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    syumi_sufu

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    クソ魔術師襲来話-chuかわいくてごめん-その日、モーンストロムはとある魔術師の襲来により騒然としていた。いつも通りの学園生活を送っていた生徒たちに、前代未聞の事件が起きたのだ。青寮4年クルール・ドレイパーもその事件を目の当たりにした生徒のうちの1人だった。

    「──っ、大変だラニウス!手を貸してくれ!」
    「……どうなされましたか、ドレイパーさん」
    箒に跨ったクルールが、女子寮の窓から顔を覗かせる。普段であればこのまま目潰しをしていたところだが、血相を変えた彼の様子が、ただならぬ事態が起きているということを示していた。

    アマーリエは、ひとまず窓から彼を部屋に招き入れた。息を切らした彼はベットに腰掛ける。
    「どうしたんですか、そんなに慌てて。何かあったのですか」
    「お、落ち着いて聞いてくれ、今学園中が大変なことになってんだよ!」
    「……学園中が?何が起きたんですか?」

    そう聞き返すアマーリエに、クルールは必死に息を整えると、今の状況を話し始めた。
    ──清楚になったアルカード先輩。ヤンキーと化したフェデ先輩。奇行を始めるクルア先輩──彼らは被害にあった生徒のうちのほんの一握りであるが、この面々だけで既にとんでもないことが起きていることは想像に容易いだろう。

    「ってことで魔術師のデュナミス魔法かなんかで、先輩方の性格丸切り変わっちまったったんだよ!!」
    「……そう、ですか。それは大変ですね。ところであなたは平気なのですか?」
    「オレ?オレはラミ……友達を咄嗟に盾にしたから大丈夫だったんだよ!」

    そう言いながらクルールは、キャラの変わった友人の姿を思い出した。元々様子のおかしい奴だが、いつも持ち歩いているテディベアの代わりに藁人形を取り出し呪いを呟く姿は異様そのものであった。

    「なるほど。それでかわいくてつよい私を頼ってきたということでしょうか……」
    「そーなんだよ、とりあえずアンタにぶん殴ってもらえばラミロとかも治ると思ってさ……!」
    「仕方ありませんね。私はつよくやさしくかわいいため、あなたのお願い事を聞いてあげましょう」
    「そうそう、やさしくてかわいい………ん?」
     妙な違和感を覚えたクルールが、じっとアマーリエの瞳を見つめる。彼女はパチパチと眼を瞬かせるときょとんとして小首をかしげた。
    「どうかされましたか?」
    「い、いやなんでも……」
    「そうですか、申し訳ないです。見惚れさせてしまって」
    「………………………うん!うん!もういいやこれで!ちょっとついてきてくれるかなぁ!?」
    ぐいっとアマーリエの腕を引っ張ると、アマーリエは静かに了承する。
    「いいですよ。ただし、条件があります」
    「なに!?」
    「ぜひ、忘れないでくださいね。私がかわいくてつよいということを」
    「わかった超わかった、ラニウスかわいー!!」
    「ありがとうございます。しかし、かわいいだけではありません。なぜなら私はかわいくてつよ」
    「可愛くてェ!!!!強い!!!!」
    投げやりに叫ぶと、クルールはアマーリエの腕を両手で強く掴んで、箒の後ろに乗せた。


    「なあ、なあ、そこのアンタ!前の任務の時短刀持ってたよなあ!?ちょっと貸してくんね!?」

    白寮の上空を横断中、クルールが目ざとく見つけたのは、以前任務で同行したことのあるミキ=コムカイだった。彼女は突然上から降ってきた声に、弾かれた様に空を見上げる。

    「え……短刀って……な、なんでですか?」
    警戒したようにそういうミキに、クルールは頭上をくるくる回る。
    「いや、貸してくれなくてもいいや。ちょっとそれでこいつの頭ぶん殴ってくんね!?」
    「………こ、こいつって、アマーリエ先輩を、ですか?」
    「うん!事情説明すると長いんだけど、ちょ〜っと色々あって緊急事態なの!!!頼む!!!」

    急降下して白寮前に降り立つと、クルールはアマーリエを引きずる様にして、ミキに駆け寄る。
    「それはとてもつよそうな武器です。ですが、私もつよいです」
    「コラッ!武器と張り合うな!!」
    「……アマーリエ先輩、どうかしたんですか? は、話し方が翻訳文みたいになってますけど……」
     なんとも奇妙なことに、日本人のミキにとっては今のアマーリエの英語がかえって聞き取りやすいらしい。しかしその肝心の内容がネイティブにとっても意味不明であるため、処理に混乱している様子だ。そんなミキに対し、アマーリエが少し屈んで話しかける。

    「コムカイさん、お勉強を頑張っていらっしゃるのですね。前会った時よりも英語がお上手になっています。たくさんお話ができそうで、先輩は嬉しいです」
    「!あ、ありがとうございます……」
    「はい。ですが私の英語もかわいくてつよいということを、ぜひ、覚えていってください」
    「はい……?」
    「ごめんな!こいつラリってんだ、それで斜め45度あたりを1発頼む」

    クルールが頼み込むと、ミキは軽く狼狽え始める。いやそんないきなり、というか決闘でもないのに先輩に暴力だなんて……と思っていることだろう。日頃からアルカード先輩を躊躇なく吹っ飛ばすアマーリエの姿を見せてあげたいくらいだ。

    「なあミキ、やっぱちょっとオレに刀貸してくんねーかな。ほんと、悪いようにはしねーから。こう、ちょいって殴るだけだから、ダイジョブダイジョブ」
    「……ほ、ほんとですか。でもなんだか、あんまり変なことしない方がいい気が……」
    「うんそこはね、もうすでに変だからダイジョブよ」

    そう言うと、クルールは刀を受け取った。ミキの刀は想像していたよりもずっしりとしていた。へーこういうの通して魔法使えるんだ、とまじまじ見つめてしまう。……だが、箒でバサバサ殴っても効かなかったのでこのくらいの質量なら効き目があるもしれない。クルールはアマーリエめがけて、鞘付きの刀を振りかぶった。
    そしてその次の瞬間──。

    「ドレイパーさん、甘いですよ」
    「はぁ!?」
    「ですが、私が昨日食べてしまったお菓子も甘かったということを忘れないでください」
    「知るかよ!!!取るなよ!!!!」
    「取ります。なぜならわたしはつよいからです」


     真剣白刃取りで着々と自己肯定感を上げていくアマーリエに、クルールは項垂れる。横ではミキが「まああの動きならそうなるだろうな……」という顔で見つめていた。
    「くそー!こうなったらその……あれだ!ほっぺたを引っ張ってむちゃくちゃにしてやる!このっこの!!」
    「わひゃひのほっぺはもちもちでふ」
    「ミキ、手伝え!オレは右側を引っ張る!アンタは左側だ!それならできるだろ!?」
    「……は、はい……え?はい……?」
    頭にはてなマークを浮かべながらも、ミキはひかえめにアマーリエの頰を摘んだ。
    結局その後2人がかりで10分ほど揺さぶったり叩いたりしてみたものの、アマーリエが治る様子はなかった。
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