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    tsr169

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    ※完成版は支部に置いています、ぽちぽち押していただいてありがとうございました※
    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18299339

    巽の実家でセックスする巽マヨの話を書きたかった回。続き書いたら支部にいれるのでここは一時的なメモです/まだ健全な内容だけどいかがわしい展開なので注意

    「よかったら、今度の週末、俺の実家へ泊まりに来ませんか」
     夜のミーティングを終えて部屋への帰る道すがら、巽がそんな事をふいに告げてきたのでマヨイは首を傾げた。
    「巽さんちに、ですか?」
    「実は週末、親が教会主催の秋季キャンプに引率で出かけるので教会が空になってしまうんです。そうなるとまだ暑さが残るこの時期ですし、花の手入れなんかをする人がいなくて。それで実家から呼び出されたという具合です」
    「そういうことだったんですねぇ」
     のんびり相槌を打ってから、マヨイははたと思い当たって足を止めた。
     (これはいわゆるお泊りデートというもののお誘いではないでしょうか?)
     一応隣を歩いている巽さんとは先日、”お友達以上のお付き合い”をする事になったばかりだ。人目のない場所であれば、手を繋いだりハグしたりなんかもしてきた。
    「あのぅ、藍良さんとか一彩さんなんかもお誘いされているんでしょうか……?」
     一応彼の本意を確かめなくてはならない。ユニットメンバーで楽しくお泊り、というお誘いの可能性だってある。先ほどのミーティングで週末にユニットの仕事がない事は確認済みだ。
    「ああいえ、誘ってるのはあなただけなんですが……」
     巽は少し視線を泳がせるようにマヨイから目をそらす。物珍しいものを見た気がした。やはりこれは、そういう事なのだ。
    「お二人も誘った方が良ければ、そのように」
     言葉を区切って数秒、巽の切り出した答えに、マヨイは慌てて首を横に振った。
    「あの、いえ……私だけでもそのぅ……巽さんが良ければ……」
     じわじわと頬に上る熱を心の中で必死で落ち着かせながら目の前の彼に視線を向けると、途端に巽は破顔した。
    「ヒィッ、眩しいですぅっ」
     咄嗟に顔を覆うのも構わずに力強く抱きしめてくる巽を、マヨイは慌てて押しのける。ALKALOIDのメンバーとしてハグをしていようが日常風景なのでさして見た目としては問題はないのだが、とにかくこのごろの巽からのハグは心臓に良くない。仲間としての抱擁でも緊張が走ったというのに、恋人になってからのハグは色々と意識してしまうのだ。間近で見る巽の端正な顔立ちも熱っぽい視線も、マヨイの心臓を強く掴んで離さない。
    「正直人を招くような立派な家でもないですが、マヨイさんと二人でゆっくり過ごせる時間というのもなかなかないですからな」
     先日MDMを終えてからこの方、学業とアイドル活動だけに留まらずお互いにサークル活動なんかも増えている。付き合おうと意思を固めて見たものの、隙間時間を縫うように少しずつスキンシップを重ねるのが関の山だ。ユニット結成時にはあれだけ一緒に居たというのに。その事を話すと巽もそう感じていたのか、だからです、と言われたのが先日だった。
    『だから、マヨイさんに告白しました』
     離れてみて、何らか心境の変化が彼の中にあったらしい。マヨイ自身は彼の情熱に半ば流されるようにして諾の返事をしてしまったが、受け入れてみて存外それがしっくり来たので後悔はなかった。今まで一方的に天井裏から誰かしらを眺めるばかりだった自分を側で見守ってくれる人がいる、という事実が何より心を温かくしてくれる。
    「では、週末。楽しみにしていますね」
     部屋の前でさり気なく手を握られてまたもや心臓がどきりとするが、マヨイは平静を装って握り返した。温かい大きな手だ。清くて尊い巽さんの手。この手を私のような穢れた存在が握っても良いのだろうかなんて一抹の不安が胸に沁みを作るが、返事をするように強く握られるとその不安もふわりと消えていくから不思議だ。


     お互いにおやすみなさいと言葉を交わして、それぞれの部屋に入る。ルームメイトの友也はこの時間だというのにベッドで寝息を立てていた。
    「おや、明るいままで……睡眠が浅くなってしまいますよ」
     声を忍ばせた独り言は、パチリと乾いた音と共に消灯した部屋の暗闇に溶けていく。
    (さて、お泊り……という事でしたが)
     出来る限り音を立てないように自分のベッドに移動して、スマホを片手にマヨイはタオルケットに身を包んだ。
    (巽さんは、その先をなさるおつもりなんでしょうか?)
