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    銀鳩堂

    ここには草稿をポイポイあげて、溜まったら整えてpixivやカクヨムに移植しています。
    ツイステ二次創作小説の長編案が降りてきたので現在は主にそれを書いてます。
    pixiv⇨https://www.pixiv.net/users/68325823

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    銀鳩堂

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    ヤンクロ第2部第3話
    後にクロウリーが学園長となるカラスのディアヴァルの物語、美しき女王編の第三話です。
    今回は王とグリムヒルデ(後の美しき女王)の結婚式のシーンです。
    本文約1450文字+カラス豆知識約740文字のおまけ付き。今回の豆知識はカラスがお互いを確認する方法「コンタクトコール」についてです(資料リンクあり)。

    #ツイステファンアート
    twistedFanArt
    #ディア・クロウリー
    dearCrowley.
    #クロウリー学園長
    crowleyPrincipal.

    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部三話「結婚式」 五月のよく晴れた朝、王城は晴ればれとした雰囲気に包まれていた。
     城のすべての尖塔に美しい三角旗がはためき、城門は春の花々を編み込んだ花綱で飾り立てられて開放されている。城門からは次々と来客が流れ込み、城はかつてない賑わいに沸き立っていた。
     今日は、この国の王が新たな王妃をめとる、その結婚の式典が催されるのだ。城の庭園は民草にも開放され、たくさんのご馳走と飲み物が振る舞われる。
     麗々しい式典のクライマックスは、正午の結婚の誓いだ。国の最も高位の聖職者がやってきて王と新たな王妃の誓いに立ち会い、この結婚に祝福を与えることになっている。
     その場には、もちろんディアヴァルも訪れていた。なにせ不吉とされてしまうカラスの身、あまりおおっぴらに姿を表すことはしなかったけれど、物陰から人々を観察し、ちらりとでもグリムヒルデの姿が見えないかと期待していたのだ。
     城の大広間には選ばれた客人たちが詰めかけ、主役の登場を今か今かと待っている。梁の陰に隠れたディアヴァルも、グリムヒルデの姿が現れるのを心待ちにしていた。
     式典は滞りなく進み、大広間の祭壇の前に王が現れた。
     ざわついていた人々は静まり返り、花嫁の登場をいまかいまかと待っている。
     パイプオルガンの響きが厳かな曲を奏で始めた。人々の間にさざなみのようにざわめきが広がっていく。
     と、大広間のドアが開き、人々の期待は最高潮に達した。
     真紅のカーペットを踏んで現れたのは、白く輝くドレスを身にまとった細身の女性と、その付添の壮年男性だった。
     女性の顔はヴェールで覆われてよく見えないが、その姿は白樺の若木のようにたおやかで気高く、白いバラのブーケを握る手指は細くしなやか。わずかに見える顎の美しいカーブもさぞや美しい女性ひとだろうという期待をいやが上にもき立てる。ドレスとヴェールには煌めく真珠や水晶が縫い付けられ、一歩踏み出すごとにキラキラと輝いている。
     顔は見えずとも、花嫁の清楚な美しさはその場に明かりが灯ったかのように輝いていた。人々の間にため息が広がり、期待感が盛り上がるのが感じ取れた。
     グリムヒルデの美しさを良く知っているディアヴァルは、そのヴェールの中に彼女の顔を想像して、キラキラしたドレスも美しいけれど、彼女はもっと美しいんだぞ…と考えた。
     花嫁の後ろから、裳裾もすそを捧げ持つ小さな黒髪の女の子が付き従って現れた。今度は人々の口から「姫様だ」「姫様がベールガールを」と囁きが漏れる。「なんて愛らしい」「小鳥のように可憐かれんな方ではないか」「将来が楽しみ」「亡き母上にそっくりだ」などという囁きを、ディアヴァルの鋭い耳は聞き逃さなかった。
     荘厳な音楽をともに、花嫁と付添の男性、裳裾をもつ姫はしずしずとバージンロードを進み、華やかな正装で待つ王の前に着いた。介添の男性は王に深々と一礼すると横手の用意された席へと下がり、王と花嫁は並びたって司祭の祝福を受け、終生の愛を誓ったのだった。
     王が花嫁の指に指輪をはめると、それまで息を詰めて見守っていた人々は口々に二人に祝福の言葉や花びらを投げかけた。
     祝賀ムードにつつまれた大広間を見下ろしながらただ一羽、ディアヴァルだけは悶々とした気持ちを持て余していた。あの人が幸せになろうとしているのに、なんで自分はそれを素直に祝えないのだろう? なんだか自分がちっぽけでケチ臭く感じられて、彼は少しばかり落ち込んでしまったのだった。



