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    onionion8

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    onionion8

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    富Kのちょっぴりすけべなの。またしても胸を揉んでるだけの話。

     午後の日差しはやわらかく、開け放った窓にカーテンが揺れている。診療所は開店休業状態で、のどかな時間が過ぎていく。富永は開いていた医学書を閉じ、伸びをした。どこからか鳥の鳴く声が聞こえてくる。パソコンのキーを叩く音は聞こえない。
     診察机を振り返ると、白衣の背中が目に入る。何をしているかは分からないが、休憩を取るにはちょうどいい時間だった。コーヒーでも淹れましょうかと声をかける。ついでに何かお菓子でもあればと席を立ちながら考えた。コーヒーに合うかどうかはさておいて、煎餅くらいはあるだろう。それなら淹れるのは別に緑茶にしてもいい。
    「Kェ?」
     返事のない背に首をかしげ、富永はひとまずそちらに足を向ける。診察室は開放的で広い空間ではあるものの、ほんの数歩で触れられる距離までたどり着く。そよそよと吹きすぎる風が髪を揺らし、机の上の紙をぺらぺらとめくっていく。
    「……あ」
     真後ろから少し回り込み、斜めからそっと覗きこんだ富永は、思わず間の抜けた声を上げた。周りの音さえ聞こえないほどの過集中。そう予想して、あの凛とした眼差しを横から見るのを期待していたはずだった。
     夜色の、星を閉じ込めたような瞳。ドクターKの称号も、神代一人の名も知らないうちから魅せられた、燦然と輝く道しるべ。手に入れるためなら何だって投げ出していいと惑わす魔性の宝石とは違えども、残りの人生すべてを捧げてもいいと思わされることは幾度もある。富永はその運命の誘惑に甘く浸りながら、Kのすぐそばで日々を送っている。
     けれど今は、あのこわいくらいに綺麗な瞳は隠れていた。薄い皮膚。長い睫毛。閉じられた瞼の下に眼球の丸さを感じることはできる。しかしどれだけ見つめても、開かれる気配はまるでない。ここだけ時が止まってしまったかのように、ただ静かにめずらしい姿を見せてくれている。
    「Kも、うたた寝なんてするんですねェ……」
     ふふ、と口元がゆるみ笑みが落ちた。話しかけた声に返事はもちろん返らない。富永はもう一歩近づき眠る男を見下ろすと、少し屈んで顔を寄せる。悪戯をしようと思ったわけでなく、あまりにも静かで生死の境界すら曖昧に見えたからだった。かすかに空気を震わす健やかな寝息に安堵する。
     なるべく音を立てないように、患者用の丸椅子を引き寄せ富永は腰掛けた。両足がしっかり床につく高さ。Kよりも頭の位置が低くなる。少し見上げる角度は慣れた心地よさがあり、それでいて見つめる先の寝顔はいまいち見慣れない。ちぐはぐな感じに胸がどきどきと跳ねてしまう。
    「オレも休憩入りますね」
     ひっそりとそう呟き、誰にともなくサボりではないと主張する。応えるようにカーテンがふわりと大きく翻る。けれど富永は窓に目を向けることはなく、ただ呼吸するだけのKを静かに見守った。コーヒーも、午後のおやつも我慢して、ただ座ったままで時を過ごす。太陽が時おり雲に隠れる以外は変化のほとんどない時間。
     もし、このままKが目覚めなければ。暇な頭が有り得ないな仮定を思いつく。
     触れても構わないだろうか。富永はうずうずと疼く右手をぎゅっと握りしめ、息を大きく吸って吐き出した。してはいけないことというのはどうしてこうも魅力的なのか。ふくらむ妄想に呆れながらも唇を歪ませる。すやすやと眠るKはまだ目覚めない。
    「あ〜あ、ほんと……」
     疲れている。だから昼日中にこんなことになっている。超人的な男が電源が落ちたように動かなくなっていて、そんな姿に劣情を抱く男がここにいる。渇く喉。滲む汗。爽やかな風が首筋をそろりと撫でていった。富永の手が宙をさまようのを見た者は、富永自身だけである。
