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    tsr169

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    tsr169

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    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21262102
    書き終わったので、上記にアップしています。
    ぽちぽち押してもらってめっちゃ活力になりました!!!ありがとうございます。

    オメガバース巽マヨの続きラジオネーム、はっぴーさんからです。『こんばんは、毎週この番組を楽しみにしています』ふふ、ありがとうございます。『今年の風早くんのクリスマスの予定は何をされますか? 私は彼氏と初めてお泊りで温泉に行くので、どきどきです。緊張して変な事をしてしまわないか、今から心配です』おや、旅行ですか。いいですね。
     俺の予定は……そうですね、たしかクリスマスは休みなんですけど、直前まで長期で地方に出かける仕事がありますから、帰ってきたら家でゆっくりしているかもしれません。予定が空いていれば実家に戻ったりもするんですけど、今年はそれも難しそうです。
     はっぴーさんは緊張してしまわないか心配ということですが、緊張しても失敗しても、恋人のそういう面って相手からすれば可愛らしく見えると思いますから。はっぴーさんは緊張し過ぎず……というのも難しいかもしれませんけど、楽しいお泊まりにして下さいね。またどうだったか、ぜひお便りで教えて下さい。
     もう一通いきましょう、ラジオネーム、クリームメロンさんからです。ああ、せっかくですから本日のゲストのマヨイさんに読んでもらいましょう。はい、マヨイさん。どうぞ。


    ***


     カフボックスのボタンを下げマイクをオフにすると、マヨイは一息ついた。向かいでは同じように収録を終えたばかりの巽がマイクのスイッチをオフにする。
    「私の声、きもくなかったか心配ですけど……」
     懸念事項を伝えると、巽は瞬きした。
    「まさか。愛らしいと思いながら聞いていましたよ」
    「ヒィ……巽さんの感性はちょっと独特ですから……」
     少なくとも巽の方が声のトーンは上だと思っている。比して、地を這うような低い声でぼそぼそと喋ってしまう自分の声をそう言われても、まったくピンとこない。ラジオのような媒体では特に声が全てだ。巽の聞き取りやすい柔らかな声質はラジオ向きだなあなどとしみじみ聞いていたところだった。
     そんな会話を交わしつつ、巽は台本を片付けラジオブースの外のスタッフへ頭を下げると、席を立った。マヨイも連なるよう一礼をしてから座席を立つ。そこからは巽が一通りスタッフと次のラジオの収録の打ち合わせを手短に行っているのを眺めながら、上着を羽織り、手持ち無沙汰を紛らわすためにスマホを開く。ニュースサイトのトップに今年のイルミネーションの特集が煌びやかな写真と共に掲載されていた。


