たぶん古代の儀式では複数人で和していただろう歌を、あの女生徒はひとりで歌っている。それだというのにその力はやけに——揺さぶる。
●今ここで何人もの術師が声を束ねるのでなく、数百年かけて幾人もの術師に歌い継がれたという積み重ねが引き出す力
・歌っているのは彼女ひとりなのに別の高い声も聞こえることがある(天使の声、倍音)。それがひとりであっても〝今ここ〟で声を重ね力を重ねることを可能にする
●文字文化が浸透する前の、まじない的な歌謡の時代の名残りみたいな歌を想定してみる
・筆写されず、発音を受け継いでいる。聞けば、どのカナを当てるかは分かるけど、発音の並びが意味するところは読解できない。正倉院仮名文書みたいな
・平安時代にルーツがあるっぽい御三家どころでない歴史を誇りかねないのがネック。個人的にしっくりこない
・庶民の中で謡われた草の根呪術(?)だから、古い半面、都の魑魅魍魎を相手にするような呪術師のプロ呪術に比べたら格はいくらか落ちる、みたいな説明……説明できてなくない????
・自然崇拝的なやつ。俺たちのムラを助けてくださいカミさまと、苦境を打破しうる自然に窮状を訴えるような、今まさに牙をむいている自然に助命を嘆願するような。〝のろい〟というより〝まじない〟寄り? ただ、例えば恵みの雨を受けたとしてその雨雲が本来潤すはずだった田畑は枯れ、豪雨を退けたとしてその豪雨は他のムラをのみこむものだ、という思想があれば、それは〝のろい〟かな
(22.05.23 17:46)