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    melisieFF14

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    melisieFF14

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    両片想いのすれ違いもだもだしてる付き合う前のメリレオ。

    Hit on恋焦がれるようにその身体に触れたい、声を自分にだけ聴かせてほしいと、その目に映るのは自分だけでありたいと願うことをやめられないまま、紫混じりの黒髪と赤紫の気の強そうな眼差しをいつも追い求めている。それは仲間に対して向けることを到底許される感情ではないことを理解していて、当人には察知されないように気を張るようになっていた。
    であればその欲望の捌け口はどこへ行くのかと言えば、恋う人と似た容姿の女へと向けていた。とはいえ共通点など黒髪だけだとか、目元や表情が似ているからなど、部位のみ投影して後は補完し、何も知らない女たちへ欲を吐き出していた。声ばかりはどうしても違い過ぎるので、春を売る女たちに声は出さなくて良いと伝えていたが何やら勝手に盛り上がられて喘がれることもしばしば。聴きたくもない声音を情事の最中に手で塞ぐのはナンセンスだったので唇で塞ぐことが多かったのがメリジにとっては煩わしかった。欲の捌け口でしかないから相手を思いやる気持ちなど一切なく、ただの性欲処理の行為に快楽などある訳もなかろうに。実際メリジには性感による気持ち良さなどなかった為、彼女たちに対して情を持ち合わせることもなければ穴としか見ていなかったことも事実だ。
    一度、勝手に身請けを期待した女に言い寄られてからは、より一層事務的な態度を務めることが多くなったのにそれでも時折現れる恋人面をしてくる女に酷い仕打ちをして追い返しては強烈な平手打ちを喰らう。そんなやり取りに慣れてきた頃だった。

    「メリジくん、今日は私の護衛は良いからね。パーティ楽しんで」
    「……通りで。護衛として呼んだ訳じゃなかったな」

    後ろに控えているのはルノワール家御用達の護衛達なのだろう。その正装が、腕の立ちそうな所作を品良く彼らを飾り立てていた。

    「だってそう言わないと来てくれないだろう?」

    正装で来るようにと、目の前のエレゼン族の男性商人──ディベルティード・ルノワールが柔和な笑みを携えながら伝えてきたものだから、てっきりそういった護衛依頼なのかと勘繰った自業自得ではあるのだが。これまで何度か商談での護衛依頼についていた実績を買われての依頼だと思って引き受けたのが、息抜きだと思わず拍子抜けしてしまう。好きに過ごせと言った本人は商談があるのだろう。手短に会話を切り上げて早々に立ち去ってしまった。
    一人取り残された訳だが、パーティなんて参加したことなどない所為でどう振る舞えば良いのやら。
    辺りを見回してもオードブルが並べられたテーブルのそばでは決まって誰かが誰かと話をしている。表情、口元、声音で化かし合いをしている所には近付きたくないと考える。来て早々帰らないのはディベルティードの面目を潰さない為だ。1時間ほどでお暇させてもらおうと、人が寄り付かなさそうなカウンターで居座ることを決めた。

    「何をご注文で?」
    「酒以外で、甘い物を」
    「かしこまりました。お連れ様は?」

    バーテンダーがドリンクを作る前に、隣の席に座る誰かに声を掛けた。酒場でもよくある、見知らぬ女が馴れ馴れしく話しかけてくるパターンかと思って視線すら向けないでいると、女性にしては低めのそれを聴いて心が一瞬騒ついた。

    「私は強めのお酒を」
    「かしこまりました」

    不躾なものにならないよう、しっかりと顔を向けて隣に座る女を見る。やや紫混じりの黒髪ロングのストレートで、想い人と同じミコッテ族のムーンキーパーだ。瞳の色ですら彼と同じで、夢かと思うくらい勘違いしそうになる。

    「何か?」
    「あぁ、いや……すまない。友人にそっくりで思わず見惚れてしまった」
    「ご友人に、ですか」
    「時間はあるだろうか。良かったらこの夜を少しだけでも君と過ごしたい」
    「……少しだけなら」

    タイミングよく二人分のグラスが差し出され、軽い音を立てて交わされる。緊張による喉の渇きを誤魔化すように一口分だけ飲み下して改めて彼女を見る。どこかしらに面影を重ねてしまうのは己の願望と理想が体現しているからだろうか。ただでさえその行為すら彼にも彼女にも無礼な振る舞いだと分かっていても心臓は普段以上に脈動するし変に汗をかいてしまって鼻先から頬にかけて熱い。先ほどから持つグラスが手の震えで伝わらないか気になってしまう。