     ラジオの仕事を終え、二人で並んでESビルの外へ出る。冷え切った寒空の下、巽の吐く息が街灯に照らされて濁った。街路樹には今の時期だけ綺麗なイルミネーションが施されていて、いつもの夜の街よりずいぶんと明るい。このあたりは特集記事にはなっていなかったが、それでもクリスマスらしさが街を色濃く彩っていた。
    「すっかりクリスマスの空気ですぅ」
     ただの帰路だが、恋人と二人で光の下をくぐるのは、プチデート気分だった。
    「地方の撮影が入ってなければ、俺もお泊まり旅行とか行きたかったです」
     ラジオの収録の事を思い出したのか、ぽつりと巽がそんな事を言う。地方ロケをユニットで請け負う事もあるので、何かと出かけているような……とマヨイは思いかけて、巽が言いたい事はそういうことではないのだ、と言葉を飲み込む。
    「巽さん、最近ずっとドラマの撮影続いてますもんねえ」
     ユニット結成から早5年。最近は随分各々のソロの仕事も増えてきた。秋に全国ツアーライブを終え、毎年恒例のSSに出場したのが先日だ。この後、年末のカウントダウンライブまでユニットメンバーが揃っての仕事もない。今日も朝に顔を合わせはしたものの、巽は雑誌の連載の写真撮影とインタビューをこなすために家を飛び出していき、マヨイは昼からスタプロの後輩のレッスン指導があり、このラジオのゲスト出演という形でようやく夕方に合流したばかりだった。
    「仕事があるのはありがたい事ではあるんですが……」
     白くぼやけた吐息は言外に疲れが滲んでいる。マヨイよりも外に出る仕事が増えている巽の方がよほど気を張る機会が多いのだろう。
    「帰ったら、お風呂に入ってゆっくり疲れを取りましょうね」
     最近お気に入りの入浴剤を入れて、彼がほっと一息つければいい。そのくらいの感覚で発言したのに、巽は「マヨイさんも一緒にですか?」などと聞いてくる。そうなのだ。この後帰る先は、住み慣れた星奏館ではない。場所はさほど離れていないものの、新築のマンションを一部屋、巽が購入したのだ。つい最近、全国ツアーが終わったタイミングで、二人で寮を出て住み始めたばかりの新居になる。
    「だ、駄目ですっ……巽さん、洗浄したがるのでぇっ」
     寮に住んでいる時は個別のシャワーブースだった事もあり、一人で済ませていた事が同棲するともなるとそうもいかない。何度かなし崩しに腸内洗浄を巽にされてしまったが、マヨイとしては余りにも恥ずかしいので、一緒に入りたがる巽を最近は断る事にしていた。排泄に近い作業を何故彼が好んでやりたがるのかはマヨイとしてはまったく理解出来ないが、何かと尽くす事が好きな彼の性格の一端なのかもしれない。
    「マヨイさんが嫌がることは、何もしませんから」
     駄目ですか? と潤んだ目で見つめてくる巽の表情は百点満点だ。アイドルとしての経験値がそもそも違い過ぎるが、ここ数年演技の世界に身を置く事が多い彼の作り上げる表情は、あまりにも完璧である。ぐらつく意思を叱咤し、マヨイは首を横に振る。クリスマスまで約2週間。明日から泊まりのロケに行く巽の事を考えると、二人でゆっくりと過ごせる夜は今日が最後だ。となると、夜にはきっと一緒のベッドで眠るのだろう。避けて通れない洗浄作業を、彼がせずとも彼の目の前でやる勇気はない。
    「マヨイさんが甘やかしてくれないです」
     むう、と眉をひそめる巽は、珍しく子供っぽい。付き合うようになっても基本的にはマヨイをリードし続けてくれる彼も、時折そんな顔をする事がある。
    「そ、そんな事よりぃっ……クリスマスは帰ってこれるんですよね?」
     このままだとまた流されそうな空気を断ち切って、マヨイは話題の矛先を変えた。
    「イブの昼くらいまではロケのスケジュールが入ってるんですけど、進行が問題なく進めばイブの夜には帰ってこれそうです」
    「でしたら、何かクリスマスらしいご飯を作るのも良いかもしれません」
     藍良と一彩はセットで生放送の特番に呼ばれているはずだから、二人だけのこじんまりとしたお祝いをしながらテレビ越しに仲間を見るのもいいかもしれない。
    「二人で過ごすのもいいですな。星奏館に居た頃でしたら、何かと皆さんで集まってお祝いしていましたし。ちなみに、マヨイさんは何か欲しいものとかありますか?」
    「そうですねぇ。欲しいもの……」
     心の中でちらついた願いに、マヨイは口をつぐんだ。不意に口から零れそうになった言葉を、心の中で反芻する。言ってしまって良いのだろうか。立場や仕事の事を考えても、本当にいいのだろうか。
    「その様子だと、何かありそうですね」
     巽は聡い。マヨイの言葉に続きがある事をあっさりと見抜く。
    「あの、もうじき多分発情期なんですぅ……それで、その……巽さんとの……赤ちゃん、そろそろ考えたくて」
     隠しきれないとあきらめて、マヨイは素直に打ち明けた。いざ言葉にしてみると、どうしようもなく恥ずかしくて照れくさくて、顔が火照る。巽はどう思っているのだろう。
    「ああ、なるほど……」
     巽もそれきり黙ってしまうので、なんだか気まずくて視線だけで巽を見ると、薄暗がりでも分かりやすく彼も耳まで赤くしていた。
    「……何人か、きちんとお話をしないといけない方がいますけど」
     街の雑踏と自分たちの靴音だけの時間を過ごしてから、数分。ようやく巽が口を開く。
    「俺もそろそろ、と思っていましたから。嬉しくて、ちょっと言葉が上手く出てこないです」
     表情を取り繕わずに困ったような顔で眉尻を下げて微笑んだ巽に、マヨイもつられて笑みをこぼした。それきり会話は途切れてしまったが、巽がマヨイの手を握る強さがいつもよりも強くて、マヨイはそれだけでも幸せだった。


