Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    銀鳩堂

    ここには草稿をポイポイあげて、溜まったら整えてpixivやカクヨムに移植しています。
    ツイステ二次創作小説の長編案が降りてきたので現在は主にそれを書いてます。
    pixiv⇨https://www.pixiv.net/users/68325823

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 55

    銀鳩堂

    ☆quiet follow

    ヤンクロ10話「糸車は回る」TEXT版
    ローズ・ブライアことオーロラ姫は、自分にかけられた呪いの真実を知るために、父ステファン王の城へ赴いた。大鴉のディアヴァルはこっそりと彼女の後をつけたが…。

    ※クロウリー学園長の過去話(捏造200%)連載中。このパートのインスパイア元は映画「マレフィセント」。映画ネタバレあり。捏造多め。何でも許せる人向けです。

    #ツイステファンアート
    twistedFanArt
    #ディア・クロウリー
    dearCrowley.
    #クロウリー
    crowley.

    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第⑩話「糸車は回る」 ローズが門衛に付き添われ王の間に入ってゆくと、王は門衛をぞんざいな仕草で下がらせた。そして、渋い顔でローズを上から下までジロジロ眺め回すと、こういった。
    「確かにオーロラだな。お前の母親の若い頃と生き写しだわ。何故いまここに来たのだ? 十六歳の誕生日が終わるまでは森の妖精共の元にいることになっていたはずだ。誰がお前をここに連れて来たのだ?」
     ローズは混乱した。森の妖精の元にいるはず……? フェアリー・ゴッドマザーのこと? そんなはずはない。なら、おばさまたちのこと? おばさまたちが妖精……?
     言葉を返せずにいるオーロラの様子に、王はさらに渋い顔になった。
    「まったく、何故今日なのだ。お前はもうすぐ隣国の王子と結婚する身なのだ。うまうまとマレフィセントの呪いに奪われるわけにはゆかぬ。今日一日、部屋にこもって出るでないぞ。万一にも何かあってはことだからな」
     ローズは、驚きのあまり後ろによろめいた。
     結婚? 私が? 誰と、ですって……? それはいつ決まったの? 私の意思は関係ないの……? 誰もそんなこと教えてくれなかった。私に婚約者がいるだなんて。脳裏のうりをあの青年の顔がよぎる。彼とはもう会えないのだろうか……。
     そして、やっぱり我が身が受けたという呪いはマレフィセントが……。
     あまりにも急に、あまりにも衝撃的な話を、一度に聞いてしまった。
     王は呆然ぼうぜんたたずむローズを慰めることもなく、両手を叩いて人を呼ぶと、誕生日が過ぎ去るまで安全な部屋に閉じ込めておけ、と命じたのだった。

     ローズは、豪華だが窓ひとつない部屋に通され、そのままそこに軟禁された。もうすぐ日が沈むだろう。そして夜が過ぎ、朝になったら、この部屋から開放されるのだろうか?
     でも、そうなったとしても、あの人にはもう会えないのだろう。自分は見も知らぬ男の元へととつがされる運命なのだ。それに、フェアリー・ゴッドマザーと呼び慕っていたマレフィセントは、本当に自分に呪いをかけていたのだ。それなのにあんなに優しく親切そうに振る舞って。私は騙されていたの? でも、彼女はそんな邪悪な存在には見えなかったし、自分を害するようなこともなかったというのに。それどころか、ずっと見守ってくれていたのに。何故。何故なの……?
     頬を濡らすものがあった。
     静かに流れ落ちる涙だった。
     と、その時、どこからともなく、自分を呼ぶ声が聞こえたような気がした。
     ローズは立ち上がり、部屋の中を見回した、
     誰も居ない。
     その時、キィ……と、小さな音がした。振り向くと、押しても引いても開かなかった扉がゆっくりと開いていくではないか。
     おいで……
     オーロラ……
     糸車に……
     神秘的な声が耳に響く。その声はどこかしらマレフィセントに似ているような気がした。彼女は立ち上がると、声に導かれるままに歩き始めた。
     不思議と、人と出会わなかった。
     まるで誰かが先回りして人払ひとばらいをしたかのようだった。
     唯一、ふらふらと歩いてゆくローズを見つけたのは、大鴉おおがらすのディアヴァルだけだった。

