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    yumehitoyo2356

    ͛.*🍃かずはちゃんの設定&軌跡置き場
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    yumehitoyo2356

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    時系列 社宅で同棲するようになってから。

    ͛.*🍃のトラウマ丑三つ時。おぞましい憎悪と嫌悪。その二つの感情に脳内を支配され、意識は覚醒した。望まない覚醒。嗚呼、”また”だ。

    眼を開けて最初に映ったのは、気持ち良さそうに眠る治の顔。いつも通りに抱き枕がわりにされた私は、案の定彼の腕にすっぽりと包まれていた。穏やかなその寝顔に少しだけ心が安らいだが、再度寝付く事は到底出来そうに無い。「御免ね、治」治を起こさないようにそっと彼の腕を持ち上げて、腕の中から抜け出せば、途端に、静まり返った室内に漂う冷気が全身に悪寒となって駆け抜けた。

    ”ま、待ってくれ…!!違うんだ!噺を──────”

    その直後に脳内を巡る、記憶。私の脳裏に火傷跡の如く刻みこまれた、古い記憶。全身から血の気が引き、生きた心地がしなくなった。加えて、室内の冷気が追い打ちをかけるように全身を襲い、私は堪らず外へと飛び出した。


    ──────

    「…はぁ」

    寮を出て直ぐタクシーを拾い、着いた先は横浜の海。私の心とは裏腹に辺りを照らす煌びやかな夜景が胸に染みた。

    「…却説、如何したものか」

    このまま治の元に帰っても、勘のいい彼の事だ。目覚めたと同時に私の身を案じて、心底心配するに決まってる。今のこの心情を隠し通すことは到底叶わないだろう。探偵社内で唯一、頼れそうな敦にいたっては今頃はスヤスヤと夢の中。朝になれば状況は変わるかもしれないが、それまで何処で時間を潰せばいいのだろうか。何時間、何分。たった一晩の事なのにまるで永遠の時をさ迷うかのような感覚に陥り、遂には嘔吐感に苛まれはじめた。

    「…相当キてるみたいね」

    底なしの闇からどうにか這い上がろうと意識を反らす為、衣嚢に手を入れたところで、普段は有るはずの物がそこに無い事に気付いた。煙草と燐寸──────それから、携帯電話。財布の次に必需品である携帯電話を忘れるとは、気が動転しているにも程がある。我ながら滑稽だ。

    「…」

    何時までも引きずってはいけない。そう思う反面、未来永劫忘れてはいけない。そう思う自分もいる。この世で唯一、私が犯した罪。本来ならば光の世界で生きる事等あってはならない。大きな、大きな罪。だから決して忘れてはならない。


    ”待て和葉!其奴は…!!”


    ──────救けるべき命を奪ってしまったあの日の事を。


    「…やばい…かも…」

    動悸が激しくなり、遂には脳に酸素が行き渡らなくなってきた。情けない話だが、気を抜いてしまえば目の前の海に足を取られてしまいそうだった。冷静さを取り戻す為に目を伏せた瞬間、脳裏に浮かんだ解決策は意外なものだった。

    「…最適解、か」

    正常な状態ならば絶対に口にしない文言。其れを口にしてから、薄れゆく意識を何とか繋いで、目的地へと歩を踏み出した。


    ──────



    「…和葉?」


    扉を開ければ、顔面蒼白の和葉がそこに居た。全身を震わせ、涙ぐむその姿に何か有ったのだと瞬時に理解し、肩を引いて室内に招き入れてやれば「ちゅう、や…ごめん…」今にも消えちまいそうな声でそう云って半ば倒れ込んで来たところを抱き止める。

    「おい、和葉!」
    「ごめん、ね…ごめん…な、さい…」

    謝罪の言葉を口にし肩を震わせ、静かに涙を流す和葉。その光景が脳内で在りし日と重なり、此奴に何が有ったのかを全て悟った。

    「…俺は彼奴じゃねえよ」
    「…」
    「大丈夫だ。大丈夫だから…なっ?」

    餓鬼をあやす様に和葉の背中を数回叩けば、糸が切れたように意識を手放した。

    「…無理しやがって」

    和葉には大きな傷が有る。と云っても、物理的な傷じゃねえ。決して消える事の無い傷痕。その正体を知ってるのは俺と探偵社の虎餓鬼だけだ。何故、虎餓鬼に話したのかは識らねえが、あの太宰ですら識る事の無い此奴の過去。──────無実の人間を殺しちまったという大きな罪悪感。其れが和葉に消える事の無い大きな傷を負わせた。当時、不慮の事故だと何度も云ったが、俺の言葉には耳も貸さず、自責の念に潰され、謝罪の言葉を口にし、力無く泣き崩れる。その繰り返しだった。

    俺達、マフィアにとっては殺しなんて日常茶飯事だ。例え無実の人間を巻き込んじまったとしても、””ポートマフィアの領土に立ち入った””という一言で全てが片付く。それなのに、此奴は返り血で濡れた自分の服を見て、餓鬼みたいに泣き崩れた。「罪の無い人の命を奪った」と、一言云って、自責の念に駆られていた。

    「本当に底なしの莫迦野郎だな、手前は」

    眠る和葉を寝台に横たわらせ、布団をかけてやれば、先程とは打ってかわり少しだけ穏やかな表情になる。その様子に安堵とも呆れとも言える息が自然と漏れる。軈て、規則正しい寝息が聴こえてくる。取り敢えずは…落ち着いたみてえだな。

    否、それよりだ。

    「お前に惚れてるって男の家に真夜中に来るかァ?普通。…相手が俺じゃなきゃ今頃如何なってた事やら」

    惚れてる女に頼られるのは悪くねえ。が、いい加減、男として意識して欲しい。そう思うのは俺が此奴に心底惚れてる何よりの証拠。まァ、でも─────

    「今日の所は勘弁してやる。だから、ゆっくり寝ろ」

    いつの日かお前が心から笑える様になるその日まで。仕方ねえから、待ってやるよ。

    そう誰にともなく胸中で誓い、眠る和葉の額に唇を寄せた。
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