     色恋の経験がとんとない自分でも、同性の恋人がどのようにステップアップしていくものなのか、というのは一応付き合い始めの頃に調べ済みだ。その先というのはもちろん、キスの事であり、さらには性的な行為のことでもあった。
    (宗教上の理由で性的な行為を行わない、なんて選択肢も巽さんならあり得ますが……)
     正直なところ、マヨイはそれでもいいと思っていた。キスならともかく、男性同士の性行為は受け入れる側におおいに負担が生まれるらしい。お互い体が資本という仕事をしている中で、負担をかけるような行為はあまり望ましい事ではない。
     それにマヨイ自身は愛らしい存在を愛ではするが、性的にそれらの存在をどうこうしたいという欲があるわけでもなく、巽相手となれば触れる事すらいまだにおっかなびっくりだというのに、自分が巽を抱くなんて選択肢は最初からなかった。そうなると自分が受け入れる側を選択する事になってしまうが、それはそれで自分の中で想像がつかない。あの巽さんが。あの清廉潔白が服を着て歩いているような彼に、そんな性欲があるのだろうか。
     イメージしてみようと同性愛がテーマとなっている映画作品を何本か見てみたが、映画に直接的な表現や裏側が描写されるような事はなく、どれほどそれが大変な事なのかは伝わってはこないまま見終わってしまった。
    (それでも万が一、巽さんがそれを望むのであれば……努力はしたいですし)
     好きな人の願いであれば、自分の出来る限りでもって叶えてやりたいと思う。もちろん自分自身の性欲だって人並みにはあるので、勇気を出してあの清らかな肌に触れてみたいとも思う。控室で一緒に着替えたりもするので、巽の上半身を見た事は何度かあった。
    (巽さんは、結構鍛えてらっしゃるので私よりしっかり筋肉がついてるんですよね……ああ、思い出してまた心臓がどきどきしてきてしまいました)
     先ほどの力強い腕を思い出して、マヨイは体の芯がじんわりと温まるのを感じる。抱きしめられた熱が、まだマヨイの体に残っているようだった。
    (いけませんよ、マヨイ……この場所では。真白さんがいるのですから……)
     そういう気持ちになった時は誰にも知られていない隠し部屋へ行く事を決めている。マヨイは足の指先をこすりあわせて無理やり熱を逃がしつつ、週末に向けて何を買っていくべきかに思考を集中させることにした。


     レッスン、学校、テレビ収録そして雑誌インタビューと日々を忙しくしている間に週末はあっという間に来た。外泊届を巽と共に提出して、星奏館を後にする。良ければ実家の車で迎えに、という巽からの提案は丁重に断ったため、二人で電車に乗る事となっていた。
    「巽さん、ほとんど荷物持ってこなかったんですねえ」
    「ふふ。実家に帰るだけですからな。スマホと財布くらいでいいでしょう。マヨイさんは何かと荷物がありそうですが……」
     手のひらサイズのショルダーだけを肩にかけている巽が、歩きながらこちらの荷物を見ているので、マヨイは緊張でどきりとした。色々と持ってきたものを探られてしまうのはまずい。彼にその気が一切ないのなら使われないようなものまで入っているのだ。
    (念のため色々準備してきましたけど……なんというか、鞄の中身は絶対見せられないですね……)
    「ええ、あの、とりあえず着替えとかありますし」
     やんわり誤魔化したが、一応嘘ではない。
    「俺ので良ければ貸しますよ」
    「そんなっ畏れ多いですっ」
    「恋人に自分の服着てもらうっていうシチュエーションは、俺としては好きですけど」
