hana_Schwert
DONEハッピーにほみかが好きです。梅花、春の匂い早春の今、本丸にも暖かな空気が漂い始めていた。まだ少し肌寒い風に乗って、何処か甘い香りが本丸中を満たしている。
「へぇ、これは見事だ」
「そうか、おぬしはここに来るのは初めてであったか」
「最近いい香りがすると思ってたんだが、ここの花だったのか」
本丸とは別の、しかし程近い神域にその梅園はあった。本丸よりも風上に存在するそこは、春の訪れが近づく度に、甘く色づいた空気を南風に乗せてくる。
「ほれ、お前もひとつどうだ」
「お前さん、本当に食い気だなぁ」
「このように咲き誇ろ花を見ては、食欲も増すというものよ」
三日月の手にあるのは、道すがら購入した三色団子だ。その一つは既に、本人の口の中に収まっているようで、その頬がモゴモゴと不規則に動いている。
621「へぇ、これは見事だ」
「そうか、おぬしはここに来るのは初めてであったか」
「最近いい香りがすると思ってたんだが、ここの花だったのか」
本丸とは別の、しかし程近い神域にその梅園はあった。本丸よりも風上に存在するそこは、春の訪れが近づく度に、甘く色づいた空気を南風に乗せてくる。
「ほれ、お前もひとつどうだ」
「お前さん、本当に食い気だなぁ」
「このように咲き誇ろ花を見ては、食欲も増すというものよ」
三日月の手にあるのは、道すがら購入した三色団子だ。その一つは既に、本人の口の中に収まっているようで、その頬がモゴモゴと不規則に動いている。
hana_Schwert
DONE俳優号×カメラマン宗近、ちょっと思い出語りあれは、俺がもっとずっと若かった頃。習い事で、イヤイヤ通っていた武道教室で大会見学に行った時の話だ。とても美しい型を披露する一人の姿に、目が惹きつけられた。優美で、それでいて力強くたおやかな所作。
それから、あんなに嫌がっていた道場通いも積極的に行くようになった。いつかあの人と手合わせできたらと、叶うかも解らない夢を見ている内に図体がすっかりデカくなって。そんな時スカウトに声をかけられ、この世界に入る事になった。
そんな時、たまたま捲っていた写真誌の、とあるページで手が止まる。とある写真コンクールの、受賞作品の一つから、俺は目が離せなくなった。吸い込まれそうな夕焼けの真ん中に人が立っている写真。逆光でその表情は判らずとも、その立ち姿は俺の脳裏に深く焼きついたあの人そのものだ。
535それから、あんなに嫌がっていた道場通いも積極的に行くようになった。いつかあの人と手合わせできたらと、叶うかも解らない夢を見ている内に図体がすっかりデカくなって。そんな時スカウトに声をかけられ、この世界に入る事になった。
そんな時、たまたま捲っていた写真誌の、とあるページで手が止まる。とある写真コンクールの、受賞作品の一つから、俺は目が離せなくなった。吸い込まれそうな夕焼けの真ん中に人が立っている写真。逆光でその表情は判らずとも、その立ち姿は俺の脳裏に深く焼きついたあの人そのものだ。