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    も ぶ

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    時間オーバー大遅刻なのでタグはしないけどワンドロライのお題「赤面」で妄想した呪専五七

    赤面 夕焼けに照らされて真っ赤に染った教室で、キラキラと輝くその存在に息をのんだ。引き寄せられるように近づいて、輝く金糸の下を覗き込めば長いまつ毛が顔に影を落としている。後輩が放課後の教室で寝こけている。ただそれだけなのに心臓はうるさいくらいに高なっていた。この後輩は綺麗な顔をしていると思う。しかしいくら見ていても飽きることはなく、こうやって見つめているだけでも時間の経過を忘れそうになる。しかしそれだけではない。
     触れたい。
     そっと手を伸ばして頬を撫でる。肉の少ない七海の頬は決して女のように柔らかなものでは無いけれど、絹のような滑らかな感触はいつまでも触れていたいと思わせる。そして次に指はゆっくりと唇へ。薄い方ではあるけれどそれでもふにっと柔らかな感触が指に伝わって、一気に高まる熱を自覚する。もっと触れたい。俺は本能が命じるままに顔を寄せていく。脳内にまで鳴り響くような心音はまるで警告だ。普段よく自分へと向けられるしかめっ面とは違い、穏やかな表情はあどけなささえ感じさせ妙な罪悪感が頭を掠めた。

     チュッ

     小さなリップ音。しかし唇に触れたのは柔らかな熱ではなく、サラリとした感触。唇を重ねられなかった代わりに七海の前髪へとキスをしていた。変わらず聞こえる穏やかな寝息にそっと身を起こす。その様子に安堵を覚える気もするし、触れたいという欲望にもどかしさを覚える気もする。

    「何やってんだろ、俺……」

     大事にしたいし無茶苦茶にもしたい。無理矢理にでも自分のものにしてしまいたいと思うし、ちゃんと求めてくれるまで待ちたいとも思う。相反するような感情が渦巻いて自分でもよく分からない。こんな想いは初めてで持て余す。後ろ頭を掻き乱しため息をついた。

    「告白さえしてない相手の唇を奪わなかった理性を褒めるべきか、好きな子にキスさえ出来ないヘタレ具合をバカにすべきか、どっちだと思う?」
    「こいつの場合後者一択だろ」
    「!!?」

     聞こえた声に後ろを振り返ると勿論そこにいるのは同期の二人。カッと顔が熱くなる。

    「な、んでっ、いんだよ!」
    「なんでも何も、悟がトイレから何時までも戻らないから探しに来たんだよ」
    「お前が戻らないと帰れないんだけど」

     そこでようやく任務の報告書作成途中でトイレに立った事を思い出した。しかしそれどころでは無い。

    「いつからいた?」
    「いつからって……」
    「七海にアツ〜い視線送ってるとこから」
    「最初からじゃねーか……」

     戻った時に作成が終わっていることを期待して時間を潰していた事が仇になったようだ。この二人には俺の七海に対する想いを勘づかれているだろうとは思う。なんなら俺がこの恋を自覚する前から。しかし認めたことは無かったというのにこれでは言い逃れようがない。魔が差したにしては時間をかけすぎた。溜まっていたと言うなら唇を避ける意味がわからない。ニヤつく二人にますます顔へと熱が集まり、グラグラと脳が煮詰まっていく。

    「忘れろ!!!」

     叫んだ時ガタッと後ろで音がする。しまった。思っていた以上に俺の脳はパニクっていたらしい。

    「なんなんですか?」

     その声に返事をする事も振り返ることも出来ない。

    「五条に聞くといいよ」
    「悟が一番わかってるからねぇ」

     完全に面白がっている二人を睨みつけるが効くわけがない。後ろで立ち上がる気配がする。

    「一体何があったんですか? 忘れるって……」

     訝しげな声音でのぞき込まれそうになり、羞恥が沸点に達した。

    「なんでもねーよ!!!」

     もう一度声をはりあげてズンズンと足早に出口へと向かう。後方で七海が苛立たしげに傑達へと理由を問う声が聞こえる。

    「傑! 硝子! さっさと終わらせて帰るぞ!」
    「はいはい。七海悪いね。いつもの癇癪だと思って忘れてやってくれ」
    「まったく誰のせいで遅くなったと思ってるんだか」

