kktbtが鼻歌(黒歴史)を歌う話 俺がカキツバタの鼻歌を耳にするのは、まあたまにあることだ。部室でいつもの席に座っているとき、テラリウムドームを散歩しているとき、食堂で学園定食を食べているとき。俺が見かけるカキツバタはいつでものんべんだらりとして、ときとして不意に鼻歌を披露した。
大抵は知らない曲だ。もしかしたら今流行っている曲なのかもしれないし、イッシュでは定番の曲なのかもしれない。知らないけれど、どれも明るくて、調子が良くて、楽しそうだった。
――それなのに、今歌っているこの曲は、まったく違った。
夕暮れ時のリーグ部室。部員たちはひとりまたひとりと部活動を終えて部屋を去り、いまや残っているのは俺とカキツバタのふたりだけ。どうして居残っているのかといえば単純な話で、カキツバタがタロに申し付けられた事務仕事を遅々と進め、見かねた俺が手伝っている状況だ。カキツバタのためというより、あとあと尻ぬぐいをさせられるタロを気遣ってのことだった。
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