茶会バトル「なあドゥドゥー。この紅茶、何か・・・・・・」
「お口に合いませんでしたか、陛下」
「いや良い香りだ。しかし、上手く言えないんだが、何か引っかかるというか」
執務の休憩にと侍女に勧められた紅茶を飲んでいたディミトリは言葉を選びながら従者の方を見た。ドゥドゥーは強面を一瞬怪訝そうに顰めたが、すぐに困ったように眉を下げる。主君の言う引っかかりはドゥドゥーも僅かに感じていたものだった。
ドゥドゥーがディミトリと同じものを食すことは士官学校を出て国王の座についてから殆ど無い。毒味か、時折深夜、友人同士の顔になって開かれる茶会か晩酌か分からないような席か、とにかくその程度のもので、今回も主君と同じ紅茶を彼も飲んだわけではなかった。しかし、とドゥドゥーは心持ち深い呼吸をする。カミツレの茶葉の香り高い芳香は紅茶の中でも指折りと言える。茶に疎いドゥドゥーにとってもその芳しい香りは確かに感じ取れたが、同時に違和感があった。胸を満たすのは言い得ぬ懐かしさであり、しかしそれは不思議と虚しさを掻き立てた。
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