     穏やかに笑う巽に、マヨイはあわあわと首を横に振った。好き、という言葉自体いまだに緊張してしまう。こんな調子では、万一キスなんてしてしまったら、緊張のあまり気を失って巽さんに迷惑をかけるのではないでしょうか。心の中で落ち着けないまま駅に着くと、二人で乗る電車を探す。彼の実家が少し離れた場所にあるので、短時間の乗車でもせっかくだからと特急券も買う事になった。普段は普通の電車で帰っている巽が、特急車両なら確実に座れるので、と勧めてくれたのもある。
     特急車両に乗り込んで二人掛けの席に並んで座ると、さりげなく手を握られた。
    「っ、た、たつみさん……」
     お互いに眼鏡と帽子でそれなりに見た目をごまかしてはいるが、アイドルなのだ。それも巽に至っては街中でもしょっちゅう声をかけられる程度には顔が知られている。こんな風に手を握っていては、何か疑われてしまうのではないかと気もそぞろだ。
    「これくらいは友達でも不自然じゃないですよ」
    「そういうものでしょうか……」
     何せ友達同士で出かけるなんて経験もないために、マヨイには正解が分からない。自分よりはよほど交友関係の広い彼が言うのであれば、それが正しいように感じた。それにそもそも二人掛けが一方方向に並んでいる車両だから、座席をわざわざ覗き込まなければ見える事もないだろう。マヨイは少し安心して、巽の手を握り返した。

     
     電車は緩やかに都会を抜け、トンネルをくぐり、田園がちらほら広がるようなのどかな場所を走る。黄色く色づいた稲穂が波のようにさざめいて、一帯がまるで海のようだった。
    「少し郊外に出るだけでも、こんな風に穏やかな景色が広がってるんですねえ」
     物珍しさに外ばかり眺めていると、ふいに巽が顔を寄せてきた。
    「ヒィッ」
    「ああ、すみません。驚かすつもりはなかったんですが、あれが俺の通ってた小学校です。線路沿いにあったのを思い出しまして」
     巽が指をさした方向に、確かにこじんまりとした小学校の校舎とグラウンドが見える。田畑の中にぽつりとあって見つけやすい。土曜で学校が休みなのだろう、校舎に人気はなさそうだ。時代が違えば、ここに通っている巽がいたのだと思うと、少しだけ不思議な気持ちになる。
    「着きましたよ。降りましょう」
     やがて止まった電車から手を引かれたまま降り立つと、ホームにまばらに人が立っているだけののどかな駅だった。
    「駅からちょっと歩くので……俺としては車でも良かったんですが」
    「巽さんだけにわざわざ帰らせるのも申し訳ないですから」
     本当はもっと別の事情があるが、そこをつつくのも野暮なのでやんわりと別の言い訳をする。
    「丁度駅前にスーパーがありますし、飲み物とか食べ物を買ってしまいましょうか」
     巽が指さした方向に大きな店があった。コンビニエンスストアがそこかしこにあるような雰囲気でもないし、きっとまとめて色々買ってしまった方がいいだろう。やたら広々とした駐車場を後目に、スーパーに二人で入っていく。
    「まだまだ暑いですし、さっぱりしたものがいいですねぇ」
     店内も都内のスーパーに比べると天井も通路も随分広い。残暑のきつい外と違ってしっかりとクーラーが効いていて、天国に思える。
    「あの巽さん、私ゼリー探してきてもいいですか?」
    「ええ、かまいませんよ」
     広いスーパーというのはESの敷地からほぼ出る事のないマヨイにとっては新鮮な場所だった。うろうろと店の中を歩き回って冷蔵のスイーツコーナーにたどり着くと、これまた見た事ないメーカーのゼリーが並んでいて、どれにしようかと迷ってしまう。どうやらこの辺の農協で作っているらしい。大き目の果肉がごろごろと入っていて美味しそうだ。
