朝ラー主駿長く、長く、果てがないかのようにも思える冒険だった。
「やっと終わった...結局何時間くらいプレイしてたんだろ」
「セーブスロットも100個目か...100時間以上よくやったもんだぜ」
リビングの掘りごたつの周りに散乱するクッションやマットレス。
連休だからってことで駿を家に呼んで途中まで遊んでいたRPGの残りを片付けようと勤しんでいたら、やめ時が分からなくなり空は白み始めてこんな時間だ。
ルフェルはすでに寝落ちてクッションの山の中に埋もれて翼の一部が呼吸に合わせて揺れているだけ。
朝の静かな室内にエンディングムービーの荘厳な音楽が流れ、名作RPGに尽力した人々の名が豆粒くらいの大きさで流れていく。
「昼夜逆転しちゃうけど、さすがに寝たほうがいいよね」
「だな。無理な姿勢続けて体があちこち痛ぇ」
首と肩を回す駿の体からゴキゴキと音がする。
折れてないかちょっと心配になるくらいの音だ。
でも、それ以上に骨を覆う靭やかな筋肉の隆起が貸した薄いTシャツの下から透けて見えて、勝手に喉がゴクリとなった。
ぐぅ
「お?なんだ、腹ァ減ってんのか?」
俺の体のバカ!
這い出た温い欲望が呑気な音にかき消される。
あわよくばこのまま抱きついたりしちゃったりして、クッションとマットレスの海に溺れながら駿の体温を堪能....なんて思ってたのに。
「冷蔵庫ん中はさっき見たしな...ちょっと待ってな」
台所借りるぜ、と消えていく背中に美味しいものにありつけるであろう喜びと、寂しさの両方が沁みる。
包丁がまな板に下りる音とだしのふわりとした蒸気で上がる湿度を感じつつ、クッションに顔を埋める。
Thank you for playing!の文字が消えて画面が暗くなり、タイトルに戻ったのでゲーム機を消した。
体は重怠いのに、なんて心地良い時間なんだろう。
すぐそばにあるクッションを引き寄せて思い切り息を吸い込むと、先ほど抱きすくめ損ねた愛しい香りがする。
普段はなんでもないもののはずなのに、急に特別な何かに思えてシーツの上からちゅう、と唇を吸い付けた。
我ながら阿呆すぎる。
「へい、おまちどう。朝ラー一丁、てな。さ、そろそろ起きな」
台所から丼を2つ運んできた駿に尻を軽く叩かれた。
むくりと起き上がると澄んだ琥珀色のスープに艷やかな麺が浮かぶ。
美味そう。
「さっぱりの味付けの方がいいと思って、貝出汁に油少なめにしてみた。...今にも食いたそうな顔してんな」
駿のクスリと笑った表情にさっきから口の中で滲み出してきた唾液が余計に分泌されて、もうやばい。
「駿、あと100日泊まっていかない?」
「無茶言うな」
「じゃあ結婚しよ」
「お前今俺が何言ったか聞いてた?」