ラインハルトはガラスケースの中におさまっている宝石を見て、少し眉をひそめた。
30ctの赤色金剛石。柔らかな布の上で眠る宝石は素人目に見ても美しい。宝石自体の希少性もさることながら、この石についてまわる血なまぐさい噂がラインハルトをここに呼び出した。
この宝石の所有者はみな首を切られて死ぬのだという。ラインハルトが把握している限りでは、歴代の所有者は全員この宝石を首にかけたあと、事故や宝石目当ての強盗など、なんらかの理由で首を刎ねられて生首を地に転がしていた。オカルトめいた話だが、実際に高頻度で死人が出ている。ラインハルトの管轄ではないが、こうも事態が落ち着かないのであればと個人的に動くことにした。
1988