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    はっぱっぱっぱ

    たぶん終わってなくて途中で諦めてたの投げる

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    はっぱっぱっぱ

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    構想は出来てるけど描写が思いつかないのと他にも書きたいものが増えてこれ最近書けなかったから没ネタとして
    時間ができたりモチベが復活したら続き書きます。たぶん
    ハピエンだけどそこに至るまでは全てかけてません、少~~しだけ痛い描写有、でもほんと少し、注射でちくっとするくらい

    ミンミンミンとセミの鳴き声が響き渡る。茹だるような暑さの夏の日に、類はいつも通り屋上の日陰がある所に座り、次のショーに使うロボット達のメンテナンス作業をしていた。ポツリ、額から流れる汗がロボットに落ち、1度作業の手を止めた。流石にこの暑さには堪えるものがある。熱風だと知りつつも、涼しさを求め手を仰ぐ。

    (司くんまだかなぁ)

    学級委員の集まりで、司はまだ来なかった。そろそろメンテナンス作業をしながら待つのも少し疲れたな、と類は背伸びをして、ポケットに入れておいた物を取り出した。それは今度の休日に行われるミュージカルショーのチケットだった。前に司が1度はこの劇団のを目にしておきたいと言っていたので買ったのだ。司と類、もちろんショーが良く見える席を2人で。誘うのを想像するだけで胸が高鳴った。どんな反応をしてくれるだろうか、1番に驚きか、喜びか。……断られなければ良いんだけど。そんな弱音は期待で押し潰した。

    「類!!すまん!!!待たせたな!!」

    屋上の扉がバンと勢いよく開き、2人目の声が響いた。そちらを見れば階段をかけ上って来ただろう司は息切れひとつもせずに立っていた。別にそんな急がなくても良いのにと内心思ったが、そんな司が愛おしく感じる。

    「大丈夫だとも、そこは暑いだろう?こつちはまだ涼しいよ」

    そう言って類が座ってる横をぽんぽんと叩く。そこに司は座りお母さんが作ってくれたお弁当を開き、手を合わせた。学級委員の集まりがあり、いつもより時間が少ないからか大きい口に一気に入れ頬が膨らむ司を見て類は微笑む。

    「そういえば司くん。僕が君に贈り物があると言えばどうする?」

    そう問えば、司は一旦箸を止めて、訝しげに眉をひそめ類を見た。人体実験にさせられるのか…いや次は宙に舞う…花火にオレはなるのか…?と小声でぶつぶつと呟いて、司は首をぶんぶんと振った。

    「っなんでもないぞ!類がオレに贈り物があると言うならオレはなんでも受け取るぞ!!!」

    自信満々で言う司。小声も全て聞こえてたけど、そんなに贈り物の返しで人体実験とか、僕はどんな風に思われてるんだい…よよよ…と一瞬思ったが、僕ならやってしまうだろうな、と自問自答してしまった。ニコリと笑って先程手にしたチケットを取り出した。

    「この前司くんが言ってたミュージカルショーのチケットが2枚。もちろん良く見える席を取っておいたんだけど、どうだい?」
    「え、な…!?!!!」

    チケットを見せれば司は驚き声を上げた。目を丸くし、音という音しか出せなくなった司をつついてみれば、ハッとして深呼吸をし始めた。流石にここまでは予想外だな…と類は笑った。いつも予想以上の事をしてくれるから、誘ってしまうんだ。

    「よし…落ち着いた、落ち着いたぞ」
    「ふふ、そうだねぇ」
    「にしても類…よくこのショーのチケット取れたな。結構大変じゃなかったのか?」
    「まぁそれなりに苦労したけどちゃんと勝ったよ」

    司くんも見たかっただろう?
    そういえば司はそうだな…と小さく頷き、チケットの片方を取ってくれた。司はそのチケットを1度確認し、落とさないよう、風に飛ばされないようすぐにポケットに入れた。

    「今週の日曜は予定はちゃんと空けている!土曜もショーの練習は休みだからすぐ帰って準備すれば大丈夫だな!!」

    司は喜々と話す。それを見ると無意識に口角が上がってしまった。良かった、喜んで貰えて、司くんと2人で見に行くなんてデートみたいだ、と類も内心浮かれてしまった。司も目を輝かせながらお弁当のおかずを口に運んでいく。

