好き。愛してる。誰よりも大切で、ずっと側にいたい。
この感情に名前をつけろと言われたなら、誰もが「それは恋」と答えるだろう。けれど、僕はそんな簡単な言葉ですませたくない。
彼の声を聞くと、心が安らぐ。
彼のそばにいると、胸の辺りがあたたかくなる。
彼と目が合うと、鼓動が高鳴る。
名前を呼ばれる度、相棒と手を差し伸べられる度に僕は嬉しくて、彼に夢中になってしまう。
ずっと、ずっと、それこそ、死んでもずっと一緒にいたい。
でも、そんなこと叶わないってわかってる。
もし、彼が僕の感情を知ったなら、彼は僕から離れていくだろう。「馬鹿な事を」って僕の想いを一蹴して、それこそ逃げるみたいに姿を消すだろう。
それが僕の為だと信じて。
自分のこと、責めるんだろうな。一人の若者の人生を狂わせてしまったって。そんなこと思わなくて良いし、狂わされたなんて僕はこれっぽっちも思っていないのに。
優しくて、強がりで、責任感の強い彼だから、全部自分のせいだって決めつけて一人で答えを出して僕から離れていく。
想像がつくから困る。
それなのに、ほんの一抹の希望を持ってしまっている自分の浅はかさに、笑いたくなってしまう。
もしかして、彼も僕に同じような感情を抱いているんじゃないかって。
もしかして、僕がそれを口にするのを待っているのかも知れないって。
彼の言葉を借りるなら「お子様」ってことなんだろう。淡い期待を抱いて、自分の望む結果が得られると、どこかで信じてる。
そんなこと、あるわけないのに。
わかってる。この気持ちを絶対に口にしちゃいけないって。口にしてしまったら、この関係が壊れてしまうって。
でも、心のどこかで思っているんだ。この想いを彼に伝えたいって。それがいつになるかはわからないけれど。
あと少し、もう少し。この儚くも心地よい関係を続けていたい。
薄い氷の上に立つような、一歩踏み出したら簡単に破れてしまう……。
そんな危うい想いを抱いたまま、僕は今日も彼の隣にいる。
(終)