     ちょん、と触れた白衣の肩。出会ったばかりの頃ならば、これだけでも起きていただろう。野生の動物めいた敏感さ、あるいは余裕のなさを見せられ驚かされたのは、一度や二度のことではない。
     Kはきっと、村でただひとりの医者として、ぐっすりと眠ることを忘れた身体になっていた。体質として眠りが浅いということも、眠らずにいて平気だということもない。今ならそれがよく分かる。
    「起きないんだ、K」
     にへ、とゆるむ顔。背筋を走るぞくぞくとした甘い痺れ。富永は肩に触れた手を今度は頬に向け伸ばした。指先ではなく手の甲側をそっと触れさせる。皮膚のきめ細やかな感触よりも、あたたかな体温がよく伝わった。
     ん、と小さくもれる声。富永は手を当てたままぎくりと身体が跳ねてしまったが、覚醒まではまだ至らないようだった。ホッとしたような、起きてくれた方がよかったような、どうにも複雑な気持ち。止めてもらうなら今のうちなのにと思いつつ、はぁ、と熱く湿った息を吐く。身を乗り出せば、ついてこれなかった椅子が文句を言うようかたんと小さく音を立てた。
    「K……」
     再び顔を近づける。今度は寝息を感じるためでなく、鼻先を寄せてすんとにおいを嗅ぎにいく。うつむく顔にさらりと落ちる髪からは、ほのかにシャンプーの香りがした。しばらく前から富永とお揃いになった淡い香り。診療所の風呂場を思い描くとずく、と腰に熱が溜まる。もっと、と求めて首筋に鼻が触れるほどに近づけば、消毒のにおいを打ち消す甘い体臭が感じられた。富永は耳奥にごうごうと血の流れていく音を聞く。
    「やば……K、起きてほら」
     囁く声に力はない。見下ろす胸の形に思わず喉が鳴る。組んだ腕の上に乗って強調されたその隆起は、一度意識してしまえばなかなか視線を外せない。気を抜けば手を伸ばして触れているだろう。正面からも魅力的に違いないが、椅子に座った状態だからこそ、後ろから鷲掴んで思いきり揉んでみたくなる。
    「はぁっ、は、K……っ」
     がくがくと、興奮に震える脚を何とか動かした。眠る男の背に回る。みっともなく乱れた吐息がKの後ろ髪を揺らめかせた。富永の両腕がゆっくり持ち上がる。酩酊でもした時のような熱さにどろりと理性が溶けていく。汗ばんだ手を一度自分の白衣で拭ったあとで、だめだと思いながらもたまらずKの胸に触れた。ふに、とやわらかくあたたかな感触が、手のひらから脳へと突き抜ける。
    「ん……っ、ぅ……?」
     かすかな身動ぎ。甘い吐息。起きてしまうという焦りより、反応があることに富永はぐっと唾を飲み込んだ。もう言い訳のできない卑猥な手つきで胸を揉んでいる。指先に触れる小さなしこりをこね回し、ぴんと勃つ乳首を布越しに感じて痺れる悦びに浸っている。
     Kは今、夢のなかでも淫らなことになっているのかもしれない。薄く開いた唇からは、穏やかな寝息ではなく乱れた喘ぎがこぼれている。夢での相手も自分であればいい。富永は人差し指でやさしく乳首のふくらみを撫でながら考える。そんな夢を見たことに戸惑い恥じらうKも、そんな夢のせいで火照る身体を持て余すKもたまらない。想像だけで富永は下半身を熱くした。
    「ん、っ……くぅ……ん、っふ……」
     腰が揺れ、椅子の背に擦りつけそうになるのを必死に耐えて少し屈む。獣めいた吐息がKの耳をくすぐる距離。手のひらはじっとりと熱を持っている。もっちりとした肉の弾力は、もういいと飽きることがない。けれど、それでも、ぐるぐると滾る欲望が、富永の口からどうしようもない言葉となって垂れ落ちる。
    「Kぇ、ね、はやく起きないと、もっとえっちなことしちゃいますよ」
     ひそやかに空に溶ける響き。Kの身体がぴくっと小さく跳ねたようだった。もしやと思い顔を覗きこむ。見つめる先で睫毛が震え、ぱちぱちと瞬いた目が向けられた。涙に潤んで見えるのは、寝起きのせいか快楽のせいかは分からない。ただ、そこに映った自分の顔が、ひどく飢えた目をしているのだけはよく分かる。