     ディアヴァルはローズが軟禁された部屋を見張っていた。
     すると部屋の扉が開いて、夢見るような足取りでローズが出てきたではないか。その異様な気配に、全身の羽毛が総毛立った。不味い。この気配は何か魔法が働いているに違いない。どうしよう。マレフィセントを呼びに戻ろうか? ……いや、駄目だ、間に合わないかもしれない。自分がその場にいれば、何か出来ることがあるかもしれない。彼はそのままローズの後をつけることにした。

     その頃、城の最上部、高い高い尖塔の天辺てっぺん望楼ぼうろうで、焼け焦げた残骸をかすかに黄緑に輝く霧が包んでいた。霧がまといつくと残骸はパキパキと音を立てて首をもたげ、まるで生きているかのように脚を踏ん張って立ち上がり、真新しい姿へと戻りはじめた。
     そこに姿を現した物。
     それは、一台の糸車だった。

     ローズは夢見るような足取りで尖塔の階段を上ってゆく。
     ディアヴァルは、そのすぐ後ろから追いかけていたが、彼女が彼に気づく様子はなかった。
     尖塔の最上階に出ると、地平線にいま正に落ちようとしている太陽が眩しく目を射った。
     その部屋に、それはあった。
     回すものも居ないのに、カラカラと音を立てて勝手に回っている。
     落日の最後の光の矢がその鋭い針に投げかけられ、朱い光を放つ。
     糸車。
     国中で焼き捨てられたはずの物が、何故かここにあった。
     ローズの目はあかい落陽を受けて光り輝く針に吸い寄せられ、そこから離せなくなった。
     どこからともなく、荘厳そうごんな声が響いてくる。
     あれは……フェアリー・ゴッドマザー?
    「十六歳の誕生日に……糸車……指を……針に刺して……死ぬ……指を……針に……刺して……死ぬ……」
     おごそかな声が耳の中に木霊し、まゆに包まれたように現実感が薄れてゆく。脳裏のうりを恋しい青年の笑顔がよぎる。あの人に二度と会えないのなら。自分の人生を自分の意思で歩くことも許されないというのなら。……生きていて何になるのだろうか?
     ローズは声にあやつられるようにふらりと足を踏み出し、手を差し伸べた。
    (いけない!!)
     ディアヴァルは、彼女の手元に飛び込もうとした。が、身体が動かない。金縛りにあったように意思ばかりがはやって、羽毛一枚動かせない。
     焦るディアヴァルの目の前で、ローズは手を差し伸べたまま、糸車に歩み寄る。
     あかく輝く針に、そっと、そっと、指先が触れた。
     押し付けた訳でもないのに、ぷつり……と、針が皮膚を破った。
     朱い血の玉が膨れ上がり、したたり落ちる。
     血が床に落ちた時、ローズもまた、その場に崩折れたのだった。
     倒れ伏したローズをそのままに、空の光は薄れあたりは闇に包まれていった。
     そのかたわらには、金縛りが解けて舞い降りたディアヴァルの、翼を落とし悲しみに沈む姿があった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🙏🙏🙏💖❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第二部23話。
    後のクロウリー学園長=大鴉のディアヴァルの物語、美しき女王編の23話。七人の小人たちが小屋へ戻ってくる!女王の扮する老婆は危機を告げるディアヴァルに促されてその場を逃げ出したが…。(本文約2600文字/今回、豆知識はお休みです)
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部㉓話「老婆と七人の小人たち」 ディアヴァルにかされて、老婆にふんした女王は森の中へと走り込んでいった。
     ディアヴァルが空に舞い上がって偵察してみると、木立の隙間からちらちらと、小人ドワーフたちが転んだり滑ったりしながらも家を目指して走っているのが見えた。あいつらあんなに足が短いくせに、なんであんなに早いんだ? それなのに、老婆の姿の女王は早く走ることが出来ない。早くも息をはずませて、苦しそうに走っている。ディアヴァルは女王の直ぐ側まで舞い降りると、枝から枝へと飛び移りながら女王の後を付いて行った。
     女王は森の踏み分け道を走って戻っていく。その後ろから、大声で叫ぶ怒った小人ドワーフたちの声がかすかに聞こえ始めた。このままでは追いつかれてしまう! どうすれば良いのだろうか? ディアヴァルは女王のそばを離れ、小人ドワーフたちの方へと戻っていった。
    2646

    related works

    recommended works