますが……」
    「ああ……。……正直僕もなんで生きてるのか不思議だったんやけど、多分チコちゃんがその始祖様っつーやつの血引いてるから微妙に時間かかっとるんやな」
    「いずれにせよ、あまり時間はありませんね。……切り離すだけなら、宛があります。一度断ってしまったので、ちょっと気まずいですが」
    「宛?」
    「ええ。」

    チコーニャはじっとプロキオンの顔を見る。その琥珀色の瞳に、プロキオンの姿はまだ映らない。

    「カノープスさんと乃鏡さんに、神器の力を使っていただくのです。」
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