嫉妬義→炭
義勇さんが、ちょっと煉獄さんの悪口言っちゃう
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(失敗した)
任務から帰ってきた炭治郎を見て最初に思ったことはそれだった
俺が見つけた原石
鬼となった妹を守ろうと、必死に俺に立ち向かう姿
敵わないと分かっても妹のために懇願する姿
その全てか綺麗だと思った
その目に心に俺を映して欲しいと思った
だからこそ、ただの石ころにしておきたくなくて鱗滝さんの所で修行させたんだ
選別試験を生き抜いたと聞いた時、より磨かれ、輝きが増したであろう彼に早く会いたいと、強く思った
それが叶い、任務で訪れた那田蜘蛛山で再会した時は、久しく感じた事のない高揚感を感じた
(綺麗だ)
その一言に尽きる
全力を出しきっても倒せない鬼を前に、力の入らない体を奮い立たせようとする姿に、初めて会った時よりも増した輝きを見た
(俺が最初に見つけたんだ)
その気持ちが優越感と気付いたのは産屋敷家での柱合裁判だった
他の柱が厳しく追及する中、それでも妹を守ろうとする姿の美しさに気付かないなんてと、胸の内で嗤っていた
(それなのに、気付かなかったくせに)
無限列車での任務で煉獄が死だと聞いた時は奴を悼む気持ちもあった
その身を命を賭して任務を全うしたと知り、尊敬の念すら抱いた
だが、今感じているのは激しいまでの嫉妬や憎悪
「炭治郎」
疲れきった状態で任務から帰ってきた彼を見つけた時、思わずその名を呼んでいた
「大変な任務だったと聞いた、疲れただろう」
出来るだけ優しく言葉をかければ、苦しそうに歪めた顔で俺に抱きついてきた
その瞬間に感じた昂る気持ちは一瞬にして冷めきる事になった
「おっ俺のっ俺の力が足りないせいでっ…煉獄さんがぁぁ」
その目から、俺以外の奴を思って流れる涙に
俺以外を思い、紡がれた言葉に色々な黒い感情が混ざり普段以上に顔から表情が無くなる
怒りは過ぎれば逆に冷静になるようで、激しく荒れている心情とは裏腹に、手はそっと優しくその肩を包んだ
「もっと俺が強ければ、煉獄さんを助けられたのに、俺に力がないばかりに…」
流れる涙と言葉
どこまでも冷めていく己の心
「泣くな、お前が泣いても喪った者は帰ってこない」
冷たい言い方かもしれないが、本心だった
そうだ、あいつは煉獄は死んだ
炭治郎の心に奴の面影が残ってしまったのは悔やまれるが
それでも今後、炭治郎のそばで共に歩んでいけるのは生きている者だ
(お前は思い出の中に留まっていろ)
かつての同志に心中で悪態をつくと、自信に抱きついている温もりを抱き締めた
(俺のものだ)
その瞳には隠しきれない独占欲が確かに見てとれた