ばじとらふゆ♀(………最近視線を感じる。)
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晴れて高校生になった松野千冬。
相棒のタケミっちも一緒の高校で毎日が楽しい、放課後はバイトに相棒とのお買い物と楽しい予定ばかりだが妙にココ最近は違和感を覚えた。
「………」
「ちふゆ?…ちーふーゆー?」
急に立ち止まったオレに心配そうに何度も声をかける相棒の声に顔を上げる。
それに驚いたように肩を揺らす相棒に笑いながらごめんごめん、なんて言う。
「最近、千冬変だけど大丈夫?」
先程購入したフラペチーノのをズズッと飲み切りながら聞いてきたなんのことか。と思いながら首を傾げて自分もフラペチーノを飲み切る。
「だーかーらー、なんか…上の空?っていうか妙に周り気にしたりさ」
全然気づかなかったことを指摘されては頬をかきながら言葉を発する。
「あー…いや、さ……なんつーか、最近?視線を感じるっていうーかさ?」
咄嗟にオレの勘違いかもしれーねけどさ!と付け加え。
「…それ、大丈夫なのか?」
不安げな表情の相棒がオレの顔を覗き込んではオレにできることねえのかな。とか誰かに相談。とか呟く。
「大丈夫大丈夫だって、今のところなんもねえし……あ、そろそろマイキーくん迎えくるんじゃね?オレもバイトだし!」
手首に付けた腕時計に視線を移しながらいうと相棒もその腕時計を覗き込みほんとだ!と言う。
暫くすると聞きなれたバイク音と共に相棒の名前を呼ぶ彼の姿が現れる暫く3人で駄弁ってからバイトだからと2人とは別れを告げて少し急ぎ足でバイト先のペットショップに向かう。
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すっかり日はくれて街灯がつき真っ暗な夜道を照らす時間にお店の閉店時間に合わせて上がっていいよと言われ上がることにした。
「ん……あ、そうだ今日母さん夜勤だから自分でご飯用意するんだ…コンビニでいっか…」
エプロンを畳み軽く髪型を整えて挨拶をしてバイト先を後にする。
いつもの帰り道、最寄りのコンビニ。少し湿った空気が素肌を撫でる、日中は日が照ると暑いが夜はやはり少し肌寒い…。
(さみ…早く帰ろ)
そう思いながら足を早めた時にふと昼間の違和感をまた覚える…いやバイト中から感じていた違和感。
またか…そう思えばため息がもれる。街灯が何個か点滅しており帰路のそこはより気味悪さが増す。
カバンを握り直しよしっと意気込んで止めていた足を進めた瞬間に手首を捕まれ脇道に引きずり込まれる。
背中に湿ったコンクリートの感触が当たる。手に持っていたビニール袋が足元に落ちる。手首は痛いほど壁に縫い付けられびくともしない。何度か瞬きをして自分の置かれてる状況を整理する間もなく目の前にいる息を荒くする人影が口を開く。
「……や、やっと、会えたね」
声音で男だとわかる。暗闇にも目が慣れてきたのかその人影を捉えることができた。
「は?誰お前」
知り合いでもなければ顔も見た事ない男がまた手首を掴む力が強まり思わず顔が歪む。
「松野千冬ちゃん…会いたかったよ、俺だよ。覚えてない?君がバイトしてるペットショップで君に優しくしてもらった…」
意味わからないことを自分の遮る言葉など無視してつらつら男は述べる。その間も手首を掴む力は緩むことなく更に距離が詰められる。
息がかかる距離まで近づく。
「離せよ、お前のことなんて知らねーよ」
吐き捨てるように言っては元々つり気味の目が更に強くつり上がっては睨みつける。
「はぁ、可愛いね……」
あぁ、もう無理だびくともしねぇ。諦めよう。と思った矢先に明るい表の道とは逆の路地裏の奥から喋り声が聞こえた。
「んでさ、……あ?なにあれ」
「……?」
うっすらと街灯に照らされるオレと相手。