らせん「とんだお人好しだなホットロッド⋅⋅⋅本当に俺にボディを差し出すなんて。」
『俺のせいだ』っていかにも偽善者様のお言葉だよな。そんな簡単にボディを明け渡すなんて、責任を取るだなんて。あぁ、反吐が出る。
「⋅⋅⋅聞いてるか、ホットロッド。俺は、ずっと前からあんたが眩しかったんだ。俺とは真逆のあんたに憧れて、憎くて、⋅⋅⋅だからこそ、俺の手でぐちゃぐちゃにしたくて」
つつ…と、かつて俺が刺した左胸をなぞりながら笑みをこぼす。
感謝してくれよ、お前が抱いていた責務だのなんだのを手離せたんだからさ。
代わりに俺はお前をもう、離さない。
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「⋅⋅⋅なぁおい、まだお前は満足しないのか?」
せっかく、お前が煩わしいと感じていたモノ壊してやっているのに。
何度も問をかけてもアイツは答えない。俺達のスパークの奥底で閉じ籠っている。
最初は面白かった。何かを壊す度にアイツは悲鳴をあげてくれた。もっともっと聞きたくなった。
だからアイツの好きなもの、持っているもの、大事にしているもの。ある時これでもかってくらい大きな声が聞こえて、それからホットロッドはスパークに閉じ籠った。つまらない。
なら今度は嫌いなものを壊そう!苦手なもの、本当は嫌いなやつ、消えてしまえと思ってる奴も全部だ。
「⋅⋅⋅全部きれいさっぱりにしてやったら、またお前は声をあげてくれるか?」
そう聞いてもまだ奴は答えないそれでもまだ閉じ籠っているなら⋅⋅⋅本当に、消えてしまえと思ってる奴は最後にいなくなるからさ。
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『…なんで…なんでっ!』
どうして俺をまた起こした!?そう問いかけても答えは返ってこない。俺の時と同じ、いやそれより最悪だ。
周りには何もない。何も。
賑やかなスタジアムも、そびえたっていたオートボットとディセプティコンを隔てていた壁もない。
俺がよく通っていたバーも、ばかやってたあいつらもみんな、みんな全部壊れてしまっていた。
『今更戻されてどうしろって言うたい…。俺にはもう何も残っていないのに…全部お前が壊したくせに!』
力の限り地をたたく。ガンッと大きな音が鳴るが誰も、何も、反応しない。虚しく音が響いていくだけだった。
『壊すだけ壊しておいて、勝手にいなくなりやがって…いや…違う。俺が望んだから?また…俺は…俺が、ドリフトを死に追いつめたたいっ!?』
最初は責任感からだった。ドリフトを殺したのは自分だからその償いをしたかった。初めは俺のボディを使ってできなかったことをやれば満足して終わりだと思った。けど、俺はドリフトの考えていることを何一つ分かっていなかった。
気づいて止めようとしたが、もう遅かった。自分の目の前で壊れていくもの、仲間、相棒…。もう見ていられなくなって、閉じこもって、ただ塞ぎ込んだ。ドリフトの声も無視して。
『…あぁ、そうか。ドリフトがいなくなったんじゃない。俺が先に、やつから逃げたんだ』
ふらふらと亡霊の様に歩いていく。何かに呼ばれているのか、自分が求めているのかもうわからないが、行く場所は決まっていた。
『…あったたい』
掠れた声を出す。誰も聞いてはいないのは理解しているのに。
全てがなくなったこの世界でこれだけは残っていると思ったが、やはりあった。手招きをするように黒く濁った気泡が、こぽこぽと膨れては弾けていく。
『一人の世界は寂しかったたい…お前はここでずっとそれを感じていたのか?』
もう俺しかいないなら、一緒に堕ちてやるさ…
トンッと軽くジャンプしてそこへおちる。纏わりつく液体の気持ち悪さに眉を寄せたが段々とボディが黒く染めあがり、思考まで黒く染まっていく。
息もできなくなっていき苦しくなっていくのと比例して、もう終わりだという安心感から俺は目を閉じた。
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『…っはぁ!はぁ、はぁ…』
激しくボディ内が活動を求め、反射的にボディが跳ね上がる。
『ここは…俺の部屋?』
治まらない動悸を何とか整えつつ、辺りを見回すと何度も見たことがあるはずなのにひどく懐かしく感じる、俺の部屋だった。
窓の外から光が差し込み、やれ遅刻だの、やれ今度の休みはいつだのごく当たり前の話が聞こえてくる。
『全部、夢だったたい?』
とんだ悪夢を見たもんだと伸びをする。きっと最近、仕事続きだったのが答えたんだろうと結論付けてベッドから起き上がる。
起きた俺を待っていたかのように机の上から通信の音が鳴り、手に取ろうとした瞬間。
悪寒が走り、何かに掴まれたかのようにピタリと手が止まった。
突如、覚えのある倦怠感が俺を襲う。自分のボディが支配できなくなるあの感覚だ。
違う。あの悪夢は終わったはずだ…。自分に言い聞かせていく間にも毒に犯されていく様にじわりじわりとボディが動かくなっていく。通信相手を求めて鳴る音が動悸とシンクロして部屋中に鳴り響く。いまだ震える口が弧を描いたのを感じたその時、俺が話しかけてきた。
「さぁ また遊ぼうぜ」
好きだっただろ?ループするのはさ
【らせん】終
≪あとがきという名の蛇足≫
サイババのドリホト無限の可能性秘めすぎて小説まっっっったく未経験&未知識の私が執筆するまでになりました。人生分からんもんだね。
ついったで呟いたやつをぐりぐり一つにまとめたから盛り込みすぎたわ。この後ホトロはスパークが消えるその時までドリと一緒にループをしていくんでしょうね…美味しいね。ループの度に違う方法をとるけど結局は自分とドリ以外は無くなってしまうんだろうね…すごく美味しいね。
話は変わるけど、冒頭さ、ドリが刺したところ自分でなでなでするシーンなんだけどさ、なんでこいつ左乳首触ってんだろ…?と書きながら思ってしまったんよ。もちっと表現うまくなりたいね。
でもこの設定だとドリホトがセッできない…。右腕が嫁さんになるしかない…。
ちなみにこれとは別の展開をシリアスとギャグそれぞれ考えております。何回やってもいいよね!マルチバースだし!!
他のはそんなに展開が多くない(思いつかない)ので短編集みたいな感じになると思います。
最後まで読んでる人いるか分からんがしーゆー!!