     自身の性の特性を長らく知らずに過ごしてきて、地上に這い出た途端暴発したその性の本能は、今となってみると、ものすごい確率で運命の番を引き当てたのだとマヨイは思っている。あの日、オメガバースの性質を説明してくれた巽は、途方に暮れた顔をしながらも決して自分を捨てる事はしなかった。愛玩対象として自分より可愛いものを愛でる事をしてこなかったが、右も左も分からない世間の荒波の中、確かに足がすくんでしまうような場面でも傍に居て、護り導いてくれた彼に対して、情も信頼も自然に育っていった。頼りになるユニットメンバーと共に、隣に信頼出来るパートナーがいた事が、アイドルとしても、礼瀬マヨイとしても、成長出来た事に繋がっているように思う。
     それなりに世間で認知度も高まってきた過程で、マヨイ自身の技術や経験値がES内でも他の後発のアイドルループへの指導者として請われるようになってきて、数年が経つ。今なら例えば少しの間、表に出る事がなくても、仕事をやっていけるのではないか、という算段は実は少し前からマヨイの中では思い描いていた事だった。
     巽の言う『話をしないといけない』人たちというのは、勿論スタプロの責任者である天祥院英智であり、同じユニットメンバーの仲間たちであり、P機関として自分たちの仕事の舵を取ってくれているプロデューサーだろう。迷惑をかけるつもりは毛頭ないので、誰か一人でも反対すれば、この話はまた二人の胸にしまっておこうと心に決めている。