    「それじゃあ、日曜日の9時にスクランブル交差点で集合でどうだ?」
    「うん、僕もそれでいいと思うよ」

    笑ってそう返せば、司もニコリと笑い返してくれる。それだけでときめいて、胸の中が暖かくて、幸福感に包まれた。好きという気持ちだけが胸の中で募っていく。この気持ちを伝える事はないけれど、自分の中にある気持ちを大事に抱きしめて暖めていく。このぬくもりだけは離したくないから。もし関係を持つのだとしたら、派手に、盛大なプロポーズで。

    「そうだ、類、次のショーの脚本なんだが━━」

    日曜に期待を膨らませ、2人は楽しそうに次に行われるショーについて話し始める。

    早く、日曜日になれば良いのに。

    心のどこかでそう浮かんで。






    今日はまだ過ごしやすい清夏。良かった、この前よりかは過ごしやすい。現在時刻は8時45分、早く来すぎてしまったと少し笑ってスマホを取り出す。

    「えっと…もう集合場所に着いたよ…っと」

    司にそう連絡し、スマホをしまう。まだ9時にもなっていないというのにスクランブル交差点はもう人々は行き交っていた。この後、司くんと2人でショーを見ると考えるだけで胸が高鳴る。そのせいで前日ほとんど寝れなかったのだが…。まだ集合時間は早いのに、司を探すためキョロキョロと辺りを見渡す。体がうずうずしてじっとしてられない。見つけたらなんて声掛けよう、どんな話をしよう、感想も楽しみだな、そんな考えをしては少し頬が赤くなった。

    「類!!」

    自信を呼ぶ声の方を振り向けば、いつもより洒落た格好をし、手を振って駆け足で来る想い人。だが、まだあまり時間は経っていないはず…と一瞬時計を見やれば現在時刻8時50分。それに少し笑みがこぼれた。

    (僕も早かったけど…本当に…)

    期待させるのが上手いんだから

    「すまん!もう類が着いたと言っていたから急いで来たんだが…」
    「大丈夫だよ、早く来すぎちゃった僕も僕だから」

    そう類が笑って返せば司も笑う。人がいっぱいいるスクランブル交差点でも、今だけは2人だけ切り取られた空間のようだった。これが明日も、明後日も続けば良いのに、と心に小さく思い浮かんだがすぐに消した。そんな贅沢は言ってはいけない。どんなのでも、幸せは噛み締めなきゃいけないのだから。

    「それじゃあ、少し早いが行くか?あっちで時間を潰せば良いだろう!」
    「うん、そうだね。ちゃんとチケットは持ってきたかい?」
    「もちろん!忘れることなく持ってきている!」

    胸を張って自信満々に言う司。それを見るだけで胸がぽかぽかと暖かくなるのだから、本当に自分は惚れ込んでいるな、と笑ってしまった。それから2人は歩み始める。

    「今日のショー…あの劇団の歌姫について色々見ておかなければな…」
    「そうだねぇ、寧々に言ったら喜ぶだろうし。でも司くんは気になる役者が居ただろう?僕が見とくから司くんはその役者に集中してていいよ?」
    「だが類だって演出気になると言っていたでないか、集中したいだろう?今日のミュージカルショーの演出を見て、次のワンダーランズ×ショウタイムを更に笑顔を振り撒かねばいけないからな!」
    「それは役者もだろう?」

    2人は足を進める。今日のショーに2人は期待を膨らませ、終わったらどこで感想を言い合おうか、お昼もどうしようと、そんな他愛のない話をして。


    そんな幸せなひとときは、平穏は、いつだって簡単に崩される


    笑い合う2人、胸を躍らせ話している時、ふいに、後ろからクラクション鳴った。それに気付き、2人は後ろに振り返る。振り返り音の正体を見るのが先か、はたまた……
    どこからか、誰かの劈くような悲鳴が聞こえると共に、強い衝撃が類を襲う。激しく頭を打ち付けられる。

    「つ…か、さ……く………?」

    反射的に呟いたその声は、雑音に飲まれほとんど音になることなく消えた。
    ぷつり、そこで意識は闇へと落ちていった。







    パチリ、目を覚ますと見慣れぬ真っ白な天井。微かに漂う消毒液の匂いに純白なカーテン、シーツ。簡単に病院ではないかと推測が出来た。軽く身じろげば腹部に痛みが走り、少し顔を顰めた。その瞬間、声がかかった。

    「お…良かった。やっと起きたか、類」
    「………え…?」

    そちらを見て、類は目を見開き、驚いた。

    司は半透明になり、ふよふよと浮いていたのだから

    一瞬、夢かと考えたが先程の痛みが現実だと訴える。当の本人はそれに気にしていないようで類の事を心配そうに見ている。僕からすればこっちの方が心配なのだけど…
    ふよふよと類の周りを浮く司は、どう見ても透け奥の物が普通に見える。この部屋はどうやら2人用の様で、安堵の息をもらした。

