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    こりゃ

    @coo_tsuka49

    🐺🐯フシータめぐゆじ。練習、壁打ち、ときにはウェンリ用

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    こりゃ

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    【影と火花】ふしいた/めぐゆじwebオンリー
    開催おめでとうございます!

    バレンタインデーに🐺へ🍫を渡したい🐯のお話です。ゆるふわハピハピ。

    #影と火花
    shadowsAndSparks
    #フシータ
    #めぐゆじ
    landOfOnesBirth

    虎杖悠仁はチョコを渡したい教室に、いない。
    一緒に帰るから待ってて、と告げたはずの伏黒の姿が見当たらない。
    勢いよく開けた扉に手を掛けたまま、虎杖は呆然と入り口に立ち尽くしていた。
    「アイツなら帰ったわよ」
    鞄を肩に掛け、帰り支度を整えた野薔薇の姿だけがそこにあった。
    「うそだぁ……」
    「はぁ?人に伝言押し付けといて嘘つき呼ばわりする?」
    失礼極まりないといった表情で凄まれれば、「伝言って?」と訊き返したいのをごくりと唾と共に飲み込んだ。
    推測するに、伏黒から預かった、もとい押し付けられた言伝の為に虎杖を待っていたのだろう。それならば感謝を先に伝えるべきだったと虎杖は反省する。
    伏黒は帰っちゃったし、釘崎は怒らせちゃうし。
    しゅんと肩を落とした虎杖を見て、野薔薇はあからさまなため息をついた。しかしその表情に先程までの不機嫌は残っていない。
    「急ぎの任務が入った、だってよ」
    「え?」
    「準備あるから一旦寮に帰るって。アンタも急いだ方がいいんじゃない?」
    入口を塞ぐ虎杖の目の前にツカツカと歩み出た野薔薇は、喝を入れるように虎杖の額を指で容赦なく弾いた。
    「痛っ!」
    そうだ、呆けてる暇はない。今すぐ伏黒を追いかけなければ。思うと同時に教室へ背を向けた。数歩駆け出したところですぐに引き返し、教室へ顔だけ覗かせる。
    「ありがと釘崎!」
    「お礼は改めて請求する」
    「わかった!」
    互いにひらひらと手を振り合い、今度こそ教室を後にした。全速力で走ればそう時間はかからない。
    たぶん間に合う。
    いや、間に合わせなきゃならない理由が虎杖にはあった。

    知ってる?
    今日、バレンタインだよ!?
    伏黒はチョコいらないって言ってたけど、俺はあげたいの、チョコ!
    初めての恋人と初めて迎えたバレンタインに浮かれるなと言う方が無理なんですけど。
    てかなんで伏黒バレンタインに無頓着なの……
    イベントとかあんま興味ねーのかな、なさそうだな。
    でも俺は伏黒とカップルイベントやりたい!
    から勝手にやる!
    伏黒がバレンタインを意識せず自然にチョコを受け取ってくれるであろう、この綿密に練った計画。場面は最終幕に差し掛かった。ここまできたら成功させるしかないのだ。
    俺は伏黒にチョコを渡したい!

    ◇◇◇

    隣室の扉の前。
    高専から寮へ全速力した位では虎杖の息が乱れることはない。
    別の意味で数度、深呼吸をする。いつもより控え目な強さで扉をノックした。
    「ふしぐろー?」
    「開いてる」
    すぐさま返ってきた声に背筋をピンと伸ばした。
    ポケットに忍ばせたチョコレートを布越しに確認する。よし、ちゃんとある。
    もう一度大きく深く呼吸をして、通い慣れた部屋の扉をそろりと開けた。
    そこには今度こそ、当たり前だけど会いたかった伏黒がいた。ようやく会えた。
    ようやく、といっても実際は一時間にも満たないが。体感、焦りからやたら長く感じた。
    「悪い、黙って先帰った」
    「釘崎に聞いたよ。急だな」
    「ああ、もうすぐ出る」
    「そっか」
    もうすぐ出る、と言った伏黒は虎杖の手を引き、ベッドへ腰掛けた。
    誘(いざな)われるまま虎杖も並んで腰を下ろすと、膝にコテンと伏黒の頭が乗っかって少し拍子抜けする。
    俺の緊張は…………まぁ、いいか。
    てかコレ、甘えたな伏黒さんだ。
    この頃、稀ではあるが、伏黒がこうやって無言で甘えてくることがあった。
    最初こそは普段とのギャップや意外性にびっくりした虎杖だが、今では『甘えた伏黒』の出現を楽しみにしている。
    必ずふたりだけの時間に、自分以外には絶対見せない姿だ。それを思うと胸部、腹部、それより下あたりが堪らなくキュンとなる。
    本人には「かわいい」などと言ったら怒られそうで未だ言えていない。
    しかしいつかこんな伏黒を「かわいーかわいー」と思い切りぐっしゃぐっしゃに撫で回してやりたい。
    次くらいに言ってみようかな、と思いながら漆黒の髪に指を通す。
    そっと梳いてやると長い睫毛を伏せた伏黒は、虎杖の腹にぐりぐりと顔を埋めて腰に回した腕に力を込めた。
    その様子に虎杖は表情を綻ばせ、子を宥めるようにそっと頭を撫ぜた。
    自分に気を許し、甘えたになる伏黒がどうにもこうにも愛おしい。
    今にも健やかに寝息をたてそうな横顔をしばし見つめ、こっそり髪に小さくキスを落とす。
    出来ることならチューを強請って抱き合って、そのままベッドに転がってしまいたい。
    欲の熱に理性が溶けそうになるのを「我慢、我慢」と心の中で繰り返してなんとか抑える。
    ーーこんな日に急な任務か、ついてねぇな。
    二人を引き裂く「急な任務」なんて馬に蹴られてどっか遠くまで飛んでいってしまえ。
    てか今からでも飛んでいってくんねーかな?
    そんな虎杖の願い虚しく、バレンタインデーだからといって二人を取り巻く現実は容赦などしてくれなかった。