    「急に声を掛けてしまって悪かったな、俺はメリジ。君は?」
    「私は……その、」
    「何か事情があるのか。なら無理に聞かない」
    「優しいんですね」
    「優しいかな。下心を持った悪い男かもしれない」

    くすくすと笑うと下がる眉尻が好きな男とそっくりで胸が高鳴るのと同時に申し訳なさが出てくる。揺らいでいる。本当に心から望むほど好きな男から仲間としか見られていないのが分かっているからこその諦念と秘密と、隣に座る彼女から見出してしまう類似点への妥協と。

    「気にならないのですか?」
    「出会ってすぐで気にならない……なんて嘘だし、君のことをもっと知りたい。でも嫌な気持ちにはさせたくない」
    「気遣いありがとう」

    今まで散々性欲処理の捌け口に抱いて来た自分が、好きになった人に似た女を口説くことも叶わぬ恋だと分かっていても諦めも捨ても出来ない自分の意志の弱さも、そうやって微笑む彼女にあの男の面影を重ねる自分が最低なのは分かっている。
    しかし何もかもが彼に似ている女をようやく見つけられたのだ。なれど誰がこの機会を逃すと言うのか。狡いと言われても良い。不誠実だとも。恋心を抱いたのはあの男にだけだ。彼のことは生涯忘れ去ることは出来ないし、ましてや手に入れることも出来ないのなら、せめてもの似た女で誤魔化そうと思うのは金で買った女たちに面影を重ねて捌け口にして来た時から変わらないだろう。
    女の怨みで地獄に突き落とされようが構うまい。心はすでにあの紫微星に捧げられている。

    「ちょっとだけ抜け出せない?バルコニーとか」
    「そこのなら良いですよ」

    先に降りて手を差し出せば、そっと添えられるだけの彼女の指先が手袋越しに触れる。繊細さは感じられないところが面影を重ねる相手のようで尚更気に入った。体型を隠すようなラインのドレスに、脱がしたその下はどうなってるかなんて不躾な考えが過ぎる。
    白い肌に差す赤も、気の強そうな目尻も、澄まし顔のそれも、見れば見るほどあの男を女にしたらこうなるんだろうと思える。罪悪感は捨てよう。あの男にも、目の前の彼女にも侮辱と捉えられても致し方あるまい。


    バルコニーに出てから外を眺めたまま一度も合わない目線をどうにか合わせたくて、エスコートをした時に繋いだままの手の指先を撫でる。

    「こんな風にお誘いされるのは初めてです」
    「まさか。こんなにも魅力的なのに?」
    「ふふ、口がお上手なんですね」

    他の女だったらこうしただけでその気になってくれるが、彼女は澄ました顔を崩すことなく微笑むだけだ。靡かないその態度があまり見ないタイプで唆られるものはあるものの、上手くいかないジレンマも抱えながら指先を絡めるのを止めない。
    アルコール度数の高い酒が注がれたグラスを一口含んでも変わらぬ表情で器用にグロスの付いた縁を指先で拭うと、そこでようやく初めて視線が合った。月に照らされて濡れた唇が薄く口を開く。

    「例えばどんなところか、教えてもらえますか?」
    「一日で足りるかな。本当はベッドの上で伝えたいんだけど」
    「今日のところはここでご容赦ください」
    「残念。だけど君にならどこでも、いくらでも」

    誰のものにもならなさそうな気高さを感じさせるその眼差しが一目見た時に心を奪われたこと。健康的な白く透き通った頬に掛かる紫混じりの艶のある黒髪を指の背で優しく払いながらそれらも口にすれば、交わっていたはずの赤紫の瞳が外される。白い肌の頬に紅が差して、照れ隠しのようにそっぽを向く様があの男の面影を彷彿とさせる。色合いも、仕草も何もかも。本当にどうかしてる。知り合ったばかりの赤の他人にこんなことをしているなんて最低な男だと思う。それでもなぜか、彼と彼女になら謗りを受けようが構わないとさえ思っている。