    「えっと……?」
    「まぁ…色々聞きたいだろう?だが、ちょっと待て」

    全く状況が理解出来ない。起きたばっかの回らない思考回路を類は頑張って回す。司は類の手に自身の透けた手を乗せる。乗せたと言っても乗せられているように見えるだけで、司の温かい温度も感触もしなかった。それに少し、胸がきゅっと締まる。何をしているのだろうと司の方を見た瞬間、頭の中に声が響いた。

    『類、聞こえるか?』

    司の声が響く。それは普段のうるさい音量では無く、とても聞きやすい音量で。脳内に司の声が反響し消えていった。司は自慢げに胸を張る。類はまた目を見開いた。今日は驚いてばっかだと肩を竦める。すると司はニィと口角を上げる。

    『驚いただろう!聞こえてるみたいで良かった!』

    次に脳内に響いた声はいつもの司の音量で。

    『こういう風に、触れれば触れた相手の"心の声"が聞こえてな。まだオレから相手に声を送るのはした事がなかったから聞こえないのではと思ったが…聞こえたのなら良かった!』
    『……まるでテレパシーのようだねぇ。でも僕から司くんに触れようとしても感触はないし、司くんからじゃないとダメなのかな…』
    『それは…どうだろうな…。だがこっちで話せば周りから類が不審がられることもないだろう!だからオレが知ってる事を説明するぞ!!!』

    司は宙に浮くのをやめ、類の隣に座り、これまでの経緯をゆっくり説明する。時折類の様子を見て、ゆっくりと。
    まずあの日、よそ見運転をしていた車が赤信号にも関わらず突っ込んだ所に司と類は巻き込まれたこと。それから4日が経ち今日は木曜。医者によれば奇跡的に軽傷、だが頭の打ち所が悪くて4日間も寝ていたこと。幸いどこも折れては無いので退院した後はショーができるという事。それを類は静かに頷きながら聞く。類は隣のベッドを遮っているカーテンを開けた。そこに居るのは、同じく轢かれた彼で。死んだように眠っている司を見ると、胸が苦しくなって少し顔を顰めた。

    (っ……これは、まるで死んでるみたいだな…)

    思いたくもない考えが頭をよぎった。そしてハッと司の方を類は見る。今、触れられてなかっただろうか、聞かれただろうか、そんな焦りで嫌な汗が出るが司は類には触れておらず、ホッとする。

    (ぼくが、司くんをこうしてしまった…)

    誘わなければ良かった、巻き込まれずにすんだのに
    こうすれば良かった、ああすれば良かったといくら考えてもどれだけ悔やんでも過去を変えることが出来ない、目の前で寝ている司が居る現実は変わらない。ただその現実に胸が苦しくなった。

    「類、お前が気に病む事は無いぞ」

    司はそう言ってすぃと類の前に移動した。その顔は少し困ったように笑っていた。

    「運転手がよそ見してしまったせいで、類は何も悪くない。オレもこうなってしまっているが、軽傷だ。だから笑ってくれ」

    そう言って司は優しく笑った。類が好きな明るく優しく照らしてくれるその笑みは、今だけは胸を苦しくさせた。でも、司が笑ってというのなら。泣きたくても、笑っていよう。司は類が泣いた方が悲しませるのなら。

    「うん、わかったよ司くん」

    そう言って類はニコリと笑った。上手く笑えているだろうか、少し怖かったが司がそうかといつもの笑顔で、自分はいつものように笑えてると思うだけで少し安心した。

    「そうか!!それなら良かった!!それじゃあ類も起きたことだ、病院内を歩いてみないか?」
    「おや、司くんはまだ行ってなかったのかい?」
    「あ、言ってなかったな、類から離れようとしても離れられないんだよな…」
    「離れられない…?」
    「守護霊…いや、背後霊の方が正しいのか…まぁそんな感じだ!」

    一瞬どんな感じだと言いそうになったが、なんとなくわかったので口を噤む。取り敢えず自分が行かないと司も動けない、それも3日もここにずっと縛り付けて。何かが黒く澱んだ気がしたが、気にしない振りをした。司は目をキラキラと期待に満ちた目を類に向け、正直拒否権は無いのだろうなとクスリと笑った。

