その花の名前は知っている「日本には随分桜の木が多いんだな」
住宅街の中にある小さな児童遊園の前を通りがかった時、ぽつりとデュフォーが呟いた。
「ん? ああ、そうだな。あんまり気にした事なかったが、言われてみれば学校の校庭なんかにはほとんど植えてあるな」
足を止め後ろを歩いていた友人の方を振り向くと、そのはずみで手にしたエコバッグの中の酒瓶がぶつかり合い微かに音を立てた。
淡い色の瞳が見上げるのにつられるように頭上を見上げると、盛りの桜色がトンネルを作っている。
「それにしても良くこの花が桜だって知ってたな」
言ってしまってから、そういえばこいつにかかれば分かって当たり前なのだと気づく。それにしても花なんかには全く興味のないタイプだと思っていた。
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