trickでtreatな 「【はろうぃん】とは、西洋の妖が多いのですね」
「妖っていうか…」
と説明しようとしてやめる。そして悪虂さんの指先を追った。
「でも、そう思うとここは年中ハロウィンみたいなものですね」
「私はあなたに悪戯はしないですよ?」
「…いじわるな時はあります」
頬を膨らませて言えば困ったように笑って悪虂さんは私の頬にキスをする。そして場所を移して何度も何度もキスをする。
「~~~~っ、ふ、封印!封印!です!」
そう言ってぺたりと札を額にくっつけた。
「これは?」
「きょ、キョンシーの札です…キョンシーっていうのは…」
「ああ、これですか。ふふ…札があると封印されて動けないなんて面白いですね」
そう言っておかしそうに悪虂さんは笑う。笑って、顔を近づけられる。
「でも、残念ですね。外してもらえないとあなたに口づけできない。…それとも、あなたは…しのさんは、私とそういうことをするのは嫌、ですか?」
「……ず、ずるいですその顔も…そういうことを分かっててする悪虂さんも…」
「知ってます」
捨てられた子犬みたいな顔をしたと思えば今度は綺麗に笑みを浮かべる。そんな悪虂さんのことが好きなのもまた、事実だった。小さく息を吐くとぺりっと札を外し今度は自分からキスをする。慣れないし、恥ずかしい。けれどやっぱり嬉しいのも事実だ。
「今日はあなたは休み、ですから…封印を解かれた私と甘い一日を過ごしましょう?」
trickではなくtreatを。でもきっととびきりのtrickでもある――そんな時間を私はこの身をもって、享受した――。
-了-