    「ううん、悩ましいですね……」
     いくつか買って、二人で食べたいものをその場で考えてもいい。1つ、2つと手に取ってから、巽の事を考えてマヨイはさらにいくつか腕に抱えて、野菜売り場で野菜を物色している巽の傍に戻った。
    「随分たくさん持ってきましたね」
    「巽さんと二人で食べたいものを選んでいるうちについ」
     言われてみれば随分量が増えてしまった気もする。やはり減らそうかと手を迷わせるマヨイから巽がゼリーを受け取ってかごの中に増やした。
    「二人ならこれくらい食べられるでしょう。明日もありますし」
    「そ、そうですね」
     巽にそんなつもりがなくとも、泊まるのだという事を改めて示唆されてしまって、マヨイは頬を赤くした。巽はといえば、大きな黄色い瓜のようなものを抱えている。
    「そうめんカボチャです。地元の農家の方が出荷してくれているようですね。野菜なんですけど、麺みたいに食べれるので、夕飯にいかがでしょう」
    「初めて見ました、麺みたいにってのは想像つかないんですけど……さっぱりしてるなら良さそうです」
     合意がとれたと巽がかごの中に黄色い瓜を入れる。
    「マヨイさん、他に何か食べたいものはありますか?」
     またもやさり気なく手を繋がれるが少し慣れてきたのもあって、マヨイはおずおずと握り返した。温かい手が心地よい。
    「ええっとぉ、そうですねぇ」
     思案していると、巽がにこにことこちらを見つめてくる視線に気が付く。
    「あんまり見ないでください……」
     気恥ずかしさに目をそらすと、愛らしくてつい、という言葉で追っかけられてますます巽の方を見られなくなってしまった。


     色々と買い込んでスーパーを後にする。手ぶらなので、と荷物を全て持とうとする巽から無理やり1つ袋を奪って、二人で舗装の悪い道路を歩いていく。駅前から少し歩いていくと、あっという間に景色に緑が増え、道も登り道になってきた。道なりに家は立ち並んでいるので、住宅地ではあるがお店の類はあまり見当たらない。やはりあの駅前のスーパーがこの辺りに住む人の生命線なのだろう。
     初秋の時節ではあるがまだまだ日差しが強い。じっとりと額に汗を浮かべながら、少しずつ狭くなってきた道をさらに進むと、古びた長屋のような建物に行き当たった。木造建築の木目が長い年月をかけて黒くなっている。その木造建築を取り囲むようにぐるりと低い石垣が連なっていて、長い年月をかけて蔦がまきついてカーテンのように緑の葉を広げていた。表札に『風早』と記載がある。巽の実家というのがここらしい。
    「随分年季が入った家なんですねぇ」
     他人の家にあがりこむなんて事をした事もないので比べるべくもないが、これに比べれば旧星奏館でも断然綺麗な方なのだろう。
    「表の方に教会がありますよ。こちらは裏手なのであまり改築もしてないんです、そもそも両親が家に無頓着な方でして」
     なるほど家の裏手には背の高い白い壁の建物が見える。あちらもそれなりに年季は入っていそうだが、こちらの木造建築に比べるとまだ築年数は浅いようだった。
     胸のあたりまでしかない黒い蔦が絡み合ったようなゴシックデザインの門扉は、この古い日本家屋のような木造建築に似合わずそこだけは洋風の作りになっている。巽が手を伸ばして内側の金具を外すと、キィと軋んだ音を立てて扉が開いた。
    「こちらへ」
     そのまま石畳を歩いていく巽の後を追う前に、マヨイは振り返って門扉を戸締りしておく。玄関に続く石畳の左右にはなるほど色々なプランターが並んでいて、色とりどりの花が咲き乱れている。
