秘密の兎は月夜に踊る あらゆる個の自由が認められている世に生を享けて幾数年。私は明治からの想い人である、月島をずっと探している。
それは、大学生になってからも尚変わらずにいるのだが、全くもって手がかりが掴めずにいる──
「ちょっと、鯉登ちゃん。最近根詰めすぎじゃない?目の下にご立派なクマちゃんできてるしぃ」
「…白石。これは生まれつきだ、失礼な奴め」
大学にある図書館の中で膨大にある明治期の資料を片っ端から調べていた私に声をかけてきたのは、同じ学部の同級生である白石だ。
何度か単位を逃しては留年しているらしいが、年の差を全く感じさせないのは奴の取り柄なのか短所なのか…まぁ、そんなことは今はどうでもいい──確か同じく同級生である杉元といつもつるんでいたような気がするが、どうやら今は一人のようだ。
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