Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    ナツメ

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 25

    ナツメ

    ☆quiet follow

    遙か2
    現代エンド後の翡翠×花梨

    夜の海夜の海へ行きませんか。そう誘ったのは花梨のほうだった。京の暗闇を恐れていた彼女はしかし、こちらの世界の夜の明るさには恐怖を感じてはいないようだった。久方ぶりに潮風を浴びながら、翡翠は思う。
    翡翠はといえば、こちらの世界にやってきてすぐ、夜が夏のように短く、どこも明るいこの世界に辟易した。昔どこかの別当が、夜の間も灯りをともしつづけたらどうか、とことあるごとに提案していたが、翡翠はやはり、首を横に降り続けるだろう。夜の間も灯りをともしつづけたら、眠りが浅くなるだけではないか。眠りとはすなわち、休息である。昼も夜も、京では考えられないほど──否、京の貴族には考えられないほど──こちらの世界の民は働いている。夜釣りに勤しむ漁船もそうだ。そんなに働いては寿命が縮む、と思いたいところだが、食べるものがよいのか、こちらの世界の寿命はあちらの世界の三倍はある。まったくどうなっているのやら。
    だが、花梨があちらの一条の光であったのは、この明るい、死から遠い世界からやってきたからだ、というのは素直に頷ける。
    ちょうど、その花梨のような橙色の灯りが、海上を皓々と照らしている。これを見に来たのか、と思いながら、翡翠は花梨がふたたびのもとへ行かないように、しっかりと抱え直す。
    「もうそんな力、ありませんよ」
    翡翠の腕の中で、窮屈そうにしている花梨が笑う。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works