Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    銀鳩堂

    ここには草稿をポイポイあげて、溜まったら整えてpixivやカクヨムに移植しています。
    ツイステ二次創作小説の長編案が降りてきたので現在は主にそれを書いてます。
    pixiv⇨https://www.pixiv.net/users/68325823

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 55

    銀鳩堂

    ☆quiet follow

    ヤンクロ第二部21話。
    後のクロウリー学園長=大鴉のディアヴァルの物語、美しき女王編の21話。自ら手を下す決意をした女王は地下室で…。(約1600文字。今回もちょい短めなので、支部移植時に20話とまとめUPするかも。豆知識はおやすみです)

    #ツイステファンアート
    twistedFanArt
    #ディア・クロウリー
    dearCrowley.
    #クロウリー学園長
    crowleyPrincipal.

    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部㉑話「女王と赤いリンゴ」 ディアヴァルと女王グリムヒルデはいつもの地下室にいた。
     彼らの目の前では大鍋が煮えたぎっている。粘り気のある液体の水面に緑の泡がごぼり、ごぼりと浮き上がってははじけて消える。女王はドロリとした液体をかき混ぜながら、低い声で歌うように呪文を唱える。その声に連れてひときわ激しく泡が吹きあげて弾け、緑の飛沫を散らす。
    「これでいい。愛しい子マイ・ディア、よぉく見ておいで。ここにリンゴがある。これをこうして……」
     女王はしなやかな細い指でリンゴのヘタをつまんでぶら下げると、その赤い果実を慎重に緑の水面へと沈めた。すると、リンゴの周りに細かな泡が立ちのぼり、シュウシュウと音を立てて煙が立ち上った。煙は胸の悪くなるような匂いがして、ディアヴァルは思わず顔を背けた。
     女王はリンゴを水面から引き上げると、空中に高くかかげ持った。
    「ごらん! これがあの子を殺す裁きのリンゴよ! もう誰も信用できない。愛しい我が君への裏切りは、この手で裁くわ……。待っておいで、可愛い子。お前の死が訪ねていくよ……」
     リンゴは女王の手の中で、血のように赤く、あくまでも美しく輝いていた。
     その時、ディアヴァルの脳裏にふっとある記憶がぎった。
     とある城の大広間で、両手を高く上げて呪いの言葉を唱える背の高い妖精マレフィセント。彼女の姿が女王に重なって、その不吉さに彼は思わず身震いしたのだった。
     女王をこのまま進ませてしまって良いのだろうか?
     この道は、どこへ続いているのか。
     その先に女王の幸福はあるのだろうか……?
     でも、ただのカラスの身の上で、どうやって女王をお止めすれば良いのか。必死に覚えた人間の言葉でいさめれば良いのか? いや、無理だ……。ものまね鳥の言葉にいかほどの重みがあろうか……。思いは乱れるばかりで、彼にはどうすれば良いのかわからなかった……。
     ディアヴァルの懊悩おうのうに気づくこともなく、女王は次の術に取り掛かっていた。
    「この姿のままでは、誰が見ても正体がわかってしまう。それではダメなのよ。ではどうすれば良いと思う?」
     そう言って、ディアヴァルに向けて右手の人差し指を振ってみせる。
    「姿を変えれば良いのよ」
     そう言うと彼女は次の薬を作り出した。
     ほどなく仕上がった薬の小瓶を片手に立つ女王の目には、思いつめたようなギラギラした光が宿っていた。
     ほんの一瞬、女王はためらった。ごくり、とつばを飲み込み、目を閉じて天を仰ぎ、胸元に手を添えこぶしを握りしめた。
     ディアヴァルの鋭い耳は、その時確かに女王の声を聞いた。
    「愛しい我が君、どうかお守り下さい」とささやく声を。
     そして女王は、一息に小瓶の中身を飲み干した。
     しゅうしゅうと音を立てて嫌な匂いの煙が立ち上り、女王の身体を包んだ。女王は身悶え、呻き声を上げて胸を押さえうずくまった。聞こえてくる呻き声はあっという間に耳障りなしわがれ声へと変わってゆき、同時に身体が捻じくれて背丈が縮んでゆく。
     煙が晴れるとそこには、腰が曲がり真っ白な髪を振り乱した醜い老婆がいた。ねじまがった鼻の上には大きなイボまでついている。
     彼女は曲がった腰を精一杯伸ばして天を仰ぎ、両手を広げて叫んだ。
    「これであの子には私がわからない! はは……ははは……あははははは!!」
     陰鬱な地下室に、狂ったような哄笑が響き渡った。