    「コスモス、リンドウ……この赤い花は……」
    「サルビアという花のようですな。先週帰ってきた時に母親からそう教わりました」
    「確かに、このお花たちを枯らしてしまうわけにはいきませんね」
     ご両親がわざわざ息子を呼び出すほどの事はある。巽の物言いからすると、割と実家に帰ってくる機会は多いのだろうか。
    「こちらはまだましな方です。表の教会の方はもっと多いですよ、こちらに植えてあるのは表で余った残りです。さ、入ってきてください」
    「お邪魔しまぁす……」
     昔の日本家屋らしく引き戸になっている扉を巽が引くと、がらがらとドアの滑車が音を立てた。招かれて中にそろりと足を踏み入れると、膝の高さまであるような高い床の玄関に出迎えられる。昔の人たちは玄関に座って履物を履く習慣があったと聞くが、こういう玄関はまさにそういう動作を想定して作られているのかもしれない、とマヨイは感心しながら自分の靴を脱いだ。室内は静かで、少しカビた匂いがするが、新しい建築材の匂いがしない分、心地よさがある匂いだとマヨイは緊張を解く。床を踏むと、ぎしりと床が鳴いた。
    「台所はこっちです」
     導かれるままに長い廊下を曲がると行き当たりの部屋の入口に暖簾のようなものがあり、それをめくると三畳ほどの狭い部屋に冷蔵庫やコンロが並んでいる。中央には机が置いてあり、この狭い空間で料理も食事もこなしていたのであろう様子がうかがえた。机の上に手早く材料を並べていく巽にならって、マヨイもスーパーの袋から買ってきたものを取り出していく。
    「ゼリーはぬるくなってしまう前に冷蔵庫へ入れてしまいましょうか」
     古い家屋の中でも比較的電化製品は新しいものが多いようで、くすんだ銀のシンクの傍に綺麗な食洗器が置いてあった。冷蔵庫もそこそこに綺麗で大きいものが備え付けてある。マヨイは邪魔にならないようにと気を使いながら、ゼリーを冷蔵庫に並べ終えて扉を閉じた。途端に背後から急に抱きしめられて、マヨイは悲鳴を上げる羽目になってしまった。
     振り返るとすぐそばに巽の顔がある。眉間にしわを寄せて切羽詰まった顔をしている、と慌てふためく思考の片隅で、なぜか落ち着き払って分析もしていた。焦りが限界に到達すると逆に冷静になれるのかもしれないですね、などと考えている間に巽が目を瞑った。肩を強く掴まれたかと思うと、体をぐるりと正面に回されて、背中にひたりと冷蔵庫の扉があたる。つられて目を閉じると、唇に柔らかい感触が触れた。
    「っ……」
     体に緊張が走る、どうすればいいのでしょうか私は、などとマヨイが硬直したままオロオロとしていると、さらにぬるりと濡れた感触が唇を伝う。それが一体何なのかを確かめようと考えるより前に口を開けると、巽の舌が自身の口を割りいるように滑り込んできた。
    「あ、ふひゃ……」
     キスされている、という事実を捉える思考と、ついにキスをしてしまいましたという感想めいた思考が、舌で丁寧に溶かされていく。間抜けな声を出してしまったけれど、ちょっと引いたりされてないだろうか、などと余計な事が気になってしまってマヨイはいまだ硬直したまま何も出来ないでいた。巽の舌がゆっくりと歯列をなぞって自分の舌をすくいあげる。体の芯に直に触れられているようで怖くて、でも巽の熱が心地よくて気持ちいい。恐る恐る舌を出すと、裏側をくすぐるようになぞられて体が震えた。かちり、とお互いの歯がぶつかってしまったが、巽は臆せず咥内に舌を差し込んでくる。口の中にたまる唾液をどうすればいいのか分からないでいると、ついに口の端から溢れてしまった。
    (ああ、はしたない……巽さんが幻滅してしまわないでしょうか)
