無題「ここは自習室じゃあないのだが?」
本来であればドリンクを置くバーカウンターには、数式だらけのプリントが散らかっている。赤いストローを差したカップの坊やはその上に片頬をつけ、苦悶の表情を浮かべながらうんうんと唸っていた。
かたやカウンター内で呆れた表情を浮かべるのはダイス頭の男。このカジノの支配人であり、我々の上司だ。
「分からないならキミのお友達や家族にでも聞けばいいだろう。こっちはただでさえキミがここに居るのを我慢してやっているのに」
「いっつも手伝ってもらってるよ!でもっ、それがなんか悔しくてっ、今回はみんなの手を借りずにできるって言っちゃって……」
坊やは勢いよく顔を上げて反論したかと思えば、言葉尻はか細くなり、しまいには俯いてしまった。
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