     老婆に身をやつした女王は、森の中をかごを抱えて歩いていた。かごの中にはあの赤いリンゴが入っている。
     ディアヴァルは森の木を飛び移りながら、その後ろをついて行く。
     こんな無茶をして、元の姿に戻れなくなったらどうするのだろう?
     女王はもちろん解毒剤も作ってふところにしのばせてはいたが、それでも彼は心配でならなかった。振り払っても振り払っても、かつてのあるじ、妖精マレフィセントの最期が脳裏をぎるのだ。
     だが、ディアヴァルの心配をよそに、女王は森の奥へ奥へと分け入っていくのだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第二部23話。
    後のクロウリー学園長=大鴉のディアヴァルの物語、美しき女王編の23話。七人の小人たちが小屋へ戻ってくる!女王の扮する老婆は危機を告げるディアヴァルに促されてその場を逃げ出したが…。(本文約2600文字/今回、豆知識はお休みです)
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部㉓話「老婆と七人の小人たち」 ディアヴァルにかされて、老婆にふんした女王は森の中へと走り込んでいった。
     ディアヴァルが空に舞い上がって偵察してみると、木立の隙間からちらちらと、小人ドワーフたちが転んだり滑ったりしながらも家を目指して走っているのが見えた。あいつらあんなに足が短いくせに、なんであんなに早いんだ? それなのに、老婆の姿の女王は早く走ることが出来ない。早くも息をはずませて、苦しそうに走っている。ディアヴァルは女王の直ぐ側まで舞い降りると、枝から枝へと飛び移りながら女王の後を付いて行った。
     女王は森の踏み分け道を走って戻っていく。その後ろから、大声で叫ぶ怒った小人ドワーフたちの声がかすかに聞こえ始めた。このままでは追いつかれてしまう! どうすれば良いのだろうか? ディアヴァルは女王のそばを離れ、小人ドワーフたちの方へと戻っていった。
    2646

    related works

    銀鳩堂

    PROGRESS【シリーズ移植のお知らせ】第一話は最終話(⑮話)に回収され消滅しました。このファイルは初期版の保存のため残してあります。校正済みのシリーズ最新版はpixivへお願いします。
    pixivのシリーズ目次URL
    https://www.pixiv.net/novel/series/8421068
    (2022.01.27.書き換え。書き換え前のキャプションは本文冒頭に転載して保存)
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第1話「茨の魔女の敗北」【初期版キャプション保存】
    ヤンクロ第1話「茨の魔女の敗北」TEXT版
     クロウリー学園長の過去話(捏造200%)を連載中。完走したら多分あちこち修正が入ると思います。(話が途中で矛盾したりするかもしれず…)
     画像版だけ「第一章」って書いちゃったけど第一話ですね…。後々校正する都合でテキスト版もUPしました。今後はTwitterには文庫ページメーカー画像を投稿、こちらはテキストで行きます。



    ~*~*~ 本文(修正なし)~*~*~


     轟音ごうおんと共に鮮やかな黄緑の炎が吹き出し、橋の上を舐めるように走る。
     そのみなもとには巨大なドラゴン。裂けよとばかりに開いたあぎとを閉じると、上体をそらし、振り上げた前足を力強く足下へと振り下ろす。筋肉の動きにつれて金属光沢を帯びた鱗がうねる。陽光を反射し輝くさざ波がドラゴンの体表を走る。
    1264

    recommended works