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    Crow_K_DazsP

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    ストライドゲート〜NEXTの間
    伊マモのつもりで書いているけどマモ伊っぽく見えるかもしれない伊吹くんとマモルさんの冬の日の話
    イベント終了後Pixivで公開(した)

    #伊マモ
    italianFritillary
    #結ブ3
    conjunctionBu3

    君の手の温もりは。「寒いねぇ、伊吹くん」
    終電間近の駅のホーム端。普及協会の体制が変わり、大きなゴタゴタは既に片付いて久しいものの仕事量はあまり減らず。今日も今日とて仕事に忙殺されて、お疲れ様と一杯飲んで、伊吹と安城は並んで電車を待っている。
    年末も近くなり一段と増した寒さに、安城ははー、と手に息を吹きかけて、両手を擦り合わせていた。
    そんな安城がちらりと伊吹を見たと思えば、ずぽり、と伊吹が手を突っ込んでいたコートのポケットに自分の手を突っ込んで、伊吹の手を握ってきた。
    「…ッ、おい安城」
    「わあ、君の手すごいあったかいねえ」
    すり、と手の甲に親指を滑らせたり、握りしめたりと伊吹の手を好きに弄り回す安城に、抗議の声を上げるがどこ吹く風で、にこにこ微笑みを返して来るので、伊吹は諦めて好きにさせる。そうすると確かに冷たかった安城の手がだんだんと伊吹の温度に染められていく。
    「君の手を取ればこんなに温かいのにねえ」
    しみじみ呟く安城を、伊吹は怪訝そうに見た。すると、ちょっと失礼かもしれないけどね、と前置きして安城は続ける。
    「君って第一印象は冷たい印象を持たせるけど、君を良く知れば知るほど、ファイトすればするほど、こんなに内面が熱くて一生懸命で、ヴァンガードの事を愛してて、優しい人なんだって知れるのに。伝わりにくいところは勿体無いなあって思うんだよね」
    「…は」
    思わぬ評価に、伊吹は目を丸くする。自分が優しい?熱い?そんな風に評価されるとは思っても見なかった。
    そもそも、熱いだの優しいだのと言う評価は安城にこそ当てはまるものだ。分け隔てなく優しく、たおやかで、爽やかな印象を持たせる一方、結構強かで、負けず嫌いで、いざファイトとなればレッドブラウンの瞳に激しい炎を宿らせ対戦相手を容赦なく焼き尽くす。同じクランを使う幼馴染とはまた違った熱さを持ち、心からヴァンガードを愛しているかげろうのクランリーダー。
    「…買い被り過ぎだ。それによく、手が冷たい奴は心が温かいって言うだろう。ならその逆は冷たいんじゃないのか」
    「絶対違うよ!」
    あんまり真剣な声で否定されて、伊吹は思わず目を見開いてビクリと肩を震わせた。ぎゅう、と伊吹の手を握る安城の手に力がこもる。
    「君は冷たくなんてない。伊吹くんはとても熱い人だ。君はいつも言うじゃないか。ファイトにはその人間性の全てが現れる、だろう?君ほど誠実で、いつでも全力で、真剣に熱いファイトする人は僕は他に知らない。もちろん、みんな真剣にファイトはしている。でも、君はすごく一生懸命で、君とファイトするとその熱さが伝わってくるんだ。君の熱さに触発されて、こっちも熱くなってくる」
    伊吹の手がポケットから引っ張り出され、安城がその手に自分のもう片方の手を乗せた。
    「君とのファイトはとても楽しい。お互い熱くなれて、勝っても負けても、もっともっとファイトしたいって思える。僕はね、もっともっと君の良さをみんなに知ってもらいたいと思ってるんだ。君はもっと自信を持って良いんだよ!」
    安城はしっかりと伊吹の手を握り、真っ直ぐと伊吹の目を見て、真剣に訴えた。それがあまりにも真剣で、真っ直ぐで、澄んだ瞳で見つめられるので、伊吹ははくはくと口を動かして、短い息を吐くことしかできなくなってしまった。
    心臓が早鐘を打って、身体が熱を持った心地だ。色の薄い伊吹の肌は、顔に集まった熱がすぐに表面に出てしまう。耳まで紅く染まった伊吹の顔を見て、安城は柔らかく微笑んだ。
    「……そ、ういうの、は、」
    伊吹がやっとの思いで声を絞り出す。少し掠れた声が出てしまい、また、真っ直ぐな安城の目を見ていられずふい、と目をそらす。
    「……お前が知っていれば、それでいい」
    「えぇ、そうかい?」
    勿体無いのになあ、と残念そうな声がする。
    そんな風に自分を評価するのなんて安城くらいのものだろう、と伊吹は思う。そもそも自分を罪人と自覚し贖罪の為に彷徨い続け、目的の為なら何を犠牲にしても成し遂げようとしていた伊吹は、自分が他人からどう見られているかに無頓着だ。クロノへの当たりも酷かった自覚もある。そして根が真面目すぎるきらいがある伊吹は、上手に相手を立てたり気を遣ったりする立ち回りは苦手とするところであった。そういう事が得意な安城に対する評価を見れば、自分への評価などろくなものではないはずだ、と伊吹は自己分析している。
    目を逸らして思考に耽る伊吹の様子を見てか、安城はもう一度、しっかりと伊吹の手を握り直した。
    「僕はこの、君の温かい手が好きだよ、伊吹くん」
    何をする気なのかと伊吹が安城の方を見たタイミングで、はっきりと告げる安城の瞳は柔らかい。
    「…ッ、いつまで手を握っているつもりだ」
    居た堪れなくなって、強引に安城の手を振り払う。照れ隠しなのが分かっている安城がふふ、と漏らす声を聞いて、何だか悔しい気持ちになり仕返ししてやろうかとも思うが、この男を照れさせるのは難しいだろう。
    チッ、と舌打ちを漏らすものの、安城はやはり変わらずニコニコしているだけだった。
    全く面白くない。少し拗ねていれば、乗る電車が近付いて来て、安城がそちらを向いた時に寒さで耳が冷えて少し赤くなっているのが見えたので、電車に気を取られている隙にふ、と息を吹きかける。
    「ひゃぁぁぁ!!?」
    完全に不意打ちだったせいか効果は絶大だったようで、情けない声を上げて安城が飛び上がる。子供っぽい仕返しだが安城の笑顔以外の表情を見ることができたので伊吹は満足してにやりと笑う。ほんの少し涙目で頬を真っ赤に染めた顔が少し腰にキたのは内緒だ。
    「ちょっと伊吹くん!!」
    「何だ、これくらい仕返ししたって良いだろう」
    「もう、君がこんな子供みたいな仕返しするなんて思わなかったよ!」
    「お前よりは年下だからな」
    くく、と伊吹は声を抑えて笑いつつ、ドアが開いた電車に乗り込む。それを見ながら全くもう、と言いつつ安城が柔らかく微笑んで、伊吹の後に続くのだった。
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