     そう思っていたが、次の日の朝には、朝食を食べながら巽が「各方面問題なさそうでしたので、次の発情期で頑張りましょう」などと言い出したので、マヨイは焼き上げたトーストをうっかり落としかけた。
    「は、早いですねえ……⁉」
     見れば巽はマヨイがうとうとと微睡んでいる朝の間に、ホールハンズでさくさくと各所へ連絡を送ったようだ。藍良と一彩からは絵文字付きで応援をする内容、英智とプロデューサーからは、実はそれを見越してスケジュールを調整できるように組んでいた事が書いてある内容の返事が記載されている。相変わらずの辣腕だ。
    「そういえば来年は毎年行っていたユニットのツアーもなかったような……」
    「実はそこは、俺のせいかもしれないんですが」
     マヨイよりも先に食べ終えた巽が、食後のコーヒーを一口飲みながら、そんな事を言う。
    「今年のツアーの前に、英智さんに一度この話をしていたんです」
    「巽さんが?」
    「はい。同棲を始めるために退館の報告をしに行った時、英智さんにこの件を突っ込まれたんです。近いうちには、とその時に俺が答えていたので、それででしょう」
     実はマヨイの心の中だけのつもりだった算段は、思っていた以上に周囲も察知していたようだった。何よりはにかむ巽本人がそのつもりだった事を知り、マヨイは照れくささを隠すために慌ててトーストを頬張る。
    「さて、俺は出かけますが。その前にこれを」
     巽が指をさした机の上には、ホイルでぐるりと丁寧にまかれた塊がある。
    「これは……?」
    「昨日、マヨイさんが入浴されている間にちょっと作ってみました。シュトーレンというクリスマスのお菓子です。先ほど粉糖をまぶして仕上げたばかりですから、まだ味が落ち着いていないとは思いますが」
     昨晩は確かに風呂からあがると、巽がキッチンで何やら生地をこねているのを見た。
    「真ん中から少しずつ切り取りながら、クリスマスの日まで一切れずつ食べていって、味の変化を楽しんで下さい。本当は一緒にホリデーシーズンを楽しみたかったんですが、仕事があるのでそうも言ってられませんから」
    「巽さん、お忙しいのにわざわざこんなものを……?」
    「ああいえ、こういうのは俺の趣味というか。むしろ、旅支度の息抜きに作っていたような感じです」
     パン屋なんかで陳列されているものを見かけた事はあるが、手に取った事はなかったので、マヨイにはこれがどういうお菓子なのかはピンとは来ない。大きさからすると、クッキーというよりはこぶりなパウンドケーキ、という様子だ。
    「一緒に毎日飲めるよう紅茶の茶葉も準備してみたので、良かったらこちらも。こちらは来年のコラボ企画の相談の際にあれこれブレンドしながら作らせてもらったもので、外には出ていないのですが、味は俺が保証します」
     フレイヴァーでのサークル活動も以前はこじんまりとティーサロンを開いていただけだったものが、英智の戦略で動画企画となり、そこからはさらに外へ出るようになり、最近ではESアイドルと紅茶の茶葉のブランドとのコラボ展開も行っている。時折、巽がお店へ出向いて試飲やブレンドの手伝いなんかもしているようだった。シュトーレンの横には、紙のギフトボックスの箱に並べられて日付の記された簡素なティーバックの袋が順番に挿してある。日付の順番に飲んで欲しいということなのだろう。
    「なんというか、もうこれだけですっかり贅沢なクリスマスプレゼントのようになっていますが……」
     彼の趣向が詰まったブレンドの茶葉を、自分なんかが独り占めしてしまってもよいのだろうか。まだ二人の関係は外へは出していないものの、うっかりバレる事があろうものならファンに叱られてしまいそうだ。
    「ふふ、俺の趣味全開で申し訳ないかなと思っていましたが、そう言っていただけるならよかったです。せっかく同棲を始めたというのにマヨイさんに寂しい思いをさせたくなくて、あれこれ準備してしまいました」
     それからの巽は慌ただしく支度を整え、出かける前に軽くマヨイとハグをすませてから、キャリーケースを引いて出ていった。一人で静かになった部屋はやけに広く感じる。
    「さて、何から始めましょうか」
     呟きながらマヨイはまずは体温を確認すべく、体温計を取り出す。そろそろだというのは何となくの体感で、不規則に発情期が訪れる自分の体は、ちゃんとクリスマスイブまでに整えられるのだろうか。体温は平熱を指し示していた。発情期になると、この体温が少し高くなる事が分かっているので、まだだという事は確認出来た。
     巽が自分のために、色々と準備をしてくれていたのだ。今度は自分が彼のために頑張りたい。帰ってくる彼を、準備万全で出迎えてあげたい。そうして巽が喜んでくれれば、少しはこのお返しが出来るかもしれない。元は自分の願い事から始まったが、巽が望んでくれていると分かった今、マヨイの心は決まっていた。
    「絶対に、巽さんが帰ってくるまでに発情期を迎えてみせますよぉっ」
     こぶしを握り締め、決意を固める。ひとしきり一人で盛り上がったあと、とりあえずマヨイは『発情期』『来させる方法』などとスマホを開いていそいそと検索を始めるのだった。


    多分続きます
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    Replies from the creator

    tsr169

    MEMOアラサーくらいのこじれたタイプの巽マヨ いかがわしい雰囲気はあるけどまだ何もしてない 腸内洗浄描写を書くか書かないか決めたら続きを書いて支部に入れます。アルカメン各自モブと付き合ってるあるいは付き合っていた描写があります。
    感作性の愛 あの日に浴びた愛の囁きも、熱も、何もかも全てが毒だった。熱っぽい体を密着させられて、初めてそれに気が付く。
     過剰に反応した体の奥底から一気に噴出してきた熱の塊に、私は息を呑んだ。目の前で彼は日頃の聖職者然とした微笑みを剥がして、ほのかな影を帯びたまま微笑んでいた。
    「俺の事を何とも思ってないのなら、出来ますよね?」
     そう言われて、出来ないなんて言えなかった。否定する事はそこに情がある事を認めてしまうからだ。だんだんと近づいてくる顔をどうにか拒否したいと思うのに体が動かない。唇に温かい皮膚が触れた瞬間に漏れた吐息はすっかり熱を帯びていた。


    「タッツン先輩の引っ越しを祝って……乾杯~っ」
     藍良さんの元気いっぱいのコールに各々の飲み物をテーブルの中心でぶつけ合う。一彩さんはビール缶、藍良さんは甘い目のカクテルの缶、私と巽さんは丁度巽さんが撮影現場で貰ったというウィスキーをジンジャーエールで割って、ライムを切って入れたものを手にしていた。一口飲むと辛い目のジンジャーエールが口の中で弾ける。
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