    伏黒のスマートフォンがポォンと鳴って、甘い時間は無情にも打ち切られた。出発の準備が出来ました、大方そんな補助監督からのメッセージだろう。
    やるせないとばかりに短いため息をついた伏黒は、むくりと起き上がって虎杖と向かい合った。
    「……何か用だったか?」
    「あ」
    忘れていた訳ではなかった。ちょっと一旦置いといただけ。てか、甘えたな伏黒に調子を狂わされたんだよ。
    心の中で自分に言い訳をしつつ、ポケットに手を突っ込んでチョコレートを取り出した。
    しまった、ちょっと箱があったかい。
    「これ、任務中のおやつにどうぞ」
    ラッピングも何もない、買ってそのままの箱を何気なしの風を装って伏黒へ差し出した。
    それは誰もが見たこと食べたことがあるであろう、庶民的なチョコレート。
    有名お菓子メーカーの、ストロベリーチョコとミルクチョコが組み合わさった三角錐の、初の月面着陸成功した宇宙船と同じ名前の、あのチョコレート。
    「残ったやつで悪いんだけど」
    謙遜とかではなく、それは本当に最後まで残ったものだった。
    野薔薇や先輩たちが「これはちょっとなぁ」って言いながら避(よ)けていった可哀想なチョコレート。
    何がそんなに引っかかるのか、虎杖自身には分からなかった。
    残りものだけど美味しいよ、そのチョコ。

    ーー既に察しの良い方はお分かりだろう。
    これが虎杖の考えた「綿密な計画」である。
    実行前の仕込みーー伏黒の視界に入る場面で「これは友チョコです!」と大声で掲げ、同じようなチョコレート菓子を二年の先輩と野薔薇へ配っておいた。
    みんなに配ったチョコレートは、伏黒にチョコレートを受け取って貰うためだけの下準備。
    これなら伏黒もただの菓子だと思って受け取ってくれるだろう、という算段である。
    虎杖にとって、それが叶えば充分だった。
    可能なら一緒に楽しみたいが、今回はどうやら自分の独りよがりイベントなのだ。
    興味ないことを押し付ける気にはなれない。なので一人でこっそり実行し、成功させて楽しむことにしたのだ。
    故に、友チョコ配布までいけば後はその流れで伏黒に渡し、計画は完璧!のはずだった。
    しかし気付けば肝心の伏黒を見失い、全速力で寮まで追い掛け、今に至る。
    二人きりのときに渡すつもりじゃなかったんだけどな。
    再び胸が早鐘を打ち始めた。
    緊張で体が熱い。チョコレート、溶けちゃう。
    伏黒がいらないって言ったバレンタインのチョコレートじゃありません。これは任務のお供のおやつです。
    どうか深く考えずにお受け取りください伏黒恵さま。

    差し出された箱を手に取り、伏黒はいちごのイラストが散りばめられたパッケージをまじまじと見つめている。
    イケメンが可愛らしいもの持ってるってだけで絵面すごいな、なんかとても良い。
    心臓をバクバクさせながら虎杖はそんなことをぼんやり考えていた。
    「全員見る目がねーな。いや……」
    「え、これ好き?」
    「まあな」
    意外な返事に緊張が解(ほど)け、口元が緩む。
    唇をキュッと噛んで笑みを堪えていると、伏黒と視線がぶつかった。
    真っ直ぐに瞳を見据えられる。抑えた欲を見透かされるようで落ち着かない。
    しかし目を逸らせずパチパチと瞬きすると、伏黒の視線が先にふいっと横に流れた。
    手の中のチョコレートを握り締め、伏黒が遠慮がちに訊ねる。
    「……帰ってきてから、食ってもいいか?」
    受け取ってもらうだけで充分だったのに、ちゃんと食ってくれるんだ。
    甘いの苦手だからいらないって言ったんじゃねーのかな。でも、嬉しい!
    「もちろん!」
    すっかり破顔した虎杖は、喜びが突き動かすまま伏黒に勢いよく抱きついた。
    大型犬が飛び付いてきたような勢いだが、すっかり慣れっこな伏黒はそれを難なく受け止めた。

    遅くなるかもしれないけど今夜中には帰るから。
    だから、とその先は言うまでもなく、訊くまでもなく。
    待ち遠しい夜にそれぞれ思いを馳せ、二人は部屋を後にした。
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