花嫁バトルロワイヤル ① 絹を裂くような女の悲鳴が上がる。その方角へちらりと視線をやって、蛍は腰を低く落とした姿勢を保ったままそろりと走り出した。蝶々のようにひらひらと、白い総レースのベールが揺れる。足首まである長いドレスの裾を捌きながら、いつもと違う衣擦れの音がやけに気になった。木の影に入って周囲を窺うと、前方に白い影がある。
花嫁だ。
蛍は荒くなる息を押し殺して、そうっと機関銃を構えた。反動に備えてぐっと踏ん張る。三、二、一…
*
「──つまり、サバイバルゲームをしろって?」
「まあそんな感じなんだけど」
首を傾げた蛍を前に、シャルロットは「うーん」と空中を睨んでカフェのテーブルに頬杖をついた。
「最初から説明するね。フォンテーヌのブライダル事業組合と共律庭の合同企画で、身分登録制度関係の法整備に伴って結婚に纏わる諸々のイメージアップをしたいんだって」
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