「愛ほど歪んだ呪いはないよ」(0巻1話) これ、割と夏油傑なのでは、という話です。
2年春時点で呪術師(持てる者)の一人として、持たざる人々を守るべく弱者生存を唱えていた夏油くん。その後の星漿体任務は、彼に大きな大きな重石を与えました。知っていると思っていたけど、分かってはいなかった現実。
>祓う 取り込む 誰のために?(9巻76話)
果たして、夏油傑は非術師の「弱者ゆえの醜さ」を見下し、呪専から離反して呪詛師に身を堕とすことを選ぶに至ります。
背を向けた呪専は彼にとって、𠮟ってくれる恩師がいて、慕ってくれる後輩がいて、背中を預けられる友人がいる場所だったはずで、0巻でも「憎かったわけじゃない」としています。その彼がマラソンゲームの果てに描いていたのは、死屍累々となった仲間の姿です。先の「誰のために?」という自問にそれまで通り〝非術師のために〟と答えた場合、その先で仲間たちは悲惨な末路をたどるのだと。
>誰がなんと言おうと非術師は嫌いだ(0巻最終話)
>ただこの世界では 私は心の底から笑えなかった(同)
>かなり(注:性格が変わった)。あれからずっと自分に「非術師は嫌い」と言い聞かせてきましたから。(FB p.73)
夏油傑が何を思って笑えなかったのか考えると、自分の読みとしては「仲間の屍の山」なんですよね。非術師たちに搾取される術師という構図。彼はそれを思うと笑えなかった。あけすけに言うと、夏油傑は仲間たちの心身の犠牲を嘆いていた。彼らを踏みにじる足を許せなかった。
最悪の呪詛師・夏油傑は、仲間たちを想う心の、極端な姿だったのでは。
彼のしたことは、世界にとっては紛うことなき呪いであり、さらに言えば彼自身をも縛るものでした。しかし術師への愛が歪んだ形で表れたものであったとも思ってしまうわけです。
ただ、夏油傑のそういう背景を0巻1話時点での五条悟が知ってたかどうかを考えると、発言した五条悟の意図がそこにあったとは限らないな〜〜!!ってなるんですけどね!!!! 新宿のやりとりとか「イカレた思想を(略)」とか、選民という手段しか把握できてない可能性が否めないというか……まあ私の読みが浅い可能性もまた否定できないんですけども……。
どうして、ってのは、ずっと考えてただろうな。
(22.06.29 03:13)