    「そ、うですか……ありがとうございます」
    「まだ全部伝えられてないんだけど──」

    怖気つかずにあの男に心からの愛を囁けたら、こうして照れてくれるのだろうか。
    いつかこの本心が彼女に見透かされた時、蔑んだ目で睨み付けてくれるだろうか。

    「君の全部を俺にだけ見せて」

    絡めた指先が解けないようにしっかり握って、頬から顎にゆっくりと手を沿わせて向かせれば、少し気恥ずかしそうに揺れ動く瞳と再び交わった。なんて初々しいのだろう。こんな最低な男に翻弄されてしまってかわいそうに。
    グロスとアルコールで濡れた唇に触れれば、その柔らかさに何度も吸い付きたくなって、離れるたびにちゅ、と響くリップ音の間隔がゆっくりと堪能するように伸びていく。
    柔らかく熱い舌はアルコールの残り香が感じられて、触れる度にたったそれだけですら酔いそうになる。酒が駄目な己にしてみればこのおかげで堪能出来ると思うと悪くない。良いな。キスとアルコールと、場の雰囲気で柄にもなく酔っている。

    「んッ……、ふ……っ」

    艶やかなものを含みながら控えめに唇から漏れるそのハスキーな声と唇の柔らかな感触にハマりそう。惜しく、離れがたい。もっともっと味わいたい。欲を言えば一晩どころかずっと。そうしたら、きっとあの男への恋心と重ねて彼女を心から愛せる気がして。

    「なぁ、やっぱり朝まで一緒にいられない?」
    「クッ……くくっ、ははっ……」
    「? どうし──」
    「まさかメリジから全力で口説かれる日が来ると思わなかった」

    聞き覚えのあるどころか幾度となく聞いてきた声音が耳に届いた瞬間、心臓が嫌な跳ね方をした。

    「は……ぁあ!?レオ!?〜〜っ、今のは忘れろ!!」
    「忘れられるか」

    やっちまったと思ったが、それでも想い人に似た女性──もといレオは先ほど見せていた表情などどこにしまったのかというくらいあっけらかんとしていた。少し考えれば分かることだったはずだ。散々探して見つからなかった想い人に似た女なんて、彼をそういう風に見せないと無理なほど自分の中で理想を作り上げていたのだから出会える訳ないと。
    今まで溺れていた目の前の相手は恋焦がれる男で、でもなぜかその男は女性に見紛うほど完璧な変装をしていて、俺は気付かないまま彼女を──彼を口説き落とすつもりで触れていて……レオが分かっていて全て受け入れていた事実に頭が混乱する。仲間である男からしっかりと舌を絡められるほどキスをされたのに?気持ち悪いとすら思われてない?それとも他の男にもそういうことをされても受け入れることがあるってことか?

    「とにかく!なんでもいいからこんな男から口説かれてキスされた最低な記憶なんて忘れちまえ!」

    俺以外の人間から触れられたら拒絶して欲しい。俺だけ受け入れて欲しい。俺がレオの一番になりたい──なんて、そんな馬鹿げたことを口にする資格なんてないのは分かっている。

    「……悪かったな」

    逃げるようにバルコニーから出る際にそれだけは言葉にした。




    「俺には忘れろって言う癖に、自分は覚えたままでいる気なのはどういうことなんだろうなぁ」

    そろそろ仕事だからと、ネタばらしをしたのを後悔してしまうくらいには唇の感覚が惜しかった。伝えないままずっと想っていくものだと蓋をしていたから、まさかメリジから真剣に口説かれると思わなくて舞い上がっていたのは否めない。
    ついつい触れられた箇所をなぞってしまう。たまに女の扱いを面倒がっているところは見かけていたが、ああいう風に優しく触れながら抱くのだろうか。
    頬を滑る彼の細長く冷たい手が思い起こされる。あの手でもっと触れて欲しかった。けれどそれは男だとバレるまでの話だ。口説かれている間は確かにあの目に熱を宿していたのに、正体を明かした途端、仲間を見る目へと変貌した。こうまで自分が本当に女だったのならと、メリジと添い遂げることは出来たのかと──あの時ネタばらしをしても女だったなら最後までしてくれたのかと思うと、身体の奥は虚しく疼くだけだ。
    女だったら良かったのにと、ひと時の気の迷いだとしても考えずにはいられない。

