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    趙陸の新しい小説が、読みたくて読みたくて仕方ない。しょうがないからもう自分で書くしかない。自分で書いておけば、未来の私が趙陸小説に飢えたときこれを開封して食べることができるかもしれない。そういう感じの保存食を作ったので冷凍庫に入れておきます。

    朝チュン即嫉妬心に狂う趙雲さんの話朝日に照らされてすうすうと眠る陸遜を、趙雲はただ眺めていた。陽の光に反射してキラキラ光る陸遜の髪を手慰みに弄りながら趙雲は微笑み、しかしすぐにその瞳は陰ってしまう。
    久々に会って楽しく語り合い、肌を重ね、こうして共に朝を迎えることができた。厳しい乱世の中、陸遜と至福の時を共有できた奇跡に、趙雲の胸は喜びに溢れている。が、飲み込みきれない何かもそこには確かにあった。
    果たして自分は、いつまで陸遜の恋人で在り続けられるのだろうか。
    こうして会えば、愛し合える。笑顔で迎えてくれる。けれど何度口づけを交わしたところで、この言いようもない不安は消えるどころかますます大きくなっていくのだ。
    陸遜の髪をいじっていた趙雲の心が一瞬ずきりと痛み、陸遜の髪を強く引っ張ってしまう。すると、うん、と声を上げて陸遜の瞳がゆっくりと開いた。
    「…………おはようございます。趙雲殿」
    陸遜はその瞳に趙雲を映し、柔らかく微笑んだ。
    「ああ、おはよう」
    趙雲も穏やかに返す。
    陸遜の表情は柔らかく、包み込むような愛情にあふれていた。いつもどおりの陸遜だ。
    (そうだ、昨日もそうやって微笑んでいたな)
    思い出したら、趙雲の心に刺さった小さなトゲが疼いてしまった。
    趙雲のその一瞬の表情の変化を、陸遜は目ざとく見逃さなかった。
    「どうしたのですか?」
    趙雲の頬に、陸遜の温かい手が添えられる。趙雲が陸遜の大きな瞳と向き合うと、そこには少し浮かない顔をした自分自身が映り込んでいた。
    陸遜は小首をかしげ、趙雲の様子を伺っている。趙雲はポツポツと言葉を漏らした。
    「昨日、あなたは訓練中の兵を褒めていただろう?」
    趙雲は昨日、建業に到着した。邸の者に案内され、陸遜と久々の再開に胸を躍らせながら連れてこられたのは広い庭だった。そこで陸遜は若い兵に個人指導を行っていた。
    趙雲の目から見ても、その若者は筋が良い方だったと思う。陸遜は指導の最中、彼を褒める言葉を何度もかけていた。素晴らしい動きです、見違えるように上達しましたね、と。
    「褒められていたあの者は、すごく、嬉しそうだった」
    若い兵ははにかんだように笑い、陸遜に礼を述べた。あの者の気持ちが、趙雲には手に取るようにわかる。
    陸遜が他人に肯定的な言葉を投げかけるとき、柔らかな微笑みと共に一途で真っ直ぐな視線を向ける。陸遜は下手なお世辞を言わない。ただ、人の長所を見つけることが上手いのだ。そして、陸遜は褒めるときは全力で褒める。だから陸遜の褒め言葉には、人を虜にする魅力があった。
    趙雲はそのような、陸遜からかけられる言葉の包み込むような優しさと確固たる信念に貫かれて、恋に落ちた。
    だから、あの若い兵の気持ちがわかってしまった。
    「そういうの、私だけじゃなかったんだな、と。ただ、それだけなのだが……」
    趙雲の声はだんだん小さくなっていく。言葉にしてみるとあまりにも幼稚で、いたたまれなかった。陸遜に情けないところを見せている自覚がむくむくと湧いてきた趙雲は、陸遜の瞳から視線を逸らして、真っ白な敷布を眺めた。
    「趙雲殿……?趙雲殿?」
    陸遜は首を傾けながら、潜り込むように趙雲の視線を追ってくる。その瞳から逃げているうちに、趙雲は完全に敷布に突っ伏してしまった。
    陸遜は申し訳無さそうに口を開いた。
