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    も ぶ

    @57mob

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    七受SYOKUSYU企画に参加させて頂くべく書いた小ネタです。
    11月お題『芋掘りに行ったら芋づるが触手だった』
    なんでもあり世界にて五七要素ありのギャグもどきで、Twitterに上げた絵の補足的なお話。
    なんでも許せる方向け

    芋掘りに行ったら芋づるが触手だった「なんでこんな山奥で農作業しなきゃいけないのよー!!!」

     釘崎の雄叫びが山間の小さた畑でこだまする。その様子に目を向けるでもなく、黙々と作業をしながら伏黒がどうしようもない事実をつきつける。

    「しょうがないだろ。これも任務だ」
    「ねぇ! 私たち呪術師なのよね!? 呪術師の任務が芋掘りってなによ! 何でも屋か!?」
    「俺も知らねーよ! でもやらなきゃ帰れないんだから手ぇ動かせ!」

     地団駄を踏む釘崎。伏黒とて同じ意見ではあるがどうにか任務と割り切ろうとしているのだ。そんなピリピリした二人を虎杖がなだめる。

    「まぁまぁ、先生も特別任務だって言ってたしさ。報酬もちゃんと払うしご褒美もあるって言ってたじゃん。それに芋掘り楽しくない?」
    「どこが! 汚れるわ、疲れるわ、最悪よ……」

     釘崎は深いため息をつく。しかし諦めたのか鍬を構えたその姿は妙に様になっている。

    「とか言いながら、釘崎なんか慣れてない?」
    「田舎育ち舐めんな。というか、伏黒はともかくあんたも鍬くらい使ったことあるでしょ?」
    「え? 俺? 使ったことあったかなぁ? じいちゃん畑とかやってなかったし。芋掘りは行事でやった気がするけど、鍬使ったっけ?」
    「ちっ、都会人ぶってんじゃないわよ」
    「別にぶってないってば」
    「どっちでもいいからさっさと終わらせろよ」

     そんな掛け合いをしつつ芋を掘り起こしていく。さして広くはない畑ではあるが、まだ3分の2近く残っている。作業が進むにつれますます愚痴が多くなる中、突然陽気な声が響いた。

    「お待たせー、みんな頑張ってる?」
    「あ、先生」
    「生徒に雑用押し付けてどこ行ってたのよ!」
    「雑用じゃなくて任務だって。僕直々の依頼。昔世話になったじいちゃんが腰やっちゃってね。放置するの嘆いてたから人助けだよ。人助けの精神を学びながら筋トレにもなる。取ったやつも食べ放題。そして僕もじいちゃんに顔が経つ。一石二鳥ところか三鳥でしょ!」
    「最後の理由以外後付でしょう……」

     生徒たちの文句もなんのその。五条は畑を見渡してせかす。

    「うーん。急がないと焼き上がる頃には日が暮れちゃうね。ほらほら、手動かして。助っ人ももうすぐ来るから」
    「助っ人?」
    「そう。ほら、来た」
    「あ。ナナミーン!」

     坂を登って来た七海を見つけて虎杖が嬉しそうに手を振った。いつもの真っ白なスーツにサングラスではなく、ジャージ姿の七海は軽く手を挙げて答えるが顔には呆れと疲労が滲んでいる。

    「七海さんにもこんな任務やらせるんですか?」

     怪訝な面持ちで問う伏黒。五条は当然とばかりに答える。

    「まさか。流石に1級に芋掘り任務あてたとなれば各所から怒られるでしょ」
    「今日は非番です。買い物に行くつもりだったんですが無理やり連れてこられてジャージを押し付けられました」
    「あー……」
    「お疲れ様です……」
    「こんな先輩絶対イヤ」
     
     七海のため息に虎杖は苦笑、伏黒は労いの声をかけ、釘崎は嫌そうに言う、三者三様の反応だ。

    「焼き芋パーティ出来るんだからいいでしょう! ほらやる気出して〜!」

     五条がパンパンと手を叩き場を仕切る。渋々ながら各々芋を掘り起こすべく配置につくのだった。

    ※※※

     7割り文句ではあったが賑やかに芋掘りが進み始めて30分はたっただろうか。

    「そういやナナミン、今日グラサンしてないけど良いの?」
    「休みの日にまで使用してませんよ。日用品の買い物程度のつもりで家を出た所を無理やり……っ!」

     虎杖と会話をしながら芋掘りをしていた七海。
     突然の芋づるが七海を襲う───

     七海の声が途切れたことに訝しげに振り返った虎杖は目を見開いた。

    「ナナミーン!?」

     虎杖の叫びに全員の視線が七海へと集中する。

    「なんなのよ! 呪霊!?」
    「いや、呪力を全く感じない!なんなんだ!?」

     複数のツルが七海の体に巻きついて拘束している様子に慌てる生徒たち。七海も拘束を解こうともがくがビクともしない。ツルに呪力を感じないのはもちろんの事、残穢の気配さえない。そのため誰も気づけなかった。だからこそ七海が簡単に捕まってしまったのだ。異様な状況に1番状況を理解しうる目を持つ五条を一様に振り返った。

