Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    えんどう

    @usleeepy

    『要パス』タグのものは冒頭の箇条書きをよく読んでから本文へ進んでください
    パスはこちら→ X3uZsa

    褒めたい時はこちらへ↓↓↓
    https://wavebox.me/wave/d7cii6kot3y2pz1e/

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💴 💵 🍓 🍟
    POIPOI 104

    えんどう

    ☆quiet follow

    ▽2部突入前の話
    ▽ぐだおが王様の動画を見る話

    ##1000-3000文字

    逢いたい▽2部突入前、王様を再召喚していない頃の話
    ▽王様はいません
    ▽ぐだキャスギル




     端末のホーム画面に、似たようなアイコンが並んでいて、間違えて開いただけだった。そうしたら、サムネイルにあの人が写っていた。それで何となく開いた。それだけのことだった。
     モニターに接続して大きめの画面に映しだされるのは何気ない横顔に、こちらに気づいて不愉快そうにする顔、ベッドに寝転がって真剣な表情で書類や端末を見ている表情、何もすることがなくゴロゴロしているだけの姿、眠っている顔、寝起きのぼんやりした顔、などなど、などなど……。当たり前にあった日常の数々を収めた写真達だった。中には溶岩水泳部に半ば無理やり撮られた五人の写真、食堂のテーブルに並んだいつもより豪華な食事をみんなでわいのわいのしている様子を撮ったものもあった。ゲオルギウスがカメラで撮ったたくさんの写真達はあの時の騒ぎでおそらく失われてしまっただろうが、持ち出したこの端末には比較的個人的ではあるが写真が残っていた。カメラに気づいて手を伸ばしてくる写真、イシュタルと戯れている写真、無理を言って二人で撮った写真、ほとんどがあの人の写真だった。玉体に見惚れたか、と自慢する割に写真に残されるのは何故か嫌がった王の写真は隠し撮りに近くて、ほとんどがカメラを向いていない。懐かしさと同時に幾許かの寂しさを覚えてカメラロールを閉じる。
     そのまま端末のロックをかけようとして、ビデオに分類されているアルバムにも王の顔があることに気づく。そういえば動画も撮ってたっけ、と思い出しフォルダを開く。最新のものは、――退去の一週間前だった。横を向いた三角のマークを押して動画を再生する。ベッドに横たわり占拠している姿がどんどん近くなって、こちらに気づいたギルガメッシュの赤い視線がカメラに向いた。
    『……おい、立香、貴様王の許しもなく何を映している』
    『動画ですよ。いつでも王様が見れるように』
     カメラに入っている自分の声はいつも聞いている声と違って気持ち悪いような違和感を感じたが、我慢してギルガメッシュに近づく画面を見る。やがてその整いすぎた相貌が画面いっぱいに映しだされた。
    『まっこと貴様は突然理解に苦しむ事をする男だな』
     手を伸ばせば触れる距離にギルガメッシュの顔が映っている。呆れたような表情は見慣れたようで、もう随分見ていない気がした。その画面に自分の手が映り込む。滑らかな頬を撫でれば少し機嫌を良くしたのか、すり、と頬を手のひらに寄せてくるのがしっかりと映されていた。その時の感触は今でも覚えている。吸いつくようでいて、なめらかな極上の肌。
    『好きな人の顔がいつでも見れるって嬉しいことだと思いますけど?』
    『…………ならば、そんな小さな画面越しでなく、その目に焼きつけておけばよかろう』
    『それはそうですけど』
     ぷつ、とそこで動画は終わっていた。その先は覚えている。何度もキスをして、戯れるように触れ合って、そのまま雪崩れ込むように身体を重ねた。その顔も残しておけば良かったかな、などと考えて頭を振って考えを掻き消す。それは手を出してはいけない領域の気がした。蕩けるようなあの顔はわざわざ残さなくても憶えている。りつか、と舌足らずに自分の名前を呼ぶ声も、まだ思い出せる。甘く溶けた声も、まだ、大丈夫だ。人は声から忘れると言う。なら、あの声を覚えている間に、また逢いたい。今はまだ思い出せる。立香!と鼓舞するような力強い声に、立香……、と呆れたような声、立香、とほんのり甘さを孕んだ声、喘ぎ声に混じって、りつか、と呼ぶ、どろどろに蕩けた声。どれもまだ鮮明に思い出せる。大丈夫。
     動画を何度も再生し、忘れないように耳に鼓膜に角膜に脳に刻みつける。彷徨海とやらが何なのかは魔術に疎い自分には依然全く解らないが、魔術協会のひとつであるなら、どうにかして一人でもいいから再召喚できれば、と思う。再会した時にあの人は何を言うのだろうか。何度目かの再生ボタンを押しながら、そんなことを考えた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭💕💕💕🙏😭😭😭😭🙏🙏🙏💖💖💖😭
    Let's send reactions!
    Replies from the creator