それは恋 恋って言うんだろうか。この感情は。
吊り橋効果って言葉があるけれど、それなのかな? でも命の危険のドキドキとは明らかに違う気がする。
「暁人。あーきーとー。あきとくんー」
え、なに? なんなのその呼び方。
「チッ 心ここに在らずかよ」
ありました。さっきまで心ここにありました。でも今のあなたの声で、話し方で、どっかに飛んでいきました。
なんでそんなに可愛いだよ。
いや、推定年齢アラフォーのおじさんに対して可愛いって思うのっておかしくないか? でも可愛い。可愛いって思ってしまう。
格好良いとも思ってる。それは間違いない。
でもそれ以上に思うのは、
可愛い。
この一言。これに尽きる。
皮肉屋な憎まれ口も、すぐムキになるところも、調子のいい軽口も、すぐ煙草吸いたがるところも、聞いてるこっちが恥ずかしくなるキザなセリフ言っちゃうところも。
全部可愛い。
頼むから、敵に捕まって僕から離れるのをやめてほしい。気が気でないから。
可愛いから攫われるんじゃないか? って馬鹿なこと考えてしまう程度には夢中です。
あれ? やっぱりこれって恋なの?
うーん。恋か。恋なのか。仮にそうだとしよう。
でもKKって霊体なんだよね。死んでるってこと? え。それは困る。とても困る。はじめからバッドエンド確定じゃないか。無理ゲーじゃん。そんなのってない。
いや、待てよ。でもKKの身体はあるんだよね。能面をつけていたあの身体。
身体を取り戻せたらワンチャンあるってことですか? あるってことですね!
「よし!!」
大声で気合をいれる。
「うわっ! 急に大声だすなよっ」
驚いてる声も可愛いな。KK可愛い。
僕に任せてよ。般若面の男をぶっ飛ばして、麻里も、KKの身体も、取り戻してみせるから。