エルベ誕 2nd「なぁ、オリックスさんはさ、フマナ博士のことについて、何か知らないのか」
ヌビア学研究所、第3会議室。防音に優れたこの部屋の中にいるのは、私と、エルベだけだった。
エルベは私に誘われるままにその部屋に入ると、パイプ椅子に座ってぼんやりと壁を見つめていた。それから放ったのが、先の一言だった。
「フマナ博士」
私は、それだけ鸚鵡返しをする。エルベは、こっくり頷いた。
「前に研究の予定を知らされた時は、誕生日前後も馬鹿みてぇに実験入れやがって…、って思ってたんだ。それが、21日のを最後に、急に全キャンセルになったんだよ。だから、変だなと思って。聞いてみたら、いなくなった、って…」
エルベは、何かを考えているのだろうか。遠くを見ながら、ぼんやりと呟く。【プレ・ヌビア】である自分には、【優しさ】のように相手の希望を尽く聞き取る力は無い。故に、彼が求めている返答をすぐに出すことはできない。
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