友人以上恋人未満(恋人以上友人未満) 友達だ、と意識するのにはそれほど時間はかからなかったし、恋人だ、と意識するのにもそれほど時間はかからなかった。狡噛は同級生で友人で恋人で、いつかパートナーになる男だって俺は真剣に思っていて、だから恋人になるまでの焦ったいラブコメディ映画の感覚なんて、俺は彼と一緒にいても分からなかった。
苦しく思うようになったのは、むしろ彼と恋人になってからだった。彼が他の誰かと喋っているだけで苦しい、彼が他の誰かから告白されているだけで苦しい、狡噛は夜寝る前に必ず俺におやすみの挨拶と愛してるの挨拶をしてくれるが、俺はその贅沢なメッセージをもっても、学校が始まるまで悶々とした。学校が始まってもデバイスを見ては悶々とした。恋人ならずっとデバイスを繋げて寝て、起きて挨拶をするのに、狡噛はなぜかそれをしてくれなかったからだ。これはまぁ、同じクラスの女子たちで流行していることなので、狡噛は知らないのかもしれないけれど。
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