月明かり「ロナルドくんまって〜〜、アッ、待っ、本当に待って、靴攫われた、うそ」
「ヌーーー!!」
せっかくだから近くまで行ってみようよと勢いに押され、なんでだよめんどくせえ帰るぞと抵抗しても愛すべき丸まで背中を押すものだから。ジョンが言うなら仕方ない、海だって火の中だって地の果てだって行ってやると砂浜に足を運んで早数分。騒ぎ立てた当の本人は波に足を攫われて既に5回程死んでいる。砂になっては海に近づき、また砂になり、海に近づき、以下繰り返し。例えドラルクといえど全てを海に流されて終えば本当に死んでしまうはずだ。にも関わらずこの宇宙で一番死にやすい吸血鬼は死を繰り返しながら海に近づこうともがいている。使い魔の悲鳴を共にしながら。靴を奪われても、死んでも少しずつ前に進んでいる。己の死を顧みず前に進もうとするといえば聞こえはいいのだろうが、実情は悲惨極まりない。
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