猫と泰継さん 庭に出ると、泰継さんが猫に話しかけていた。
「神子を知らないか」
猫を抱き上げたと思ったら、目線を合わせて、鼻をつきあわせて、まじめな顔でそんなことを聞いている。なんとなく、泰継さんは猫とも会話ができそうだなとは思うけど、まさかその現場に居合わせることになるなんて。思わず隠れて見守る。わけもなく、どきどきする。
「にゃあ」
「そうか……」
その返答にまさか、と思っていると泰継さんがこちらを向いた。猫が私の足元に駆け寄ってくる。
「泰継さん、猫の言葉がわかるんですか?」
「わかるわけがない」
「ええっ」
一度しゃがんで、私の足元に頭をこすりつけて懐いていた猫を抱き上げる。だらりと長くなった猫が、にゃあにゃあ鳴く。
「本当に?」
「当たり前だ」
話してるように見えたけどなあ。