    「フフ、それじゃあ司くん、何処から行くかい?」
    「まずは売店から行くぞ!!」
    「その姿で何か食べれるのかい?」
    「まぁ…それは食べれるか試せば…」

    お菓子は何を買おうか、司くんはどういう風に食べれるのか、そもそも食べれるのかもわからないから1人分で良いだろうかと考えながら類は歩みを進める。それに司は笑顔で背中をついて行き、2人は病室を出た。







    月明かりが病室を優しく照らす。はぁ、とひとつ息を吐いた。昼間より暑くはないが、じっとりとした夜の湿気、司の事もあり類は寝れずに居た。寝返りを打って、司が寝ているベッドの方を向く。向いたとしてもカーテンで遮られているので見えないが、それだけでも少し楽になった。結局司はお菓子を食べられるか試してみれば、予想通りで食べられずに終わった。司は少し眉を落としたが、それも一瞬ですぐにいつもの様に戻り大きな声で笑っていた。その司に、また類の胸はちくちくと痛んだ。司は、あの幽体では寝れるのだろうか、そんな不安が類を苦しめた。

    (司くんに、触れたいな…)

    類からは触れないし、触れた時の包み込んでくれる体温も、感覚もない。司は感覚があるらしいけど。これを自身の罰にすれば、許されるだろうか。いや、司くんはそんなの望まないだろう、これは自分のエゴだ。頭を少し、軽く振って思い浮かんだ考えを消し、別の事を考える。

    (司くんが、少しでも人に会えるように退院したら色んな人に会いに行くのも良いかもねぇ…)

    冬弥に彰人、寧々、練習は強制的に休まされるだろうからセカイならえむに会えるだろうか。彼は人脈が広いから、全員は難しいけど、少しでも会わせてあげたい。人の笑顔が大好きなのだから。次、学校に行ける日を考えていけば胸の痛みは少しずつ引いて楽になっていく。みんなに会った時、どうやって笑わそうか、いつも通りに接せれるだろうか。ふと、そんな疑問が脳裏に過ぎる。雲が月を隠して、辛うじて月明かりで明るかった病室が暗くなった。どうすればいいのかわからない、行き場のないこの疑問を抱えたまま、類の意識はゆっくりと落ちていった。




    昼休みを知らせるチャイムが鳴った。成長期、食べ盛りな高校生達はその音を聞けば財布片手に購買へと急いで向かう。類はその様子をいつもの様ににこにこと観察してれば周りを司が心配そうに浮く。驚きでなのか、なんでなのかはわからないが無言でジト目で見てくる司に類は少し笑ってしまう。類が急に笑えばクラスに残った数人が一人で笑っている類に視線を向けるが、本人は周りの目を気にしないからそれに対しては何も思わない。司が何か言いたげに類を見つめる。ジト目で見てくる司に胸が高鳴ったが、今はダメ、司くんにバレちゃうからと深呼吸をし、出かかった気持ちを押し殺す。頭を空っぽに、白紙のノートの様に全てを消してから、自身のピアスを触れる。それを合図に司は類に触れる。

    『類…お前いつもそうやって見てるのか…?』
    『まぁ、カタストロフィとか書く時の参考資料になるからね』
    『そう…なのか…?』

    まぁ、なるほど…とわかったような、わからないようなと司は首を傾げた。カタストロフィを描き、演じるのだとしても悲劇ではなく、奇想天外、面白可笑しく笑顔を届けるのだろうと思うと、少し笑みがこぼれた。

    あれから少しして、司と類、会話する時の決まりを作った。2人の時は普通に会話、公共の場や周りに人が居る時は心の声で、それを持ち掛けたのは類だった。正直、ずっと触れられて自分の心の声や気持ちを聞かれるのは良い。良いのだが、まだ自身の、司といる時の胸の高鳴り、好きという気持ちは隠しておきたかった。この気持ちを知られるというのを危惧してしまった。近付けば近付くほど離れ、傷付けてしまって、類の好意を知った時の司の反応が怖くて、今のままで居たい。そう思ったから。だが司はこの気持ちを知ったとて、卑下にするような人物でもないし、関係を変える事をする人物ではないとわかっている。でも、わかっていても思ってしまう、怖くなり、不安に駆られ、彼が言った、笑ってくれ、それに応えられなくなってしまう。司の言葉に応えれるように、自身の気持ちを隠せるように。心の声で会話する時は、類が自身のピアスに触れる事。それを類が提案すれば、司は二つ返事で了承してくれた。司も鋭いから、何か引っかかった所はあるだろうが、それについては何も聞かずしてくれるのは良いところだろう。