    「だとしたら、しんどいな……」

    泣きたくなるほど胸の辺りが痛む。
    分かっていたさ。こんな俺に、あの綺麗な男が振り向くことなどありえないと。





    「あ〜……うわああ……」

    かれこれ二時間ほど、ディベルティードが経営する商社の事務所に来てからというものの、メリジはソファの上でずっと身悶えていた。事務所に出社してからいることに気付いたディベルティードは、昨夜あったパーティでの正装のままの姿でメリジが一晩中ここで過ごしていたことを察する。会場からいつの間にか姿を消したことはわかっていたが、まさかここにいるとは思わなかったのだ。
    かといってそれを咎める訳でなく、またいつもの手口で入り込んだんだろうなと軽く流す。根無草のように転々とする男が一つの居住空間として選んでくれたのであれば、共に旅を楽しみ、冒険をした同い年のよしみとしては受け入れても良いと思うのだ。
    だがしかし、さすがにずっと唸り声を聞かされながらは業務に支障を来す。

    「メリジくんさ、さっきから唸っててどうしたの?──あ、お茶にする?」
    「若には分かんねぇよ」

    茶器を取り出していると、寝転んでいたソファから起き上がったらしいメリジが隣にやってきて、手にしていたそれらを取り上げていった。無言で手際よく準備を進めていくのを見ながら、壁に寄りかかる。

    「え〜?もしかしたら分かるかもしれないよ」
    「……惚れた相手にする気のないキスして口説いて逃げ帰った俺の気持ちが分かってたまるか」

    湯を沸かしている間、器用にも喋りながらエーテルを扱って茶器を温めるメリジがぶっきらぼうに睨み付けてくるのを軽くいなす。

    「そうだなぁ……。うん、分かんないや」
    「ほらみろ」

    そうして二人で仲良く給湯室で喋っていると、いつの間にかティーポットに茶葉と湯はセットされていて、慌ててお茶請けのクッキーやマドレーヌなどを戸棚から出す。

    「だって俺はメリジくんじゃないもん。だから俺の事務所で唸ってるのは見逃してあげるね」
    「……そりゃどーも」

    滅多と見れない友人の姿にじゃあ良いかとつい許してしまう。最も、この場に姉がいたら矢継ぎ早に質問をされて困惑するメリジの姿も見れたかもしれないが。

    「でもねぇ?まさかメリジくんのタイプがあの人だったとは思わなかったなぁ」
    「分かってると思うが、墓まで持っていくつもりなんだからレオには言うなよ」
    「なんで?伝えれば良いのに」
    「仲間だと思っている相手から言われても困るだけだろ……。俺はあの人のそばに居れるだけでいい」
    「君が納得してるならそれで良いと思うよ」

    友人がそう決めたのなら無理に後押しせずに見守ることも大事だろう。時折こうして潰れぬようにお茶と菓子で出迎えてやることしか出来ないのだから。


    とは言うものの。

    「あ〜……もうほんと……なんでやっちまったかなぁ……」

    とため息を吐いたかと思えば。

    「……柔らかかったな」

    と何やら感触を思い出していたりとする。
    それを見て思うのだ。その内なにかのきっかけで進展しそうだなぁと。



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    melisieFF14

    DONE両片想いのすれ違いもだもだしてる付き合う前のメリレオ。
    Hit on恋焦がれるようにその身体に触れたい、声を自分にだけ聴かせてほしいと、その目に映るのは自分だけでありたいと願うことをやめられないまま、紫混じりの黒髪と赤紫の気の強そうな眼差しをいつも追い求めている。それは仲間に対して向けることを到底許される感情ではないことを理解していて、当人には察知されないように気を張るようになっていた。
    であればその欲望の捌け口はどこへ行くのかと言えば、恋う人と似た容姿の女へと向けていた。とはいえ共通点など黒髪だけだとか、目元や表情が似ているからなど、部位のみ投影して後は補完し、何も知らない女たちへ欲を吐き出していた。声ばかりはどうしても違い過ぎるので、春を売る女たちに声は出さなくて良いと伝えていたが何やら勝手に盛り上がられて喘がれることもしばしば。聴きたくもない声音を情事の最中に手で塞ぐのはナンセンスだったので唇で塞ぐことが多かったのがメリジにとっては煩わしかった。欲の捌け口でしかないから相手を思いやる気持ちなど一切なく、ただの性欲処理の行為に快楽などある訳もなかろうに。実際メリジには性感による気持ち良さなどなかった為、彼女たちに対して情を持ち合わせることもなければ穴としか見ていなかったことも事実だ。
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