    【カラス豆知識:カラスの挨拶】
    毎度お馴染みになりつつある「カラス豆知識」今回は、カラスのコンタクトコール(互いを識別するための声)について。
    よく烏合の衆などと言われるカラスですが、実は、お互いを見分けあっていて、顔見知りがちゃんと存在します。
    カラスたちは、お互いに声を掛け合って「顔見知り」の存在を確認しているのだそうです。この掛け合う声を「コンタクトコール」と言いって、個体ごとに個別の声があります。カラスたりは、この声をきちんと声の主とセットで記憶していて、挨拶に使っており、「この声は知り合いだ」「これは知らないヤツ」と聞き分けているのだそうです。
    (知らない子と知ってる子を聞き分けていることを確認した慶応大の実験はこちらに解説記事があります。https://news.mynavi.jp/techplus/article/20120113-a025/)
    「『カア』とひと声鳴くのはコンタクトコールといって、要するに自己紹介みたいなもの。『カアカアカア』と続けた場合は、『ここにエサがあるよ!』と仲間に教えるフードコールです」
    とのこと。(引用元記事:https://dailyportalz.jp/kiji/140122163060)
    こちらの記事では、コンタクトコールを練習してカラスに挨拶してみることを提案しています。(参考記事:https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/230)
    繁殖期の縄張りで「知らないやつ」のコンタクトコールが聞こえたら、侵入者現る!!となってしまいますし、大勢が集まる餌場などでは挨拶になるとのこと。
    これはちょっと試してみたくなります。カラスと挨拶、してみたいなぁ…。
    学園長はとっくにやっていそうですけどね(笑)
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    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部八話「命名」 ディアヴァルが王妃グリムヒルデに背中を撫でられて恍惚こうこつとなっていたその時、部屋のドアがキィっと開く音がした。
     誰か来た?! まさか追い払われたりはしないだろうか。王妃に魔女の疑いがかかってしまったりしたらどうしよう……。
     そんな心配が頭の中を駆け巡る。
     だが、次の瞬間、部屋に飛び込んできたのはスノーホワイト姫だった。
    「おかあしゃま、あのね……」
     そう言いかけた姫の顔はたいそう寂しげで、ディアヴァルはこんな小さな女の子がこんなにも寂しげな顔をするなんて、と胸を痛めた。が、次の瞬間、姫の顔がぱっと輝いた。
    「あっ!! カラスしゃん!! カラスしゃんだ!!」
    「そうよ、カラスさんが遊びに来てくれたのよ」
    1634

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    後のクロウリー学園長=カラスのディアヴァルの物語、美しき女王編の第4話です。
    今回は王妃グリムヒルデと白雪姫の仲睦まじいティータイムにディアヴァルがお邪魔します。こんなにも仲睦まじい二人がなぜあんなことになってしまうのか、それは今後のお楽しみ…。(本文1940文字)

    ※今回の豆知識はWIRED誌から、鳥の「名付け」について。そう、鳥たちも「名前」を持っているのです……!
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部四話「小さなお茶会」 華やかな結婚式から数日後。王城の庭園で虫を漁っていたディアヴァルは、新王妃グリムヒルデと小さな女の子がやってくるのに気がついた。女の子は、結婚式でドレスの裳裾もすそを持っていたあの子だ。参列者からは姫と言われていた。年の頃は6歳かそこらだろうか。どうも人間の子どもの年齢はわかりにくい。
     グリムヒルデは、幼い姫の手を引いて庭園の東屋あずまやをめざしているようだ。片手にはバスケットを下げている。
    「東屋についたらおやつを頂きましょうね」と、グリムヒルデは小さな姫に声をかけた。
    「はい、おかあしゃま!」と元気よく姫が答える。
     ディアヴァルには、その声や口調は、見た感じの年齢より少しばかり幼く感じられた。だがその幼さは姫をより愛らしく見せているとも思った。
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    PROGRESSヤンクロ第二部1.5話「出会い」後編
    構想が固まらず止まっていた二部ですが強引に再起動。試運転的に出会いシーンの続き、王とグリムヒルデ(後の美しき女王)の出会いを書きました。
    アニメ版「白雪姫」には無いシーンで「みんなが知らない白雪姫」の筋立てとも違っていますが書きやすい方向に進んでみます。最後にカラス(鳥類)の豆知識(異種族恋愛事情)付き。豆知識は恒例にしたいです☺(本文1327文字)
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部1.5話「王との出会い」(第一話前半はこちら⇨https://poipiku.com/3625622/6059932.html)


     大鴉おおがらすのディアヴァルは、美しい乙女の姿に見惚みほれていた。
     なんと美しい髪の毛。瞳も、顔も、何もかも完璧な美の化身としか思えない。いくらでも眺めていることができる。
     彼のこれまでの生涯で、こんな気持ちになるのは初めてのことだった。
     心臓がドキドキして胸が苦しく身体は熱くなって、クロウタドリの様に歌いたいような、ハヤブサの様に飛翔したくなるような、得も言われぬ心地がする。
     この奇妙な心地は何なのだろう。まるで何か魔法にでも掛かったみたいだ。そう思っているその時、乙女の家の門の前に立派な馬に乗った男が供を何人も連れて通りかかった。
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