「ポップコーンを、ふたつ」
「かしこまりました」
スタッフの返事を聞きつつ、シエテはおのれの口元を押さえた。
なにを言っているのだという驚きは一瞬でとけて、シエテはやれやれと肩をすくめた。
あつあつのポップコーンを店員からふたつ受け取る。人気のないところまでいけば、片方が勝手に消えた。
「君ねえ」
文句を言う前に、脳裡に浮かび上がってくる知らない剣の情報。勝手に剣拓に登録されている。代金というか礼のつもりなのだろう。
「せめて言葉で言ってくれない?」
――脳内で喋られると気が散るって言ったのは君だと思うんだけど。
いささか気だるそうに言われて、シエテはなんとも言い難い表情を浮かべた。
それはそうなんだけど……。そうなんだけれども……。
結局なにも言わずに、シエテは騎空団の団員のもとへ向かった。
人数分の席は確保してあった。空いているところに座って、あたりを見回す。みんな楽し気で、祭りの空気感にあてられる。
楽しみだね、とルリアやビィ団員たちと、団長の出番までのんびりと雑談した。
その合間にシエテはたびたび妙なタイミングでうなずいたり、独り言をいった。
ポップコーンをひとつつまんで口のなかにほうりこむ。
ステージ上に立ったものたちを見比べて、シエテは小声でつぶやく。
「仮面付けてるほう」
――おんなじ。
「毎回同じ方に賭けてて、賭けが成立しないんだけど」
ステージに立った挑戦者の強いところ、弱いところ、伸びがありそうな部分、改善したほうがいいところ。いちいち同じ判断であった。
ポップコーンをひとつつまんで口の中にほうりこむ。
星々が広がる中、水鏡のようにひずんだ空間の先。彼の視線の先には煌々と燃え盛る鳥と剣を交えるものたちがいた。
ぷかぷかと浮かびながらその男はぼそりとつぶやく。
「青い髪のほう」