Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    hana_Schwert

    @hana_Schwert

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 34

    hana_Schwert

    ☆quiet follow

    ハッピーにほみかが好きです。

    #にほみか
    (solar)Prominence

    梅花、春の匂い早春の今、本丸にも暖かな空気が漂い始めていた。まだ少し肌寒い風に乗って、何処か甘い香りが本丸中を満たしている。

    「へぇ、これは見事だ」
    「そうか、おぬしはここに来るのは初めてであったか」
    「最近いい香りがすると思ってたんだが、ここの花だったのか」

    本丸とは別の、しかし程近い神域にその梅園はあった。本丸よりも風上に存在するそこは、春の訪れが近づく度に、甘く色づいた空気を南風に乗せてくる。

    「ほれ、お前もひとつどうだ」
    「お前さん、本当に食い気だなぁ」
    「このように咲き誇ろ花を見ては、食欲も増すというものよ」

    三日月の手にあるのは、道すがら購入した三色団子だ。その一つは既に、本人の口の中に収まっているようで、その頬がモゴモゴと不規則に動いている。

    「ほれ、うまいぞ」
    「いや、俺は良い。お前さんが食ってるのを見る方が楽しい」
    「では、精々おぬしに見せつけてやろうかの」

    顔を寄せれば、「髭が擽ったい」と三日月の肩が揺れた。その髪に、何処からかこぼれ落ちたのか、梅の花が並んでついていた。濃紺の髪に、淡い花弁がよく映えている。

    「どうした、俺の髪に何かついておるか?」
    「…いや。帰りに、チビたちに土産でも買ってやろうかと思ってな」

    しばらくは、この二人きりの時間を楽しませて貰おう。充分に満喫したら、次は本丸の縁側で、皆でゆっくりと花見をしたい――日本号は三日月の腰を抱き寄せ、梅の香る柔らかい髪にそっと口付けを落とした。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💕💕💕💕💕💕💕💕💕💕
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works