    首を傾げていた司は何か思い出したようにハッとして口を開く。

    『冬弥達に逢いに行くんじゃないのか?』
    『ん、あぁ…うん。この位の時間なら大丈夫そうだね』

    時計を横目で見ながら小さな2つの袋を取り出す。これは冬弥と彰人の2人に作った類と司からのプレゼント。ずっと司に会えなくて落ち込んでいるであろう冬弥に何かをあげたい、司のその一言だった。誰かを笑顔にする提案で、冬弥を悲しませる原因になってしまった類はもちろん乗った。司と2人で作ったのだから、気に入って貰え、きっと笑顔になるだろう。一瞬、袋の中身を見て類は微笑む。どんなのであれ、自身が手がけたのを喜んで貰えるのなら、嬉しい。

    『それじゃあ行こうか』

    そう言って歩を進めれば司は類の背中を追う。いつもは類の少し前か隣、今は後ろだからほんの違和感。司は背後霊と言ったが害を出すのは以ての外、むしろ守るのだから守護霊に値するのだろうか。なんにせよ隣に来て欲しいとは思うのだが。取り敢えずどちらかのクラスに揃っているだろうと1-Bに向かえばクラスの前に2人は楽しそうに会話をしていた。周りの他にいる1年から一気に類に向かって視線が集まる。変人ワンツーとして悪名高いからか、普段共にいる人物がいないからか、それとも退院して久し振りの人物だからか、どちらにせよ類は周りの視線に目もくれずに2人に話しかける。

    「やあ、東雲くん、青柳くん」
    「げ…」
    「あ、神代先輩!」

    片やげんなりとした表情で、片やパッと花が舞うように表情が明るくなる。普段関わりたくないと言うのに、相手から話しかけられたら最期までちゃんと相手をする彰人、司を尊敬しやまない冬弥、ここに司くんが居れば、一瞬浮かんだ考えが自身の胸をチクリと刺した。それに気にしないように左手をキュッと強く握った。

    「フフ、今日は2人に渡したいものがあってね」
    「渡したいもの、ですか?」
    「……」
    「今回は破裂もしないよ。場合によってはするかもだけど」

    ニコリ、ジト目で見てくる彰人にそう返せば彰人はひとつ息を吐いた。冬弥は興味津々に目を輝かせ類を真っ直ぐ見る。後ろに新しいおもちゃを今か今かと座って待つ子犬が見えるのは気のせいだろう。

    「それじゃあ、この袋の中にあるから取り出してみたまえ」

    そう言って2つの袋を渡す。その袋から中身を取り出してみれば、それは可愛らしい司を模したバルーンアートだった。

    「これ、司先輩…?」
    「司くんに長い間会えないからそれを代わりにね。まあ見ての通りただのバルーンアートだから乱暴に扱ったら破裂はするよ」
    「まぁ…破裂はするけど危険物って言う程でも無いっすね…」
    「神代先輩!ありがとう、ございます」

    ふんわり笑って、喜ぶ冬弥を見て少し頬が緩んだ。司は喜ぶ冬弥達の周りをそうだろうそうだろうと言いながらくるくる回る。いつもの様に、大きい声を発して周りを回っているのに類しか気付かない、自分が司を、さっきまで暖かかった胸の内がチクチクと痛みを訴え、一瞬顔を顰めた。ほんの一瞬、すぐにいつもの表情を貼り付け、他の3人を見てみればそれぞれバルーンアートや他のものに視線が向いており、安堵の息を吐いた。

    (大丈夫、大丈夫。バレてない、見られてない)

    そっと胸を撫で下ろし、ゆっくり息を吐いていけば胸の痛みも落ち着いていく。胸の痛みもいつも短期的なものだから良かった、落ち着けばすぐに治るし
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    はっぱっぱっぱ

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    (司くんまだかなぁ)

    学級委員の集まりで、司はまだ来なかった。そろそろメンテナンス作業をしながら待つのも少し疲れたな、と類は背伸びをして、ポケットに入れておいた物を取り出した。それは今度の休日に行われるミュージカルショーのチケットだった。前に司が1度はこの劇団のを目にしておきたいと言っていたので買ったのだ。司と類、もちろんショーが良く見える席を2人で。誘うのを想像するだけで胸が高鳴った。どんな反応をしてくれるだろうか、1番に驚きか、喜びか。……断られなければ良いんだけど。そんな弱音は期待で押し潰した。
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