甘えたな君と珍しいことに目覚ましがなる前に瞼が開いて、いつものもう一度目を閉じて眠りに戻りたいという気分もない。
何回か見たことのある天井を見て今の状況を改めて把握する。
そうだ、昨日はヴォックスとサシで飲んでそのまま二人で寝てしまったのだ。
隣を見るといつもは自分より早く起きて朝食なりコーヒーなり紅茶なりを忙しなく準備するコイツが警戒心の欠片もなく寝ている。
相変わらず顔は整っているなぁと寝顔を眺めて、たまには俺が淹れてやるかという気分になった。
ベッドのスプリングに手を埋めて、ゆっくり立ち上がった瞬間何かに服を引っ張られる感覚。
「……どこ行くんだ」
「お、まえ。起きてたのか?今日は気分がいいからお前はまだ寝てていいぞ」
1956