二人の出会い編――光忠って今アルバイト探してたよね?
きっかけは大手法律事務所である織田法律事務所で弁護士をしている兄からの勧めだった。最近独立した後輩弁護士が事務員を募集しているからやってみないか?と。
「そう言われたけれど、場所ここで合ってるよね….?」
兄から送られて来た地図アプリのリンクを頼りに件の後輩弁護士の事務所が入っているビルは見つかったのだが、看板などが何も無い。念のためもう一度スマホを開いて、アプリに表示されているビル名を確認するが目の前のビルと同じだ。
ひとまずビルの中に入って事務所があるはずのフロアを目指すことにした。経年劣化で灰色に霞んだ壁から妙な圧迫感を感じながら階段を登る度に、光忠の足は重たくなる。兄からの打診はもう少し検討すべきだったろうか、とほんの少しの後悔を胸にドアのインターホンを押す。
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