     呆れ顔でついてくる二人を確認し、そのまま出ていこうとしたが足を止める。チラリと見えた七海の不機嫌な顔が気になった。穏やかな寝顔が脳裏を過ぎったからだ。そんな顔をさせたかった訳では無い。

    「悟?」

     不思議そうな傑に先に行けと伝え、二人を外へと追いやって扉を閉める。さらに眉間に皺を寄せ訝しげな七海。

    「本当になんなんですか?」

     七海の側へと戻りその肩を掴む。戸惑いながら見上げてくる視線にますます熱くなる顔は夕陽が誤魔化してくれていることを願う。

    「邪魔して悪かった」
    「……。いえ、別に……あのまま寝てるわけには行きませんでしたし」

     素直に謝れば七海の表情が和らいでほっとする。

    「俺が何しようとしてたか知りたいか?」
    「そりゃ、まぁ。何だったんですか?」

     七海を怒らせることも多いから、よく向けられるのはしかめっ面。それでもこうして話はちゃんと聞いてくれる。あきれたようにでも笑ってくれる事だってちゃんとある。突然部屋を訪れたって文句を言いながらも迎え入れてくれる。嫌われてはいない、と思いたい。

    「無下限は切ってる。嫌なら突き飛ばせ」

     逃げ道を作るような事を言いながらも肩を掴む手に力が篭もってしまう。最初の比でない程の早さで動く心臓がオーバーヒートを起こしそうだ。だんだん顔を近づけると驚きに見開かれた七海の瞳。そこに嫌悪は見られない。鼻先が触れ合う距離で動きを止める。互いに目を閉じることはなくじっと見つめ合った。逃げるチャンスはこれが最後だ。

    「七海」

     掴んだ肩がピクリと揺れる。ゆっくりと瞬きをした七海の頬は夕陽を背にしているにも関わらず真っ赤に染っていた。一気に触れたいと言う想いが込み上げる。俺は僅かに残っていた距離をゼロにした。

    「んっ……」

     唇が触れる。柔らかく熱い感触がなんとも心地良かった。数秒か数分か。ゆっくりと顔を離してもう一度見つめ合う。

    「好きだ」
    「……順序が逆でしょう、普通」

     七海の言葉は返答ではなく小言。しかし視線を逸らすその頬も目元も真っ赤に染まっている。

    「七海顔真っ赤」
    「っ、あなたも人の事言えませんから」
    「知ってるっつーの! あー! あっつ!」

     パタパタと手で仰ぐが夕陽でごまかせないほどの熱はその程度で落ち着かない。

    「五条さん」

     呼ばれて目を向けた時、グッと襟首を引っ張られる。そして再度唇に触れた熱。俺は驚きに固まった。一瞬で離れたそれは夢では無いだろうかと思うけれど、目の前の七海の顔を見れば現実を実感出来る。

    「私も、好きです」

     その言葉を残してバタバタを教室を出ていく七海。動けない俺にまたも同期達の楽しげな声がかけられる。

    「良かったじゃないか、悟」
    「ようやくヘタレ卒業だな」
    「……先行けって言ったろーが」
    「だからこっちは五条待ちなんだって。連れて来ないと提出受付ないって言われてんの」
    「そういう事。ほら、早く七海の所に行きたいだろう? さっさと提出に行こう」
    「先いくわ」
    「あ、おい!」

     一分一秒が惜しい俺は傑が手に持つ報告書を奪い取り、窓から外へと飛び出して最短距離を行くべく術式を発動するのだった。
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