グルメ「今日は思いのほか仕事が捗ってな~。やはり美味いモンを食うと、身も心も充実するものだなあ」
得意げに言う王の、いかにも含みのある笑顔に、ランスロットは眉をしかめた。たくさんの書類と共に置かれた、油とケチャップの染みた包み紙を見ずとも、その機嫌の良さの訳など知れている。
「……食べ過ぎは良くないぞ」
道楽に付き合わされる者の身を案じ、釘を刺すランスロットだが。
「過ぎてはおらんだろ、ほんのつまみ食い程度さ。お前が勿体ぶって手をつけないからなあ?」
ぬか床、もといアーサーは最強騎士の釘を容易く受け止めた。
「時期尚早では腹を壊す」
「おやおや、もう充分食べ頃だろうに。ああ、だがそうか、据え膳はこちらか」
頬杖をついたまま、上目使いでランスロットを見上げる。穏やかな湖に、戯れに小石を投げ込むような、他愛のない挑発。
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