     キスを重ねていく中で慣れてきたらしい、少しだけ硬直から解き放たれて、思考も体も動き始める。先ほどからマヨイの腰のあたりに何かぶつかっているのが気になって目を瞑ったまま手を伸ばすと、巽が急に顔を離した。
    「マヨイさんっ急にそこを、触らないで下さい……」
     珍しくよろめいた声音を出す巽の顔が耳まで真っ赤になっている。一体自分は何をしてしまったのだろうとふと下を見て、マヨイはヒィッと声をあげてしまった。
    「すすすすみませんっ私ったら巽さんのおちんちんを……」
     そこまで言いかけて自分がさらに墓穴を掘ってしまった事を悟り、マヨイは、ああいえそのと慌てて言葉を濁しながら、綺麗なテント状態になっている巽のスラックスから手を離す。しん、と気まずい空気になってしまった。巽は顔を片手で覆って黙りこくっている。
    「あのぉ……巽さんにも性欲、あったんですね」
     数日前に思い悩んでいた答えを知れて、マヨイはほろりと感想を述べた。
    「それは……普通に俺にもありますし、なかったらここにあなただけを連れてこないです」
     こうなってしまったのは彼にとっても予想外だったのかもしれない。マヨイを直視出来ないようで、目線は台所の床をうろうろと泳いでいる。マヨイの中でさらに風早巽が何をするつもりだったのか、というパズルのピースがはまったところで、巽がくるりと背を向けた。
    「かっこ悪いところを見せてしまってすみません。ちょっとこれをどうにかしてくるので」
     その場を離れようとする巽の腕を、マヨイは咄嗟に掴んだ。
    「待って下さい、巽さん」
     自分でもその言い方はどうなんだ、とマヨイは後程反省をしたが、今はそういう常識的思考よりも先に欲望が唇から零れた。
    「勿体ないです」
    「えっ」
     巽が困惑した表情を見せるのも構わず、マヨイはさらに言葉を紡いだ。
    「巽さんのその欲を、私に下さい」
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    tsr169

    MEMOアラサーくらいのこじれたタイプの巽マヨ いかがわしい雰囲気はあるけどまだ何もしてない 腸内洗浄描写を書くか書かないか決めたら続きを書いて支部に入れます。アルカメン各自モブと付き合ってるあるいは付き合っていた描写があります。
    感作性の愛 あの日に浴びた愛の囁きも、熱も、何もかも全てが毒だった。熱っぽい体を密着させられて、初めてそれに気が付く。
     過剰に反応した体の奥底から一気に噴出してきた熱の塊に、私は息を呑んだ。目の前で彼は日頃の聖職者然とした微笑みを剥がして、ほのかな影を帯びたまま微笑んでいた。
    「俺の事を何とも思ってないのなら、出来ますよね?」
     そう言われて、出来ないなんて言えなかった。否定する事はそこに情がある事を認めてしまうからだ。だんだんと近づいてくる顔をどうにか拒否したいと思うのに体が動かない。唇に温かい皮膚が触れた瞬間に漏れた吐息はすっかり熱を帯びていた。


    「タッツン先輩の引っ越しを祝って……乾杯~っ」
     藍良さんの元気いっぱいのコールに各々の飲み物をテーブルの中心でぶつけ合う。一彩さんはビール缶、藍良さんは甘い目のカクテルの缶、私と巽さんは丁度巽さんが撮影現場で貰ったというウィスキーをジンジャーエールで割って、ライムを切って入れたものを手にしていた。一口飲むと辛い目のジンジャーエールが口の中で弾ける。
    9410

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