    「うーん? これは……」

     五条はサングラスの隙間からくまなく観察する。そして。

    「ただの芋のツルだね!」
    「「「そんなわけあるか!!」」」

     あっけらかんと発せられた五条の言葉にいっせいに突っ込んだ。ただの芋のツルと言われて納得できるわけが無い。七海を助けようと動く生徒たちを他所に五条は芋を拾いながらのんびりと構えて受け答えをする。

    「芋のツルが動くわけないでしょ!」
    「いや、食虫植物とか動く植物あるよ? これもそう言うやつじゃない?」
    「動くレベルが違うわよ!」

     釘崎が怒鳴りながら釘を放つがうねうねと動くツルに当たらない。

    「ぐっ、あー! 全然ちぎれねぇ!」
    「芋のツルって結構丈夫だよねー」
    「ナナミンとか俺の力で引きちぎれないって相当だよ!?」

     虎杖が全力で引っ張ろうがちぎれず、根元から引き抜こうにも先が見えない。

    「くそっ、キリがない!」
    「芋のツルって地面と接した所からどんどん根を張って広がるからねぇ」
    「普通の植物の生育ペースじゃないでしょう!」

     伏黒の出した玉犬がツルを切り裂いても横からすぐに別のツルが巻きついてしまう。

    「ナナミン! 大丈夫!?」
    「ええ。身体は動かせませんが、これ以上締まる様子もなく痛みはありません。しかし、くそっ。ビクともしない」

     体制的にも力が入りづらい。両手首も絡め取られている今、術式の発動もままならないため七海に自力脱出は難しい。ただただ七海を拘束してうねるツルの目的も分からず、七海達は混乱するばかりである。

    「先生! これどうすりゃいいの!?」
    「僕も流石に芋のツルの対処法なんて知らないんだよねぇ」
    「その目ならなにかわかるんじゃないの!?」
    「いや、なんにも。だってただの芋のツルなんだもん。植物の弱点なんて六眼でも見つけようがないよね」
    「畑の持ち主から何か聞いてないんですか!?」
    「うーん。昔から代々育ててるとは言ってたけど、そんなやばいものとは聞いてないなぁ」

     手についた土を払いながら立ち上がった五条。

    「正直僕もよく分からない状況だからどうしようかと思ってるんだよね」
    「ええ! 先生でもダメなの!? どうしようって、ああ!」
    「っ!?」

     七海は息を詰まらせる。虎杖が心配気に見上げた先で七海の身体を取りまくツタの一部が七海の服の中へと忍び混むのが見て取れた。

    「ちょっとちょっと! なんで服の中になんて入り込むの!」
    「まさか、エッチな事して生気吸い取る……みたいな?」
    「どこの変態設定よ! あんた一体どんなAV見てんのよ!」
    「え! 濡れ衣! そういうのあるらしいってだけで俺の趣味とかじゃないからね!」
    「あんたの趣味なんてどうでもいいわ。第一それなら私が狙われるでしょ! なんで七海さんなのよ!」
    「そこかよ! うーん、でもなんでだろ? ナナミンの方が色気あった、とか?」
    「はーぁ? この美少女から溢れる色気が分からないはずないでしょ。その意見却下」

     釘崎と虎杖がうっすらと頬を赤らめながら言い合っている間にも七海の状態は悪化していく。服の中へと侵入したツルは服の中で七海の肌をはって奥へと入り込んでいった。

    「う、ぐっ。気持ちの悪い……」
    「七海さん! 五条先生! いい加減にどうにか」
    「分かってるよ」

     振り返ろうとした伏黒の横を五条が通り抜け七海へと近づいていく。暴れようとする七海の動きで裾が上がってきたことでウエストの部分が露出した。そこからズボンへと侵入しようとはうツルを五条が掴む。ビチビチと手の中のツルが暴れ、他のツルが五条へと攻撃を仕掛けてくるがもちろんの無下限で近づくことは出来ない。

    「ダメダメ。さすがにこれ以上はR指定だからね」

     そう言うと帳の詠唱を始める。五条と七海だけを包み込むように狭い空間ながら虎杖たちとの間を隔絶する帳が降りていく。

    「先生!」
    「七海のことは任せて。30分……いや、1時間くらいかな。終わるまで三人で芋堀やっといて」
    「っ!? 五条さん、何を企んでるんですか……」

     七海は嫌な予感に顔を青くする。しかしそんな七海の心配を無視して五条は虎杖たちに笑顔で手を振った。

    「そっちが早く終わったら伊地知呼んで先に焼き芋パーティ始めてても良いよ。後はよろしく」

     トプン。

     降りきった帳は真っ黒で中を視認することは出来ない。音が聞こえるでもなく、残された三人の間にはしばし沈黙が続いた。

    「……なぁ。どうやってツル祓うんだと思う?」
    「……知らないわよ。術式でどうにかするんでしょ」
    「1時間ってさ……先生の術式でそんなにかかるかな?」
    「……深く考えるな。さっさと終わらせて高専に戻るぞ」
    「それが無難ね」

     二人の関係をおおよそ把握している生徒たち。三人は黙々と作業へと取りかかり、伊地知の送迎で高専へと戻ることとなった。
     焼き芋が焼き上がる頃に戻ってきた二人だが、帳の中で何が起こったのか誰も聞くことはもちろん出来なかった。
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