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    えんどう

    @usleeepy

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    えんどう

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    ▽王様が酒呑ちゃんに絡まれる話

    ##第三者がいる話
    ##1000-3000文字

    王様と酒呑ちゃんの話▽王様が酒呑ちゃんに絡まれます
    ▽ぐだお不在
    ▽ぐだキャスギル








     きらきら、きらきら、お星さん。お山の中に湧いたぇな水溜りみたいな蒼ぉい眼ぇと、燃えたお空みたいな紅ぁい眼ぇから、きらきら、きらきら、零れて落ちる。すれ違うとき。こっそり背中を見るとき。横顔を見るとき。眼ぇを見るとき。きらきら、きらきら、零れて落ちる。

    「――ほんに、きれぇやわぁ。甘そやわぁ。よっつ刳り貫いて、うちの酒に蕩かして飲み干したいわぁ」
    「…………………………神出鬼没とはよく言ったものよな。貴様、我に何か用か」
     随分上から見下ろされる。小僧とどっちが大きんやろか、と考えながら酒呑童子が見上げれば、つい今まできらきらと眩い星を散らしていた真っ赤な瞳は、剣呑な光を宿してこちらを見下ろしていた。なんやの、もったいない。と呟けばその光が一層鋭さを増す。
    「別に? なんもあらへんよ。あんたはんと旦那はんの姿が見えたよって。なんや楽しそに話し込んどる、思たら、きらきらお星さん飛ばしとるさかい。もっとよう見よか、思てな?」
    「は? 星? 何を言っている」
     酒呑童子の言葉の意味が理解できず、異国の王は眉間に皺を寄せる。見上げる酒呑童子は蕩けるような顔で微笑いかけるが、王の警戒心を顕にした相貌は崩れない。
    「なんや、なんでも知ってる王サマでも知らんこともあるもんやねぇ」
    「だからなんの話だと問うておろう。答えぬなら我は、」
    「恋したふたりは、こう、眼からきらきら、きらきら、お星さんが出るんよ」
     苛立った様子で立ち去ろうとしたギルガメッシュに構わず、酒呑童子は笑みに歪めた宵闇を映す瞳の前で白く細長い指をバラバラに動かし、きらきら、と効果音のように言ってみせる。と、立ち去りかけていたギルガメッシュは、釘を打たれたようにその場に立ち止まり、こい、と声にならぬ声で酒呑童子の言葉を繰り返した。酒呑童子はその声を聞いて更に笑みを深める。向けられるのは得体の知れないモノへ向ける、嫌悪と疑いの眼。その目は見慣れているので面白くもない。じり、と一歩躙りよればこちらを睨めつけたまま一歩逃げられる。それは毛を逆立てて威嚇する獣のようで、少し愉快だった。
    「あんたはんのその眼。もともときれぇやわぁ、思とったけんど、旦那はんを見るとあないきれぇになりはるんやねぇ。旦那はんのあーおい眼ぇもきれぇやし? ふたりぶん、並べて飾りたいわぁ」
     追えば逃げる。が、逃げ出しはしないところも愉快だ。今すぐここでとって喰おうとは思わないし、それをすればどうなるか解らない酒呑童子ではなかったが、もう少し遊んでみたくはあった。じりじりと、色彩豊かな風貌の王が後退る。
    「なんやの? あの、うるく? ゆうんから帰ってきはってから、すっかり旦那はん取られてしもたし? ほな、すこぉし分けてもらうくらい、悪ないやろ?」
     かわいいかわいい初心で真っ直ぐな眼をした己のマスター。共に過ごした時間に何か特別なモノがあったとは思っていないし、そんなことはどうでもよかったが、あれ以来彼の部屋へ呼ばれる回数もすっかり減ってしまった。とは言えアレはとって喰おうと思えばすぐにでも――
    「鬼。貴様立香に手を出せばどうなるか――」
     ちり、と頬に灼けるような奔流の一端を感じて酒呑童子は眼を眇める。つい今し方まで後退るばかりだった脚がじりと酒呑童子へ向かって踏み込む。眼前の空間、異国の王が纏う空気が揺らぐ。知らず、口角が吊り上がった。
     これは、なんとも愉快だ。
    「いややわぁ、おそろし。そない怖ぁい顔せんでもよろしゅおす。綺麗な顔が台無しやえ? うちは今、あんたはんとおんなじ、旦那はんのさぁばんと、や」
     今はまだ。こんなに愉しい見世物をとって喰おうとは思わない。今はまだ。
     酒呑童子は紫の着物の袖を翻し、ギルガメッシュに背を向ける。
    「ほな、馬に蹴られる前にお邪魔虫は退散しよか。あぁ、妬けるわぁ」
     ふふふふ、と、抑えきれなかった笑みが漏れる。とかくヒトというのは面白い。理解できないから面白い。理解しようとも思わないが。鬼は鬼、ヒトはヒトだ。……ああ、そういえば、この王は半分は神なのだっただろうか?あまりにヒトのようだから、そんなことはすっかり忘れていた。あれでは神というよりヒトだ。
     ふらふらと、千鳥足で歩き去る酒呑童子の背後でギルガメッシュは未だ警戒を解こうとしない。そしてそのまま距離は広がり、お互いの姿が壁に遮られて見えなくなる刹那。
    「……………………………………………………………………………立香はやらん」
     耳が拾った小さな小さな声に、酒呑童子はひどく愉しげに唇を歪めたのだった。
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