がたん、ごとん、とレールジョイントを車輪が乗り越える音がする。
電車のなかにいた。座席に座って、自身のバッグを抱えて、うつらうつらと体を揺らす。近くの席でこどもがきゃあきゃあとはしゃいでいるのが見えるのに、不思議と聞こえなかった。分厚い水をへだてているような、不明瞭さだ。
眠っているのだと思った。
通路を挟んだ反対側の席に座っている男が、人の頭を膝の上に乗せているのを見たからだ。誰も騒がないので、妙な白昼夢を見ているのだと思った。
長い黒髪を黄色いリボンでまとめた男は、至極大事そうに頭を撫でていた。黄金の髪を撫で、いとしげに頬に指を滑らせる。
「次はどこへいこうか」
男が楽し気にぽつりとつぶやいただけの独り言が妙にはっきりと聞こえる。
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