    「富永」
     かすれた声に名を呼ばれ、どっ、と心臓が内側から胸を叩いてくる。咄嗟に両腕を上げて降参のポーズを取ってみるが、今さらそれで誤魔化せるものは何もない。
    「そういうのは、あまりよくないと、思うぞ」
    「そっ、どっ……でぇっ……へへ」
     そういうのって何ですか。どれのことですか。いやそんなことよりいつから起きてたんですか。言いたいことは言葉にならず、意味のない笑いが頬を歪ませた。
    「すみません」
     ほんの出来心だったんです。Kの目に怒りの色はなかったが、富永はもうここは土下座しかないかと考える。そんなことで許されるかはともかくとして、上目遣いに見られることから逃げたい気持ちが少しあった。その瞳が好きだからこそ今はまずい。心臓から送り出された血の音が、耳の奥でうるさく鳴っている。
    「あ、あの、ですねK……」
     かく、とくずおれそうな膝。けれど伸びてきた手に胸ぐらを掴まれて、富永の華麗な土下座は叶わない。引き寄せられ、椅子の上、Kの脚の間にできたわずかな隙間に膝が乗る。状況を飲み込む前にKの唇が開かれた。富永はあふれる唾液をこぼさないよう喉を鳴らす。
    「期待して、しまうだろう?」
     耳に吹き込まれる甘い囁き。ちらりと覗く舌は口づけを誘うようだった。見つめるうちに白衣のボタンがひとつふたつと外されて、ぷっくりとシャツを押し上げる乳首が煽情的な胸を目の前に晒される。
    「おっ、わ、わぁ……」
     何を、とKは言わなかった。しかしここまでされてとぼけていられる余裕を富永は持っていない。ぐぐ、と下着のなかが窮屈になるのを感じながら、震える腕を動かし再びKの胸に触れる。
    「ぁ……っん、んぅ……」
     ぺったりと手のひらを押し当てれば、Kはもどかしそうに身体を揺らして求めてきた。胸の先を擦りつける動きはあまりに淫らで富永の我慢はまるで続かない。背を屈める。期待に濡れた眼差しと、甘い吐息が落ちてくる。服の上からそっと唇で乳首を食むと、Kはびくびくと悶えるほどに悦んだ。弛緩した脚が大きく開くのがいやらしい。
    「とみなが」
     はふはふと乱れっぱなしの呼吸の合間に名を呼ばれる。富永は素直に応えて顔を上げた。汗が滲む額を拭い、前髪をかき上げる。
    「あ……」
     Kはとろりとした目を瞬いた。潤んだ瞳は快楽に染まっていると見て今は間違いないだろう。ほんのりと赤く色づく目元に唇を寄せ、ちゅ、と軽い音を立てる。あ、と小さく声をこぼしたままで開いた唇にも重ねれば、Kはゆるく笑んだようだった。濡れた唇がまたしても富永の名を呼んでくる。
    「なんでしょう」
    「ひとつ訊いておきたいのだが」
    「……どうぞ?」
     何を言われるか、不安がないわけでもないが、Kの瞳はどこか楽しげな色を浮かべていた。まるで悪戯をする前の猫のようだと思いながら、富永は続く言葉に耳を傾ける。Kの指先がすっと股間に向けられた。
    「それは、どうするつもりなのだ?」
     雄の形のふくらみに、Kの視線が絡みつく。もはや自然に鎮まるのを期待する余地はあまりない。ならばどうするか。そんなことは決まりきっていた。問題は、自身で処理するか、目の前の男の手を借りるかということにある。富永は熱を帯びた手でKの頬にそっと触れた。
    「Kこそ、そんなこと言うと、俺は期待しちゃいますよ」
     興奮にかすれた声でそう応えれば、フフ、と笑みが返される。ここで突き放されたらそれはそれで自身は興奮するだろう。何もしてくれないKの前で自慰を見せつける。倒錯的で甘美な誘惑がそこに口を開けている。
     富永はその新たな扉を開くかどうかに胸をどきどきさせながら、Kの指がベルトにかかるのを見つめていた。露出したそれが風を感じるのにぞくりと背筋を震わせる。傾いた陽は少しずつ気温を下げていくが、ふたりの熱はまだまだ燃え上がるようだった。
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