生まれて初めて 昨夜、万民堂で夕餉を共にした行秋と翌日の仕込みの合間に顔を出した香菱とで、明日に控えた重雲の誕生日会について話していた。
ふた月前に開催された胡桃の誕生日会。このひと際癖の強い往生堂七十七代目堂主と、行秋同様仲の良い重雲も招待されたのだが、自身の体質の所為で折角の祝いの席が台無しになることを恐れ、参加を辞退しようとしていた。
しかしその申し出を予め予測していた胡桃に「来てくれないと末代まで恨むわよ」とドスの効いた声で脅され、誕生日会当日になって彼女に寝返った行秋が助力したこともあり容易く見つかってしまう。
土煙と共に全速力で迫り来る胡桃の形相に戦慄し思わず逃げてしまったものの、動きの素早いキョンシー少女を追いかけ回している内に鍛えられたらしい彼女の俊足に結局は負けてしまい、漸く面子が揃ったと至極ご満悦な様子の七十七代目に半ば引き摺られる形で参加させられた。
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