    「あなたがどんな懸念を抱えているのか、私にはよくわからないのですが……」
    「そうでしょうね」
    拗ねたような趙雲の声に、陸遜は少し困って笑みを作る。
    趙雲はわかっている。陸遜にとっては、これは普通のことなのだ。人を褒めることも、人に優しくすることも、笑顔を向けることも。それを独り占めすることなんて、できるわけがない。
    きっとこれからも陸遜はそう振る舞って、多くの人が陸遜のことを好きになる。今このときもそうだろうし、明日も明後日も、一ヶ月後、一年後も、誰かが陸遜のことを好きになる。そのとき、陸遜の側にいられない自分の居場所は、果たして残されているのだろうか。うつ伏せの暗闇の中で考えれば考えるほど、趙雲の思考は悪い方向へと進んでいく。
    考え込んでいる趙雲とは対象的に陸遜はアクティブだった。うつ伏せに沈み込んだ趙雲の体を無理やりひっくり返そうと足掻いていたが、趙雲はびくともしない。陸遜はため息を付いた後、もぞもぞと掛布に潜り込みするりと趙雲の体の下に手を通した。突然の感触に趙雲の体がはねる。そのまま陸遜は趙雲の胸にギュッと抱きつき、足を絡めた。体にまとわりつく肌のみずみずしい感触が昨夜の記憶を想起させて、趙雲の顔にどんどん血が集まってくる。
    「あなただけですよ」
    掛布の下からボソッとした声が聞こえた。
    「こんな。裸になって。触れ合って。恥ずかしいことをして」
    陸遜の声をかき消すように、趙雲の心臓はやかましい鼓動を上げている。
    「こんなことを許すのは、あなただけです」
    陸遜はいっそう強く、趙雲の体を抱きしめた。趙雲の体に、陸遜の鼓動の音がドクドクと響いてきた。それは趙雲の頭に鳴り響く音と同じくらい、早くてうるさい。愛しい音だ。
    趙雲は掛布を取り払い、陸遜を見下ろした。陸遜の揺れる瞳がゆっくりと、こちらを見上げてくる。
    「だから、不安に思わないでください」
    陸遜の目尻が朝日に反射していた。陸遜は頬の筋肉をぎこちなく動かして、口角を上げようとする。
    趙雲の中に薄暗い喜びが広がってきた。
    ああそうか。不安なのは彼も同じだったのか、と。
    きっと、この表情は私だけのものなのだ。
    趙雲は、陸遜の背中に手を回し、顔を近づけて耳元で囁いた。
    「今あなたから口づけをもらえたら、私はきっと、この不安と生きていけるよ」
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    mit

    DONE趙陸の新しい小説が、読みたくて読みたくて仕方ない。しょうがないからもう自分で書くしかない。自分で書いておけば、未来の私が趙陸小説に飢えたときこれを開封して食べることができるかもしれない。そういう感じの保存食を作ったので冷凍庫に入れておきます。
    朝チュン即嫉妬心に狂う趙雲さんの話朝日に照らされてすうすうと眠る陸遜を、趙雲はただ眺めていた。陽の光に反射してキラキラ光る陸遜の髪を手慰みに弄りながら趙雲は微笑み、しかしすぐにその瞳は陰ってしまう。
    久々に会って楽しく語り合い、肌を重ね、こうして共に朝を迎えることができた。厳しい乱世の中、陸遜と至福の時を共有できた奇跡に、趙雲の胸は喜びに溢れている。が、飲み込みきれない何かもそこには確かにあった。
    果たして自分は、いつまで陸遜の恋人で在り続けられるのだろうか。
    こうして会えば、愛し合える。笑顔で迎えてくれる。けれど何度口づけを交わしたところで、この言いようもない不安は消えるどころかますます大きくなっていくのだ。
    陸遜の髪をいじっていた趙雲の心が一瞬ずきりと痛み、陸遜の髪を強く引っ張ってしまう。すると、うん、と声を上げて陸遜の瞳がゆっくりと開いた。
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