世界に虹が架かる日その日は、とても多い数の鉱石人が、劈壊によって砕け散った。
産まれた時から一緒に育ってきたサファイアも。
私へ数多の教育を施してくれたクリスタルも。
私の漆黒の鉱石を美しいと褒めてくれたムーンストーンも。
皆、甲高い亀裂の音と共に去ってしまった。
嗚呼、とめどなく溢れてきて止まらない。
聖句も上手く唱えられないほど、嗚咽し、その場から動くことが出来なかった。
その日は、商店街で気さくに声掛けを行っていた、エメラルドが割れた。
その日は、図書室で共に本の内容で盛り上がった、ガーネットとルビーが割れた。
その日は、最後の一人であった私とよく似た鉱石人のオニキスが、割れた。
………………夜、瞳を閉じて眠りにつく前にも聞こえていたあの甲高い音が、日々生活している中でも聞こえていた音たちが。
その日から、鉱石人達が割れる音が聞こえなくなった。
それは、永久的な孤独を意味し、使命を終わらせるまで、その生命を終えることが出来ないことを意味している。
日々朽ちていくこの国を見つめては、ただ祈り続けることしか出来なかったと言うのに。私は、その生命を終わらせる事も許されないのだ。
死の霧が流行が終わり、どのぐらい月日が経ったのだろう。
墓守としての使命として、彼らの安寧と復活を祈り、聖句を唱え続ける日々。
全ての鉱石を見届ければ、私もその生命を終えられる。いつしかそれが救いになっていた。
───それなのに。
乳白色の鉱石、そして鮮やかな遊色効果をもった鉱石人が産まれてきたのだ。
様々な感情と共に、酷く動揺した。
しかし、独りではなくなった事実が、高揚感となり止められなかった。
あの子は私の名前を呼んで、無垢に笑う。
あぁ、それだけでもう、十分だ。
私には最後の鉱石人であるこの子を見届けるまで、使命を果たし続けよう。
この子にとって、この国での日々が優しい光に包まれるように。