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    ナツメ

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    ナツメ

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    神子が京を救ってから一年後、はるに白虎が京で出くわした話
    相変わらず設定もりもりでなんでも許せるかたむけ

    肴は、思い出話で「おや」
    「……なぜ」
    別当殿の眉間に皺が寄った。文でも挟めそうな、秋の京を彩る紅葉のように見事なものだ。
    「伊予の大海賊ともあろう貴方が、なぜ京を闊歩しているのかと聞いているのです」
    まるで尋問のような問いかけに、やれやれと肩をすくめる。久方ぶりに遠路はるばる京にやってきて、さっそく知り合いに出くわしてしまうとは奇妙なものだ。やはり京は狭い。
    「交易だよ。さして珍しくはないだろう? 検非違使別当兼中納言……いや、今は大納言殿だったか」
    「どこでそれを」
    「検非違使別当殿の噂なら、京にいなくても耳に入ってくるよ」
    別当殿の働きぶりは、帝の覚えもめざましく、かつて彼が院と親密だったことも忘れられているのではないか、と邪推するのほどにね、と片目を詰むって見せる。別当殿のため息が聞こえる。
    とはいえ京は変わらず末法の世を嘆いているようだ。院は院でやはり幅を利かせるし、帝と対立することもある。古い風習もまだ多く残り(その証拠に別当殿の荘園はともかく)、庶民たちは変わらず単なる労働力であるよつに。理想と現実の狭間で葛藤しつつも、また顔つきの変わった男を見る。
    「君が周りに疎まれ憎まれながら、京のために働いているのは小気味いいよ。どんどんやりなさい」
    「……自分にできる最大の力を発揮しなくては、あの方に顔向けできませんので」
    「そうだったね」
    冷たくなった風が吹いて、楓の葉が別当殿との間をひらひらと舞う。それは手の内に掴むことは出来ず、かといって我々の近くを見守るように離れず、名残惜しそうに遠くに飛んでいく。
    「今夜の宿は決まっているのですか」
    「いや? 適当に過ごすよ」
    「……今夜、私の館に酒を持ってくるのなら、密輸は見逃しましょう」
    「おや。では、呼ばれようか」
    捕まるのはごめんだし──そう言ってから別当殿の表情を伺うと、すこしだけ眉間の皺は薄れていた。
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